MEMORY 尸魂界篇
食事の支度が出来るまでに同行者全員が霊殊核を使えるようになり。食事の後に休んでから出掛ける事になった。
「ゆっくりしている暇は…っ」
「いいのか? 瀞霊廷に入ってから寝てる時間はないかも知れないぞ?」
休憩を取る事に反対する雨竜の言葉を、一護が至極あっさりと退ける。一護の言葉に夜一が頷き、織姫が考え込むように黙る。
「俺の所では休めねぇとでも言う心算なのか?」
意地でも引き下がりたくないという気配を纏う雨竜に、空鶴が低い声を出す。
「こんな家じゃ落ち着けないに決まってるじゃないですかっ!」
一護が止める間もなく、雨竜が口走った言葉に、空鶴の拳骨が雨竜に頭に落ちる。
「何を……っ!」
「姉貴に逆らうんじゃねぇよっ!」
茶渡が雨竜の口を大きな掌で塞ぎ、岩鷲が慌てて雨竜を抑え込む。
耳に届いた溜息に雨竜が向けた視線の先では、一護が呆れ返った表情をしている。
「空鶴さんの鬼道、直に食らいたいのか、石田?」
「………。」
霊圧の壁で防がれたとはいえ、空鶴が放った鬼道をまともに食らっていたら、自分達もただでは済まなかっただろう事態を思い出す。流石の雨竜が黙り込むと、一護はほっと息を吐いた。
「私が鬼道が苦手な事には変わりないんだ。疲れた儘で霊殊核使って花鶴射法なんて冗談じゃないぞ。集中が切れたらドカン!なんだからな。」
一護が鬼道が苦手というのは誤魔化しだ。
瀞霊廷の中に入ってからメンバーがバラバラになる事態を招く為の布石である。
一護の思惑に気付いた夜一は、一護も無茶な事を考えるものだ、と内心で独り言ちた。
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙