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MEMORY 尸魂界篇

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「ん~。不測の事態でバラバラになったって装って、私が派手に動き回って敵の注意を引き付けて置いて、その間に夜一さんが十三番隊の隊長さん達に連絡を取ってくれたら良いかなって思うんだけどさ。」
「何……?」
「ルキアの処刑に双殛を使うって決定したんだろ?」
「……そうじゃ。」
「隊長格でもない一平隊員の処刑に双殛なんて変じゃないのか?」
「!」

 驚いている夜一に、一護はやはりそうか、と小さく息を吐く。

「事情通ならではの落とし穴、だな。崩玉の事を知らないなら、ルキアの処刑に双殛が使われる事に疑問を抱くのが普通なんだよ。四十六室の決定は絶対正しいだなんて考えてるのは、経験値の浅い連中だろ。浦原さんとテッサイさんが追放処分になった時の経緯を知っていたら、疑問を持つのが普通じゃないのか?」
「そうなると……。」
「ルキアの上司の隊長さん、浮竹さん、だっけ? 彼と、親友だっていう京樂さん? その二人なら、四十六室の決定に疑問を持っている可能性も高いと思うよ。」

 確かに百年前の一件でも、二人は四十六室の裁定に疑問を持っているようだった。

「……一護の方が事情通なのではないかのぅ。」
「え、そう? 親父から隊長さん達の性格聞いて、そうじゃないかと思ったんだけど。」
「そうか。……ふむ。喜助に霊圧を消せるマントを頼んだそうじゃが、もしや、その為じゃったのか?」
「うん。」
「そうじゃったか。それは済まん事をしたのぅ。儂が反対したのじゃ。」
「ああ。なるほど。私達が騒ぎを起こしている間に、夜一さんが動く心算だったんだ。」
「すまんかった。」
「いいよ。兎に角、ルキアの処刑阻止の本隊と、夜一さんの動きを隠す為の揺動は私が主体でやる。チャドも揺動組だな、あいつの能力も派手だから。岩鷲も付いて来るなら揺動側に入って貰うかな? 斬魄刀はなくても鬼道はある程度使えるんだろ? 姫と石田は成り行きでどうとでもして貰うか。」
「良いのか?」
「姫と石田は無茶しなきゃ、なんとかなると思うんだ。姫は特に、妙に運が良いしさ。」
「それほど甘い相手かのぅ。」

 夜一の危惧に、一護は肩を竦める。
 この時点では藍染の注意は一護にしか向いていない。
 元々勝算が高い勝負ではないが、藍染が正体を明かせば現世組の事は済む事態である筈だ。藍染が鏡花水月で死を装えば、それこそ現世組は生きて捕獲すべしの命令が下るに違いない。

「ルキアの処刑推進派は、白哉と総隊長さんだろ。四十六室の命令だからってだけで従順に従わないのが、日番谷冬獅郎。卯の花隊長さんも冷静だろうけど、四十六室の命令には素直に従う人だろ。四十六室が奴の傀儡になってると気付かなければ障害にしかならないかもね。」
「逆に言えば、四十六室が傀儡と気付けば、こちらの味方になるやも知れぬ、か?」

 一護は肩を竦める。
 確かに記憶の中では、日番谷冬獅郎と卯の花烈は独自で動いて藍染が四十六室を装ったと気付く人物ではあるが、二人とも他との連携が薄く到底間に合ったとはいえない状態だった。

「それにしても、何故市丸ギンはお主を殺さんかったのじゃろうな?」
「………多分、奴は私達が乗り込んで騒ぎを起こす陰で暗躍する心算なんだと思う。」
「今更か?」
「騒ぎが起きれば、冷静に事態を考えていられなくなるんじゃね?」
「考えていられなくなる?」
「四十六室が怪しいという考え自体を沸かせない、とか。」

 “記憶”の中で、藍染はこの時点では既に四十六室を虐殺して、鏡花水月で四十六室が会議を続けているように装っている筈だ。
 藍染がルキアの魂魄内から崩玉を取り出す時に使った道具を思い出す。浦原はルキアの魂魄内に崩玉を隠した時、どうやったのか?

「………夜一さん。」
「なんじゃ?」
「浦原さんは、どうやってルキアの中に隠したんだろ?」
「ん?」
「尸魂界内の技術に関する記録って、何処かに集められてるんじゃないか?」
「おお、そうじゃ。地下議事堂の大霊書回廊に集められておるじゃろ。」
「其処って、普段自由に出入り出来る所なのか?」
「いや………」

 “記憶”の中で、一護は未熟故に藍染に鏡花水月を使われなかった。
 瞬歩を使えるようになって、使い熟せるように全力で浦原に挑んで相手をして貰ったものの、最後まで浦原に本気を出して貰えなかった一護では、藍染に挑むのは犬死に等しい。かといって隊長達に情報を流しても個別に調べていたのでは抹殺されていくだけだろう。
 一護は両手で髪をぐしゃぐしゃに掻き回す。

「い、一護? どうしたのじゃ?」
「ん~。どう手配りを考えてみても、今回出来るのは、ルキアの命を助ける事止まりだ。」
「それだけ出来れば上出来じゃろう。」
「あれは奴に持ち逃げされるかもよ?」
「それは……」
「奴の斬魄刀の能力、隊長格から上位席官には既に使われていると考えた方が良いんじゃね?」

 一護の言葉に夜一が目を瞠る。

「お主は、奴の斬魄刀の能力を知っておるのか?」

 一護は一護で、夜一が知らなかった事が意外だった。

「夜一さんは知らなかったのか? 浦原さんなら気付いて報せてると思ってたんだけど。」

 珍しく困惑も顕わな表情で言葉を継ぐ一護に、夜一は小さく溜息を吐く。

「儂は知らぬぞ。」
「え、そうなのか。」
「奴の斬魄刀の能力とはなんじゃ。」
「完全催眠。五感の全ての感覚を思い通りに出来る能力だと思う。」
「完全催眠。」
「そ。親父が鳴木市で虚に襲われた時、背中から斬り掛かられて傷を負ったのって、霊圧遮断マントを使われただけじゃないと思う。ああ見えて到って勘は鋭いんだ、うちの親父は。」

 その一心が微塵も気付かなかったなら、感覚そのものを狂わされていたとしか考えられない、と言う一護に、夜一は考え込む。

「そうなると、打つ手がないのぅ。」
「ん~。霊圧遮断マントがあれば、有利に動けたんだけど、ないとなるとある程度奴の掌の上で踊るしかないなぁ。」

 ふっと溜息を吐いた一護は、手櫛で髪を直して夜一に苦笑を向けた。

「日番谷冬獅郎に伝言を頼んでおくかな。」
「……なんじゃ?」
「一番始めに知らせて置いて。伝言でも伝文でも良いから、『雛森桃を護りたいなら、傍から離すな』と。」
「どういう意味じゃ?」
「障害になりそうな死神の中で奴の策次第でどうにか出来るのが冬獅郎だ。動きを封じたり動揺させたりする材料に雛森桃を使うと思う。」
「……主は儂を伝書鳩にする心算かの?」
「命懸けで揺動する見返りくらい欲しいんだけど。」
「………仕方ないのぅ。」

 夜一相手にあれこれ指示を出す一護に、空鶴は口笛を吹く。

「なかなかやるじゃねぇか、一護。夜一相手に指示するたぁな。」
「……伊達に、策士の浦原さんの弟子やってないし。」
「ほぅ。お前、浦原の弟子か。ってか、浦原が良く弟子なんぞ持ったもんだな。あの面倒臭がりが。」

 にやりと笑う空鶴に、一護は肩を竦める。



作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙