二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

MEMORY 尸魂界篇

INDEX|21ページ/67ページ|

次のページ前のページ
 




 夜一が“記憶”通り転神体を持ち出してくる。

「これは隠密機動の機密霊具での。これに斬魄刀を刺すと斬魄刀の本体が強制的に具現化されるのじゃ。使える期限は三日。その間に卍解を習得出来なんだ時は……。」

 一護はみなまで聞かずに斬月を始解させて転神体に突き刺す。

「出来なかった時の事は考える必要ない。」

 一護の言葉と同時に、転神体が天鎖の姿を取る。
 一護は微かに眉を顰めるが、何も言わずに天鎖を見つめる。

「聞いておったな?」
『当然だな。』
「遣り方は任せる。」
『承知。』

 天鎖は霊圧を上げて色を反転させた斬月を手に、一護に斬り掛かっていく。
 一護は無言で受けて立つ。
 天鎖は一護に向かって遠慮なく月牙天衝や月牙弾道を撃ち込み、一護は月牙放散で霊圧の幕を造ったり、断空を張って防いだりする。食らう攻撃が一護自身の霊圧である為、霊圧の鎧は意味を成さないと逸早く見抜いたのだ。始解同士では力は均衡しているから、月牙天衝や月牙弾道に対して月牙放散の力では対抗しきれない。一護の霊圧が始解状態より遥かに上の卍解状態でなら、月牙放散でも月牙天衝や月牙弾道を防げるという理屈だ。
 一護は瞬歩を駆使して紙一重で月牙天衝と月牙弾道を避けながら、月牙放散で防ごうと霊圧を上げていく。
 天鎖は容赦なく、至近距離からでも月牙天衝を撃ってくる。
 一護は仕方なく、隠し玉にしていた鬼道を使い、天鎖の攻撃を防ぐ。

「!」

 一護は才能はあっても意識すると鬼道を思うように使えない性質だと思っていた夜一は、一護が鬼道を自在に操る事を知って驚愕する。
 剣戟を交わしながらでも、一護は鬼道を自在に操ってみせた。
 それでも容赦のない天鎖の攻撃に、一護の体中が傷だらけになってしまった事には変わりはなく、一日目が終了した時点で、一護は傷だらけでその場にへたり込んだ。

「だ、大丈夫、なん……です……か?」

 心配そうに覗き込んでくる花太郎に苦笑して、一護は刀を支えに立ち上がる。

「傷、治してくる。」

 言ってよろよろと温泉に向かう一護の後姿を見送って、花太郎はぞっとする。
 見掛けは未だ華奢な少女でしかない一護の中に秘められた能力の片鱗を、今し方までの修業の中に見出してしまったのだ。

「一語さんって、本当に強い人、なんですね。」

 上昇する一護の霊圧に当てられてヘタっていた岩鷲が、解放されて漸く息を吐いて花太郎を見る。

「花、よく、そんな、平気で動けんな。」
「え、平気なわけではないですよ。唯、一護さんはすぐに霊圧を下げてくれますから、解放されて動けるようになるだけです。」

 気弱な笑顔でさらりと答える花太郎に、岩鷲は二の句が継げない。

「儂も一護と共にひと風呂浴びてくる。覗くでないぞ。」
「「はぁい。」」

 同じ返事を違うテンションで応えた花太郎と岩鷲を置き去りにして、夜一は一護の下へ向かった。
 一護は頭まで湯に浸かっていた。
 ざぶりと湯の中から飛び出す勢いで顔を上げた一護の目の前に、褐色の肌色の豊かな胸が晒されていた。

「ぶっ!」
「なんじゃ、女同士じゃ、恥ずかしがることなぞ無かろう?」

 胸を張ってみせる夜一に、一護は背中を向けて腕で隠れる程度の細やかな胸の膨らみを隠した。

「見せられるほどの胸はないんだよ、悪かったな。」

 表情の動かない一護の頬が赤く染まっている。
 一護を揶揄いながらも夜一は、浦原が自分以上の素質だと保証した一護の才能を信じきれない自分と戦っていた。
 いくら“記憶”があるとはいえ、誰が何を考えていたかなんて事までは知らない一護は、夜一の内心の葛藤は知らない。
 一護は敢えて夜一に何を話す事もなく静かに構えていた。
 そしてふと、夜一に伝言を頼んだだけで、その後の報告を貰ってはいない事を思い出す。

「そういえば、夜一さんに伝言だけ頼んだきりだっけ。伝えて貰えたのか?」
「伝えるには伝えたんじゃがのう。」

 捗々しい事態にはならなかったという事なのか、夜一の返事には覇気がない。

「忠告を聞けば、冬獅郎の傷が浅く済んだ可能性があっただろうけど、そうならなかったんなら、それも仕方ないだろ。」
「一護……。」

 じっと一護に視線を注いでくる夜一に、一護は溜息を吐いた。

「読みで、私が何処まで奴に迫れるかは判らないけどさ。」

 一護が闇雲にルキアを助け出す為だけに動いているわけではないのだと、夜一は此処に来て理解する。
 浦原は、一護の行動を陽動にして夜一は夜一の判断で動いてくれ、と言っていたが、一護はそれすらも計算しているように見える。

「一護、お主……。」
「直接会ってはいないから、聞いた話だけで判断して計算してるからさ。どこまで読みが合っているか自信はないけど、大きく外れてはいないと思うんだ。奴は、私の戦力を育てている心算だと思うよ?」
「な……ん…じゃと……?」
「白道門に間に合ったのは市丸ギンだけだった。」
「……。」
「それはさ、私達がルキアを助ける為に浦原さんの手を借りる、若しくは浦原さんが私達を手駒として送り込むと読んでいたからだよ。」
「何故白道門……喜助が西流魂街に力が及ぶから、か。」
「そゆ事。ルキアの派遣先が空座町なら、浦原さんやうちの父が絡んでくるだろうとも読んでたわけ。」
「じゃが、お主の事は……。」
「私が絡んでも計算が狂うほど大きな力はないと踏んだんじゃない? 精々双殛での処刑が出来なくなるだろうくらい。」
「双殛が解放できねば……。」
「浦原さんがルキアの中に崩玉を隠す為に使った道具は?」
「!」
「隠せたんなら取り出せるだろ。」
「じゃから、大隷書回廊か。」
「大隷書回廊? そこが情報が集められる所?」
「そうじゃ。」
「ふうん。じゃ、奴は暗殺された事にして其処に籠って調べ物中ってとこかな?」
「一護の読んどるように、四十六室を掌握しているとなると、ルキアの処刑の日取りが更に縮められる可能性もあるの。」
「だから、卍解の修業を急いだんだよ。」

 溜息を吐く一護に、夜一は内心でぞっとした。
 齢十六でしかないこの子供は、確かに浦原の事も夜一の事も、それどころか会った事もない藍染の事まで読んでいる。卍解の修業を急かしはしたが、焦っている節は見られない。鬼道を使いこなせないかと思わせて器用に使いこなすし、まだ隠し玉があるとでもいうのだろうか。
 夜一の予想はある意味では正解だった。
 翌日の転神体を使った修行の時間帯に、一護は花太郎と岩鷲に、夜一の後ろに入るように指示をした。

「此処で見てちゃ駄目ってか?」

 岩鷲が不満そうに言うと、一護は苦笑する。

「懺罪宮の入口付近で、恋次の霊圧に気圧されそうになってただろ。夜一さんの後ろで霊殊核使って結界張っとけば、安全だと思うんだけどな。」
「………。」

 意味は掴めないが、一護の忠告は無視すると痛い目に遭う事も確かなようだ。岩鷲は渋々と花太郎と二人で夜一の後ろで霊殊核を使い結界に入った。
 それを見届けてから、一護は離れた位置で斬月を構え霊圧を上げる。
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙