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MEMORY 尸魂界篇

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 一護は再び溜息を吐いて、こんなに溜息ばかり吐いていたら自分の幸せとやらは無くなってしまったかも知れない、とかくだらない事を考えた。

「この先の話は内密にしておいて貰いたいかな。」
「内密じゃと?」
「死神と虚の境界を失くす実験に、藍染は成功してない。浦原さんは成功する術を現世で研究して見付けた。この先にはその話も出るからな。」
「なるほどの。昨夜の例もあるという事じゃな。」

 一護は苦笑して同意を示した。
 当然の判断だとも思い、元柳斎を始め死神達は承諾した。

「礼を言いに向かった先で、斯波隊長は少女と再会し、少女の許嫁だった青年と出会い、浦原さんと出会ったわけ。」
「許嫁って………十八年前くらいなら、現世じゃあそういうのないのが普通じゃない?」

 乱菊の言葉に、一護は苦笑する。

「その二人は当時残った最後の純血統の男女の滅却師だったそうだよ。」

 一護の言葉にも意味が理解らないと乱菊は首を傾げる。

「滅却師ってのは犬猫宜しく血統に拘ってたらしい。青年は石田竜玄。石田雨竜の父親。」

 死神達は、雨竜を斯波隊長を助けた少女の息子か、と認識した。

「少女は黒崎真咲、竜玄の従兄妹に当たる。」

 冷静な一護と違い、死神達は多少混乱する。
 黒崎、という姓で、もしや、と思い当たった死神達の視線が一護に集中する。
 そこで何があったかは知らないが、その先の事態を知っているギンも無言で見守る。

「本当は、浦原さんを此処に呼び付けて話をさせるのが正確なんだろうけど、それは流石に無理だろうから、当事者の一人から直に聞いた話で勘弁な。」

 苦笑して一護が口を開く。

「ギンが言ったろ? 死神に憑りついて自爆する筈だった虚が、滅却師の少女に憑りついて自爆したって。」
「ふむ。」
「つまりホワイトは真咲に憑りついた。真咲は斯波隊長が再会した時には虚化が進んでる真っ最中だった。」
「!」
「助ける術を持っていた浦原さんが、偶然真咲を見掛けて後を追っていたらしい。」
「助ける術?」
「元に戻す方法じゃない。命を助ける術、だ。虚化は間違いなく消滅を意味するけど、滅却師のそれを止めるにはワクチンじゃ足りない。」

 この場に涅マユリはいないが、彼がいたとしてもその術は知らない。目の前にいれば悔しがる顔が見られただろうに、と思う。

「ワクチン、とは何じゃ?」
「死神、人間、滅却師の虚化は魂魄自殺、魂魄の外枠が消滅する事だそうだけど、それを起こすんだと。要は魂魄のバランスが崩れるんだって。藍染はそれを把握しない儘に実験を繰り返してるから、消失する度に失敗と判断したわけだ。虚化した死神に対しては、滅却師の光の矢と人間の魂魄で作ったワクチンだったけど、滅却師である真咲を助ける方法は違う。滅却師である真咲。内に入り込んだ虚、斯波隊長という死神、足りないのは?」
「……人間、か?」

 答えを出したのは冬獅郎だった。

「流石だね、天才。」
「……。」

 一護の賛辞に冬獅郎の眉が顰められる。

「浦原さんの技術で、人間と同じ存在になれる義骸に斯波隊長が入り真咲と繋ぐ、つまり封じる事でバランスが取れる。義骸に入った斯波隊長は、真咲が死ぬまで傍に居る事で虚化を防ぐ存在になる。但し、義骸に入る事で一切の霊力を失い二度と死神に戻れないという条件だったそうだ。」
「………斯波隊長は躊躇しないわね。」

 乱菊が苦笑混じりに言い、冬獅郎が頷く。

「竜玄青年は、デメリットしかないその方法を死神は選択しないと思ったらしい。けど、実際はあっさり選択してのけた。結果として許嫁を奪われたわけだけど、今でも付き合いは続いているんじゃないか?」

 此処まで話して答えの出ない者はいない。

「じゃあ、君は、滅却師の血も引いているという事なのか。」
「藍染が興味を示すのは当然の成り行きの対象だと思うよ?」
「その事を、君は何故識っているんだい?」
「そりゃ、聞いたから。」
「誰から?」
「当事者の一人から。」
「斯波隊長か?」
「私は母似でね。」
「「「?」」」
「父は母にぞっこんだから。」
「?」

 意味が理解らず不思議そうな表情の儘なのは元柳斎だけで、他の者は一心の気性をそれなりに知っていたので、正解に辿り着いていた。

「それにしてもよくそんな話をしたわねぇ。斯波隊長の性格なら娘にはデロ甘で、親馬鹿全開するんじゃないの?」
「まぁ、してるね。だからこそ、私の質問に誤魔化しとか出来なかったんだと思うけど?」
「ああ、なるほど。」

 京楽も浮竹も苦笑しながら納得を示す。

「一護ちゃんは、浦原君からも話を訊き出すの上手みたいだしねぇ。」
「……浦原さんはそんなに話はしてくれないよ。」

 苦笑する一護に、京楽も浮竹も瀞霊廷にいた当時の浦原を思い出し、そういえばかなりの面倒臭がりだったと思い至る。

「良く君の面倒を見たねぇ。」

 京楽が言うと、一護は瞳に翳を映して苦笑する。

「そりゃ、浦原さんとしては、永久追放処分にされて自分じゃ尸魂界には行けないから、自分の代わりに動いてくれる駒が欲しかったんだろ。」
「………。」
「い、一護ちゃん?」

 言葉を失くした浮竹とは対照に、京楽は一護の冷めた反応に驚いて口を開く。利用される事を喜ぶ者などいない。だが、一護の態度は、浦原が一護を利用しようという思惑を承知の上で動いたとしか思えない。

「そんなに驚く事かなぁ。私がその話を聞いたのは十三になる少し前だったけど、藍染が私に目を付けているだろう事は想像が付いたよ。だから藍染に利用されるか、浦原さんに利用されるか、どちらかになるだろう事は見当が付いた。」
「主はそれで浦原喜助を選んだというのじゃな?」
「百一年前の事聞いてたからね。」
「む?」

 百一年前に浦原が尸魂界を追われた一件に、護廷隊は粗関与が出来ず、真相を追求する隙もなかった。

「浦原さんは、藍染に虚化させられた隊長格達を助ける為に虚化を解除できる可能性を探っていて出遅れた。結果、解除は失敗に終わったらしいけど、その間に藍染に偽の証拠を揃えられて冤罪を被せられて、弁解の余地もなく断罪されたと聞いたよ。」
「………。」

 藍染を怪しいと疑いながらも、真相を追求しようとしなかった京楽は沈黙するしかない。

「自分の保身よりも仲間を助ける事を優先した浦原さんの方が、姿を隠して斯波隊長を斬り付ける輩よりも信用出来る。少なくとも私が簡単に殺されないように鍛えてくれるくらいはしてくれると思えたからね。」
「究極の選択ってやつ?」

 乱菊の茶々に、一護は肩を竦める。

「使い捨てで何時死んでも何の感慨も持たない輩よりは、出来る限り使い回そうと鍛えてくれる人の方がましだけど?」

 乱菊さんは違うのか?
 一護が小首を傾げて問うと、乱菊は反論の余地もなく、揶揄うどころではなかった。

「藍染がやらかした事で、四十六室全滅だけは、私は不問にしてやっても良いと思うぞ?」
「ちょっ……一護ちゃんっ!」
「百年前の一件だって、まんまと藍染に騙されて、冤罪の浦原さんとテッサイさんを処分しようとしたんだし? 他にも莫迦やってるだろ、四十六室は。同情の余地があるとは思えないね。」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙