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MEMORY 尸魂界篇

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「怪我人の救護が先じゃの。四番隊はもう動いとるじゃろうから良しとして、隠密機動は藍染の痕跡の捜索に掛かれ。いくら隊長格が二人従っておったとはいえ、それだけでここまで出来るとも思えん。他にも藍染の手下がおる筈じゃ。見逃すでないぞ。」
「はっ!」

 申し付けられた砕蜂は、隠密機動の指揮を執る為にその場を離れなければならない事に微かな不満を抱えたようで、チラリと夜一に視線を走らせる。夜一は、砕蜂に仕事をしろ、とばかりに顎を杓った。

「また、後での、砕蜂。」
「! はい、夜一様。」

 再会の約束に喜び勇んで駆け去る砕蜂に苦笑して、夜一はギンの身柄を引き受ける。ギンを拘束している縛道は一護が掛けたものだが、その霊圧は馴染みのあるものだった。浦原の霊圧だと気付いた夜一は、一護が使った縛道の正体に気付き苦笑する。
 深く溜息を吐いて、元柳斎は場の収集を付ける事を優先し、夜一が縛道を掛けられた上に霊枷を嵌められたギンを連行した。
 白哉の傷口が塞がった頃漸く駆け付けた四番隊が織姫から治療を引き継ぎ、待っている間に、雨竜と茶渡の傷も織姫が治療する。

「姫。小さな傷まで全部治そうとするなよ。力を使えばそれだけ消耗するんだから。」
「でも、いちごちゃん……。」
「ん?」
「あたし、折角一緒に来たのに、何の役にも立ててない。」
「はぁ? 何言ってんの。恋次や白哉の傷、治してくれたじゃん。」
「あたしは、いちごちゃんの役に立ちたくて来たのに……。」
「ひーめ。白哉が庇ってくれなければ、私が白哉が負ったような傷を負ってたんだよ。謂わば、私が負う筈だった傷を治してくれたって事。私の傷を治すのと同じだろ。」
「でも………。」
「ありがとね。姫。」

 何の為に一緒に来たのか解らない、と言い募る織姫に、一護は苦笑する。隊長に捕まった茶渡と雨竜がこの場にいるという事は、十一番隊と接触した織姫が、剣八を引き込む事に成功し、四番隊から回収してくれたという事だ。収集を付ける段階で二人を回収出来たかも知れないが、早いに越した事はないだろう。岩鷲と花太郎に頼んであったとはいえ、無事に合流もしてくれたのだから、一護にとっては何よりありがたかった。
 旅禍として遠目にしている四番隊とは違い、現世に派遣された経験を持つ死神の何人かが、ちらちらと一護に視線を向けていた。敵意というわけではないそれが気になり、浮竹は自隊の隊員を呼び寄せる。

「一体なんだってそんなに気にしているんだ?」
「え、と、その……。」
「うん?」

 小首を傾げる優しげな自隊の隊長に、隊員は支障がないだろうと思い口を開く。

「その、我々現世駐在任務に就いた者の中で、空座町で任務に当たった者の間で有名な『守護者』をご存知でしょうか?」
「ああ。その話なら聞いているよ。手に余る虚が出た時に影から力添えをしてくれる存在がいるという話だろう?」
「はい。」
「それが?」
「あの、その、旅禍の中にいる人が、その『守護者』と、同じ霊圧で………。」
「……は?」
「本当かい?」

 浮竹に報告していた隊員は、いくら親友とはいえ他隊の隊長から横口を挟まれて後退る。

「あ、と、そのっ……。」
「いや『守護者』の噂は僕も聞いてるよ。二年位前からだろう?」
「あ。はぁ。」
「誰が、その『守護者』だと?」

 浮竹の質問に、隊員は旅禍達の中心で談笑するオレンジ色の髪の死神に視線をやる。

「萱草色の髪の死神が、その人と同じ霊圧で………でも、あの時助けてくれた力は死神の力とは違うし………。」
「ははぁ。それで気になって見ていたんだね?」
「はい。」
「事態の収集を付ける為にも話をする時間を取るから、ついでに訊いてみよう。」
「京楽。」

 窘めるような浮竹に、京楽は軽く手を振る。

「訊いてみるくらい良いと思うよ? それに噂の『守護者』が一護ちゃんなら、今回の事態だけじゃなく一護ちゃんにお世話になっているって事なんだから、四十六室が再開しても咎めだて出来ないだけの恩義があるって主張出来るじゃないか。」
「……まぁ、そう、なるか。」
「そうそう。」

 面白いネタを見つけたと喜ぶ京楽に溜息を吐いた浮竹は、空座町駐在任務に就いたのが十三番隊ばかりでない事に思い至り、他隊からも何か言って来るかも知れないと思った。
 騒ぎの収集が付くまでには時間が懸り、その晩は一般隊士にまで事情説明が行き渡らなかった為、現世組は十三番隊預かりという形を取られた。
 十三番隊の多くがルキアの処刑に嘆願書を出したいと思っていたような者達ばかりだった為、旅禍として侵入した者達の目的がルキア救出と知って、寧ろ歓迎ムード満載だった。その上、誰からともなく、一護が『守護者』と同じ霊圧の持ち主だと噂が拡がり、十三番隊の特に平隊士は諸手を挙げて歓迎した。
 賓客の為に開けられる部屋が用意され、気合を入れた食事が用意され、特に一護の部屋には空座町現世駐在任務に就いた経験者が入れ代わり立ち代わり訪れた。

「流石にこれじゃ、黒崎さんが落ち着かないわよ。もういい加減にしなさいよ。」

 見兼ねた清音が溜息混じりに言うと、すごすごと引き下がった平隊士に一護は苦笑する。

「ごめんね、黒崎さん。どうもその、空座町の駐在任務に就いた連中が任務中に危ないところを助けてくれた何者かを『守護者』と呼んでいるんだけど、その霊圧がどうも………。」

 言い難そうにしている清音に一護は知らん顔をしている。

「虎徹さん? 何かあるんですか?」

 何も知らない織姫は無敵だ。清音が言い難そうにしていても構う事なくズバリと尋ねた。

「う~ん。」

 チラリと一護を窺った清音は、一護が知らん顔をしているので、コホンと咳払いをして口を開いた。

「朽木がそうだったように、平隊員の死神には現世駐在任務というのがあるの。他はそうでもないんだけど、空座町はちょっと特殊でね。駐在任務に就いた平隊員だけじゃ、手に負えないクラスの虚が出る事があってね。」
「いちごちゃん、すっごく大きな虚も倒してたけど………。」
「井上さん。黒崎は特別だと思うよ。」
「そうなの?」

 雨竜のフォローにきょとりとしている織姫に、清音は冷や汗を掻く思いだ。

「二年位前から空座町で任務に就いた死神が危ない時に、陰から援助してくれる存在が現れたの。」
「二年前?」

 確かに自分達は空座町から来ているが、何の関係があるのか判らず雨竜が首を傾げる。一護が死神になったのはルキアが任官してからの事だし、それ以前況してや二年も前なら、一護とて中学生の頃だ。

「で、ね? 『守護者』に助けられた子達が口を揃えて言う事には、黒崎さんの霊圧がその『守護者』の霊圧と似てるって。」

 現世組が揃って一護を振り返ると、一護は気不味そうにポリポリと頬を掻いている。

「いちごちゃん?」
「一護?」
「黒崎?」

 身に覚えがあるのか、と言外に揃った質問に、一護は溜息を吐いて頷いた。

「じゃあやっぱ、黒崎さんが『守護者』なんだ。」
「なんか、大袈裟な事になってんだね。」
「大袈裟なもんですか!! お蔭でここ二年ばかり、空座町の駐在死神の殉職率が下がったのよ。」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙