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MEMORY 尸魂界篇

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 死覇装を着ている死神というだけで突っ掛かり、体よくあしらわれてしまった事は、相手が男と思えばこそ自分を許せた。が、現世の人間という事は自分より遥かに年下という事で、その少女に向けた行動と思えば、到底自分を許せる筈もなく、地面に減り込むほど岩鷲を落ち込ませた。
 岩鷲の落ち込み様を見て、天鎖は溜息を吐く。今までの一護への突っ掛かり方を見て予想は付いていたものの、疑いもなく一護を男と信じていたらしい。
 暫く落ち込んでいた岩鷲も、ハタと気付いてその場から離れた。
 いくら傷を治す効能があるとはいえ、湯に浸かりっぱなしでは一語が湯当たりしないとも限らない事態を起こす可能性に気付いたのだ。
 やがて湯から上がり元気溌剌となった一護は、死覇装を着込むと斬魄刀を手に夜一の待つ岩場に近付いた。

「さて、卍解の修業じゃが………。」

 夜一が口火を切ると、花太郎が「あの~」と言い淀みながら手を上げる。

「花太郎? どした?」
「その猫さん、夜一さんと呼ばれてますけど、どういった方なんでしょう?」

 今更その質問?
 一護は内心で呆れたが、花太郎にとっては質問する隙も無かったという事なのだろう。

「そうじゃの。この先は儂も本性に戻らねば無理じゃからの。」

 そう言って、夜一は変身を解いていく。
 霊圧が揺らぎ、猫の姿が伸び縮みを繰り返しながら大きくなっていき、やがて褐色の肌のうら若い女性の姿に変わった。但し、裸の。
 そうと気付いた花太郎が真っ赤になって後ろを向き、岩鷲がポカンとして固まる。

「どうじゃ、驚いたか? 何度経験しても、この正体を現した時の皆の反応は快感じゃのう。」

 全裸で腰に手を当ててカラカラと豪快に笑う夜一に、一護は右手で顔を覆った。

「夜一さん、服着てくれね?」
「なんじゃ、一護。女同士じゃろ。構わんだろうが。」
「私は良くても岩鷲や花太郎には目の毒なんだよ。」
「服は窮屈なんじゃがのう。」

 能天気な夜一の物言いに、花太郎は膝から崩れ落ちてその場にへたり込み、岩鷲は鼻血を吹いて慌てた。

「浦原さんの親友を張れるくらいだから、乙女の恥じらいなんて期待してないけど、青少年を思い遣るくらいはしてくれ。」
「言いよるのぅ、一護。」

 カッカッカッ!
 豪快に笑う夜一に、女らしさを求める方が間違っているかも、と一護も花太郎も思った。
 流石は“あの”姉の親友だ、と岩鷲は思った。



作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙