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MEMORY 尸魂界篇

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「正義だから勝つんじゃない。勝った方が正義なんだ。だから私達は勝たなきゃならないんだよ。」
「ルキアを助ける事が正義、ってか?」
「当面はな。百年も経てば他人事じゃなくなるんだよ。」
「あ?」
「そうじゃんか。百年も経てば、私達だって尸魂界に来る事になるんだぞ。その時にも冤罪で処刑がまかり通る世界じゃ、危なくっておちおち死神になんかなれるかっての。」

 ふんっと鼻息荒く言い切った一護に恋次は唖然とする。
 尸魂界から無事に帰れないという事は、肉体の死ではなく魂魄の死を意味する事なのに、一護は生きて帰れると信じて疑っていないのだ。

「後……剣八は条件次第じゃこっちの味方もしてくれるよなぁ。」
「あ奴ほど測れん奴もおらぬぞ。その時の状況次第でどう転ぶか判らんからの。」
「まぁ……そうだな。四番隊の隊長さんは戦闘には参加しないだろ?」
「うむ。」
「十番隊は日番谷冬獅郎だよね。」
「霊術院では天才と呼ばれとったらしいぞ。」
「知ってる。京樂さん並みに真相を見抜く目は持ってるみたいだから、敵対はしなくても済むかもな。」
「後は、二番隊の……。」
「砕蜂だっけ? 夜一さんに任せた。」
「儂でのうては無理、かの。」
「うん。」
「あっさり言いおって。」

 夜一が苦虫を噛み潰したような表情になるのを、恋次は不思議そうに首を傾げている。

「市丸隊長と東仙隊長はどうすんだ?」
「ふ、ん。抑々双殛の丘に来るかねぇ?」
「一護?」

 一護は口を覆うように手を当てて何事か考え込み、恋次の顔を見て上目遣いに視線を泳がせ、もう一度恋次の顔を見て頷いた。

「恋次には悪いが、黒幕を誘きだす為にルキアを連れて逃げ回って貰おう。」
「はあっ⁉」
「良いのか、一護?」

 殺気石で作られた懺罪宮四深牢に閉じ込められていたルキアは、少量になっていた霊力を更に削られている。その状態で恋次一人に任せて逃げ回るのは、ダメージが大きくなるのではないかと危惧する夜一に、一護は躊躇なく頷く。

「うん。その為に白哉に挑戦して消耗して貰っちゃ困る。卍解が出来るだけの霊力を保った状態で、ルキアを連れて逃走してほしい。」
「黒幕を誘き出す為にルキアを連れて、って………黒幕の狙いはルキアなのか?」
「ルキアの魂魄の中に隠してある物、だ。」
「ルキアの魂魄の中って……双殛での処刑は、ルキアの魂魄を蒸発させる為って事か?」

 平隊員に過ぎないルキアが隊長格専用の双殛に掛けられる理由がそれと知って、恋次が顔色を変える。

「うん。他にも魂魄の中から埋没物を取り出す方法はあるんだ。けど、その方法は正常な状態では探せない。だからこんな非常事態を起こさせたんだろうな。」
「そんな物がルキアの中に隠してあるってんなら、それこそ総隊長に報告すれば………。」
「黒幕の存在にさえ気付いてない総隊長さんに報告してどうするよ。」
「あ?」

 顔色を明るくして勢いよく口を開く恋次に、一護は溜息を吐く。

「碌な警戒心もなく確認しようとして横から攫われる方が良いってか? まぁ、確認しても今更見つからんけどな。」
「見つからないって、どういう意味だ?」
「こっちに来る直前に知ったんだけど、ルキアの中にあった物、抜き取られてる。」
「は?」

 恋次は意味が理解らず呆気に取られ、夜一も思いも寄らなかった為に目を瞠る。

「一語? どういう事じゃ?」

 眉を顰めて覗いてくる夜一に、一護は苦笑する。

「敵を欺くには味方からって、言ってたよ。知らなけりゃばれないからって。」

 主語を抜いていても誰が言ったかは夜一には当然判る。

「あやつ……。」
「まぁまぁ。夜一さんが陰で画策してれば、奴もあると信じて行動するから。」
「主はないと知っておったのじゃろうが。」
「うん。」

 尚も言い募ろうとした夜一の懐を一護が指差す。

「?」
「夜一さんに預けたろ。絶対に失くさないでって。」

 剣八と対峙するのは避けられないという一護に託された巾着袋を思い出す。取り出して一護の手に載せると、一護はぎゅっと握った。

「それ、か?」
「うん。そう。」
「何故、儂に預けた?」
「万が一の用心に。絶対失くさないで、って言ったろ。戦闘中に落としても拙いし。その点夜一さんなら絶対大丈夫だし。」
「………。」

 信頼に満ちた真っ直ぐな瞳を向けてくる一護の遣り方は卑怯だと内心では思いながらも、夜一はそれ以上の反論が出来なくなってしまう。
 黒幕が、こんな非常事態を招いてまでルキアの中から取り出したい物とは一体何だと言うのだろうか。疑問を向けてくる恋次に、一護は苦笑するだけで見せようとしない。
 一護は恋次の疑問に応える心算はないようで、その場を立って岩鷲と花太郎の所へ行ってしまった。

「不満そうじゃの、阿散井。」
「そりゃ、副隊長の俺が俄か死神に指揮取られてるわけッスからね。面白くはないッスよ。」
「まぁ、そうじゃろうの。……不満を解消出来るかは判らんが、一つ教えてやろう。」
「何スか?」

 胡乱な視線を夜一に向けた恋次に、くすりと笑って声を潜める。

「先程、儂と遣り合うとった一護は、半分も力を出しとらんかったのじゃ。」
「!」
「それこそ、斬魄刀の技も使っとらん。お主もくろうたのじゃろ?」
「あ………。」

 夜一に言われて、一護と対戦した時に巨大な霊圧の刃を食らった事を思い出した。

「つまり、夜一さん相手に、一護は手加減してるって事ッスか?」
「手加減とは違うのじゃろうの。卍解時の霊圧を纏った儘で動き続ける鍛錬をしたいと言いおった。」
「卍解時の霊圧を纏った儘?」

 意味が理解らず首を傾げる恋次に、夜一も肩を竦める。
 一護と話していた花太郎が頷いて出口近くへ向かう。岩鷲も花太郎を追い掛ける。
 夜一の傍に戻ってきた一護に恋次が首を傾げた。

「二人に何を言ったんだ?」
「此処にいると時間の感覚が狂うからな。時間になったら教えてくれるように言った。双殛の丘に隊長達が集まれば、此処で私の霊圧感じていても判るだろ?」
「ああ。なんで態々出口近くに行かせたんだ?」

 隊長達の霊圧なら、此処からでも判るだろうに、と恋次が呟くと、一護は溜息を吐いた。

「ルキアは私の霊圧が満ちた部屋に入った途端、追っていた虚の霊圧を感じられなくなって後れを取ったんだ。」
「虚の霊圧を感じ取れなくなった? ルキアがか?」
「そうだ。後れを取った上に身を挺して私を庇ったりしたから、殆どの霊圧を虚に食われる羽目になったんだ。」
「霊圧を虚に食われた?」
「そう。そんな状態のルキアから貰った力で卍解まで到達出来ると思うか?」
「……そりゃ、無理、だな。」
「そういう事。ルキアの力が戻らないのは、私がルキアの力を奪った所為とかじゃないんだよ。理解ったか?」
「………ああ。」
「理解れば宜しい。残り時間は僅かなんだ。夜一さん、もう一度相手頼む。」
「よかろう。」

 “記憶”では一護少年は自分の卍解の霊圧で体がボロボロになって行き白哉に後れを取るようになり、焦れた内面の虚が前面に出てしまった。
 夜一も百年実践から遠ざかっていた為に鍛錬不足状態だった筈だ。
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙