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第三部15(115) Messiah 5

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ソプラノとアルトの二重唱が終わったタイミングで休憩に入る。


「ユリウス!」
― よくやった。

アレクセイがまだ一部の興奮冷めやらずボウっと着席し続けているユリウスをギュッと抱きしめた。

「…」

言葉にならずユリウスが抱き締めてくれたアレクセイの身体に腕を回す。

そんなユリウスの興奮を沈めるかのようにアレクセイは抱きしめた彼女の背中を優しくポンポンと撫で続けた。


「バブーシュカ!」

二人の所に息子夫妻とその娘、そしてアルラウネがやって来る。

「びっくりしたよ~。ムッターが舞台で、しかもソリストとして歌ってるんだもの」
― そのドレス、とても似合ってる。綺麗だよ。ムッター

ミーチャがドレス姿の母親をそっと抱きしめビズーを交わした。

「ありがと…。今日急に代役に決まってね。…もう必死だった」

「お義母様。歌もお上手なのね。まるで…その白いドレスも相まって、天使様みたいだった」
うっとりと言ったマリオンに

「こいつは…昔まさに「金髪の天使」って呼ばれてたんだよ」
とアレクセイが昔を思い出しながら答え、アルラウネも

「そうだったわね。あの遥か昔レーゲンスブルグで聴いたあなたのディスカントソロを思い出したわ」
― あの時のあなた、それは清らかで神々しくて…本当に天使のようだった。

そう言って懐かしい遠い目をした。

「そんなことも…ありましたね。あなたはアレクセイの「婚約者」としてぼくの前に現れて…」
― 美しく女性らしいあなたを見て、心がチクリと痛んだのを覚えています。

ユリウスも面映ゆそう顔で往時を回顧する。

「あら、そうだったの?」

「そうでしたよ」



「バブーシュカ。綺麗」

ドレスアップした祖母の美しい姿にヘレナが瞳を輝かせる。

「ありがとう。ヘレナ」

ふと思いついてユリウスが髪に挿したコサージュを外し、ヘレナの着ていたカーディガンに挿した。

ユリウスが編んでプレゼントしたその白いモヘアのカーディガンにコサージュの開きかけの赤い薔薇が引き立ち、パッと目を惹く。

「よく似合う」

その姿に満足げにユリウスが微笑んだ。

作品名:第三部15(115) Messiah 5 作家名:orangelatte