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MEMORY 尸魂界篇

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「藍染に騙されて冤罪を創り出した時点で、権威なんぞ地に堕ちてると思うけどね?」

 だからあっさり藍染に皆殺しにされたんだろう?
 鼻先で嗤う一護に、夜一とギンは苦笑する。他の死神達は苦い表情だ。

「そら、そうやろけど、一護ちゃんは辛辣やね。浦原が冤罪に落とされた所為なん?」
「中央四十六室は、権威を保つとか言う理由で隠蔽を繰り返して来ただろうが。己の非を認められない輩ってのは、何度でも同じ間違いを繰り返すって相場が決まってるもんだ。」

 一護の真剣な視線を受けて、ギンは言葉を失くす。
 暫く沈黙した後、ギンは深く溜息を吐いて口を開いた。

「見掛けに拠らずイケズやなぁ。」
「そうか?………ああ。ある意味では意地悪かもな。あんたが自分独りで成し遂げようとしていた事を邪魔してるわけだし?」

 ひとり、を『一人』ではなく『独り』と発音した一護に気付いたのは、この場にいる者ではギンだけだった。
 ギンが見ていた一部始終を報告しろという事は、一護も自分の出自を晒す覚悟を付けているという事だ。そう考えたギンは、溜息を吐いて口を開いた。
 あの自己顕示欲の強い藍染がばらさなかった事。それを護廷隊に報告するという事は、藍染にとっては敵になる者達に情報を流す事であり、ギンの立場を藍染と同じ裏切り者ではなくす事に繋がる。

「そら、ボクはあの時の一部始終を藍染隊長と要と一緒に見とったよ。百一年前の事は、ボクは見とっただけやけど。」
「百一年前も、藍染惣右介が真犯人なのじゃな?」
「そうや。浦原隊長と握菱鬼道長は様子を見に来て、藍染隊長が真犯人やって気付かはったんや。というか、藍染隊長は浦原隊長が罪を被せるのに都合が良いと判断したんやろね。態と姿を晒しとったよ。」
「浦原君は、規定違反の義骸を作ったという罪状じゃなかったのかい?」
「それは表向きや。死神を虚化させる実験が、中央四十六室が浦原隊長に行った断罪や。あん時、実験体にされはった隊長はん・副隊長はんらは虚として処分される筈やった。四楓院隊長はんが手引きしはったお陰で皆逃げはったけどなぁ。」

 事の真相を目撃していたギンから聞かされて、中央四十六室の決定だからと大人しく従った事が、今回の下地になった事は明白で、疑惑を持ちながら事の真相を調べようともしなかった京楽は苦いものを噛み締めた。
 浦原と握菱鉄裁に下された処分も、逃亡された結果、中央四十六室が面目を保つ為の処分に過ぎない事も明白だ。

「十八年前の鳴木市での死神連続死亡事件もな、藍染隊長が、死神の魂魄搔き集めて作った虚が、死神と融合する為の実験やったんや。」
「!」
「何があって、何が起こって、どうなったかを、報告したら?」

 一護が腕を組んで小首を傾げながらギンを見ている。

「要がホワイトって名付けた虚が、駐在死神を次々殺しとったら、十番隊の斯波隊長が来はったんや。そんでホワイトをあっさり葬りそうになったんで、藍染隊長が浦原さんの置き土産になった霊圧を消すマントに鬼道掛けて姿まで消して、斯波隊長に斬り掛かって背中に傷を負わせたんや。」
「背中に傷?」
「卍解出来ひんようにやって。」
「隊長の卍解、体に負担が掛かるって……。」

 乱菊の呟きに、隊長達がギンを振り返る。それにギンは頷いた。

「卍解出来ひんようにならはって、斯波隊長は案の定危のうなったなぁ。」

 一護は、身を乗り出す乱菊と冬獅郎に視線を向けて苦笑する。
 一護の眼には、遊子と夏梨が重なったのだ。一護の様子と気持ちに気付いた夜一も苦笑を浮かべている。

「ほしたら、そこに思いがけん助っ人が入ったんや。」

 ギンが溜息を吐くと、死神達は思い掛けない助っ人の見当が付かず互いに顔を見合わせる。元柳斎は、斯波隊長が報告しなかった要項が増えた事に片目だけを開けてギンを見遣る。

「滅却師の女の子やった。」

 ギンの言葉に一護と夜一以外が息を呑む。
 事が十八年前で女の子となると、雨竜の父・竜玄の世代だ。場所が鳴木市なら石田家の範疇の筈だが、その世代の女性の滅却師など記録がない。況してや滅却師は死神の援けに入るような思考は持っていない筈だ。

「そんで、その滅却師の女の子の援けで斯波隊長はホワイトを葬る事が出来てん。けど、死神に憑りついて自爆する筈やったホワイトが、滅却師の女の子に憑りついて自爆したんで、要は怒っとったけど、藍染隊長は面白がっとった。」

 話し終えたとばかりにギンが肩を竦めて息を吐く。

「黒崎一護。端折り過ぎと申したは、霊圧も姿も消した存在に斬り付けられた事と滅却師の少女に助けられた事、かの?」
「報告しなかった理由も、見当付くけどね。」

 息を吐いて口を開く一護に、周囲の視線が集中する。その様子に一護は僅かに眉を顰めて指摘した。

「姿の見えない者の攻撃を、虚じゃなく死神だと判断したんじゃね? 虚を匿う死神、つまりは正体の知れない裏切り者がいるって事だ。それと、滅却師は殲滅した一族、なんだろ。助けられたと報告する事は、監視すべき生き残りの存在を明確にするって事だ。命の恩人を売るような真似をするような男か?」
「斯波隊長ならどちらもしねぇな。裏切り者の正体を独自で調べて、答えを見つけてから報告だ。」

 冬獅郎が口を開く。
 乱菊が頷き、京楽も浮竹も頷く。

「斯波隊長の失踪は、その後だ。現世に行ってくるって書き置きだけしてそれきり帰って来なかった。俺は、その一件と斯波隊長の失踪は無関係じゃねぇと思ってる。」

 冬獅郎の呟きに、その場に沈黙が落ちる。

「十三番隊の副隊長だった海燕が虚に憑りつかれて部下に斬らせた事態に続くように、十番隊隊長の一心が理由不明の失踪。それじゃ、斯波家が五大貴族の地位を剥奪される憂き目に合うわけだな。」

 一護が溜息を吐くと、夜ーが苦笑する。

「斯波姉弟(あやつら)は五大貴族の地位剥奪を憂き目とは思うとらんじゃろ。叔父貴の失踪は理由が判らぬ故心配しとったらしいがの。」

 夜一の言葉が過去形だと気付いて、一護はちらりと視線を向ける。一護の視線に気付いた夜一が軽くウィンクすると、意味を理解した一護は苦笑する。

「つまり、護廷じゃ十八年前の事件の真相も斯波隊長の失踪の原因も把握してないわけな。」
「……そうじゃの。」

 元柳斎の声は静かだが、報告しなかった隊長に対する微かな苛立ちがあるようだ。

「斯波隊長が何しに現世に向かったかは簡単に答えが出ると思うぞ。」

 冬獅郎と乱菊に視線を向けて一護が言い放つ。
 首を傾げる二人に、一護はコホンと咳払いをした。

「状況から考えて、虚を倒した斯波隊長の近くに駐在死神が存在した事は想像に難くない。なら、滅却師の少女を斯波隊長はどうしたか?」
「……逃がす?」
「多分、礼を言う暇もなく、なんじゃね?」

 一護が頷くと、顔を見合わせた冬獅郎と乱菊は同時に頷く。

「存在を総隊長に報告しなかった少女に礼を言ってなけりゃ、改めて礼を言いに現世に行ったわけか。報告してねぇ存在に会いに行ったなら、用向きが書き置きされてなかったのも当然だな。」
「その先を知ってるのは当人達だけだな。」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙