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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 学校で授業でも受けているように無感動な小百合に対して、ラナはひどく驚いていた。バッティは無表情のままフレイアの話を拝聴(はいちょう)していた。フレイアは話し続ける。
「その世界は生命の母マザー・ラパーパに見守られながら人も動物も穏やかな心を持ち、永遠とも思われる平和を謳歌(おうか)していました。しかし、平和は永遠ではありませんでした。終わりなき混沌デウスマストが多数の眷属(けんぞく)を従えて襲ってきたのです。デウスマストはあらゆるものを無に帰す存在です。マザー・ラパーパは世界を守るためにデウスマストに立ち向かいます。長き戦いの末にデウスマストとその眷属の封印には成功しますが、自らも力尽き、マザー・ラパーパを失った世界は均衡が破れて二つに分かれてしまいまうのです。その二つに分かれた世界が現在の魔法界とナシマホウ界です」
「あの、マザー・ラパーパというのは?」
 小百合はフレイアの話を切るのが申し訳ないと控えめに言った。
「あなたに分かりやすく言えば、大昔の世界を見守っていた女神というところです」
「今の話とあのロキめとどのような関係があるのでしょうか?」
「ロキは、元はデウスマストの眷属だった男なのです」
 バッティにフレイアが答える。それを聞いた小百合には違和感がある。
「眷属もマザーラパーパに封印されたと言っていましたが」
「ロキはデウスマストに従うことを良しとせずに離反し、人間の体を乗っ取ってデウスマストとのつながりを断絶しました。彼は人間となった為にマザー・ラパーパの封印から逃れる事ができたのです。そして今に至るまで長い時を生きているのです」
「奴の目的は何なのでしょうか?」
 バッティの声が神殿内に響く。しばらくはセイレーンの美しくも淫(みだ)らな歌声が細く聞こえてくるだけだった。
「ロキの目的はムホウを越える闇の魔法で二つの世界を支配することです」
「なんですと!?」
 バッティが一人だけ驚いていた。小百合とラナにはムホウというのが何だか分からない。フレイアは二人の心の声を聞いているかのように続けた。
「ムホウとは道理を超越した力です。ナシマホウ界の人間にとっては魔法も道理を越えた力ですが、それをさらに上回るものと思えばいいでしょう」
「ムホウが魔法よりも上の力で、ロキはそれよりさらに上の闇の魔法を使う……」
 独り言のように囁く小百合にフレイアが頷く。
「ロキはその完全なる闇の魔法で封印を解いてやがて現れるデウスマストに対抗しようと考えていたようです。何もかも無にされてはロキの支配する世界がなくなってしまいますからね。しかし、デウスマストは伝説の魔法つかいプリキュアによって倒され、宇宙で新たな生命に生まれ変わりました。デウスマストがいなくなったところでロキの目的は変わりません。デウスマストを倒すために用意した力を世界の支配に使うだけです」
 小百合はロキの目的よりも、伝説の魔法つかいがデウスマストを退けた事実の方を重くとらえた。
 ――あの二人が世界を救っていたのね。伝説の魔法つかいは、わたしが思っている以上にすごい力を秘めているのかもしれない、十分に気を付けなければ……。
 小百合の中で注意が必要だと思うのはロキよりも伝説の魔法つかいの方だ。敵の大将であるロキが現れることはそうそうないが、同じ目的をもって動いているリコとみらいに出会う可能性は高い。
 フレイアの話は続く。
「ロキの生み出した闇の魔法の正体は、わたくしにもよくわかりません。ただ一つだけ確かなことは、ロキが闇の結晶を使ってさらに強大な力を生み出そうとしていることです。もしそれが成功してしまったならば、もはや誰にもロキを止めることはできないでしょう。例え、プリキュアでも」
 そしてフレイアは黙する。微笑を浮かべたまま、もうこれ以上は何も言う気配がなかった。そこまで話を聞いて、小百合にはフレイアが闇の結晶を集めている意図が見えた。ロキのさらなる力の覚醒(かくせい)を阻止することが目的の一端(いったん)であることは間違いなかった。
「わかりましたフレイア様、もっと気合を入れて闇の結晶を探します」
 小百合が言っている横でラナが大きな欠伸(あくび)をする。その頭を小百合が軽くはたいてびっくりしたラナが変な声を出すと、
「ウフフッ」
 フレイアが声を出して笑った。基本が笑顔なので分かりずらいが、今の瞬間にフレイアが心の底からの笑顔を見せたことが小百合とラナには分かって心が温まった。

 誰も見知らぬ地の底の世界にある闇の城、その玉座に座るロキの前にフェンリルが横に白い袋を置いて白猫の姿で座っていた。その横には巨漢のボルクスがいる。フェンリルがボルクスの横にいると豆粒のようにちっぽけに見えるが、その姿はボルクスよりも遥かに威厳に満ちている。そんな彼女が言った。
「ロキ様、闇の結晶でございます」
 フェンリルが白袋を前に押し出すとロキが口の端を吊り上げる。
「相変わらずよく働くなお前は」
 フェンリルがくいと小さな頭を下げる。次にロキはとなりのデカブツに向かって言った。
「お前はどうなんた、ボルクス」
「へい、もう少しでプリキュアを倒せそうだったんですぜ、本当にあとちょっぴりで!」
 ボルクスは胸を張って堂々とした態度で言った。ロキは眉をひそめてあからさまに不機嫌な顔になる。
「闇の結晶はどうした!?」
「俺はプリキュアを倒してロキ様に認めてもらおうと思いやして!」
「バカかてめぇはーっ!!」
 ロキの一喝でボルクスが瞬間冷凍されたように硬直する。ボルクスの足元でフェンリルは顔を背けて声を殺して笑っていた。
 ロキが玉座から立ち上がると、ボルクスの恐怖から巨体にどっと汗が吹き出す。
「プリキュアを倒すというのは悪くはねぇが、お前は失敗した。ごたごたとつまらねぇ言い訳は必要ない、結果が全てだ」
 ロキが目の玉だけを動かしてボルクスを見下げる。見られた方は圧倒的な眼力で臓腑(ぞうふ)が縮むような感覚と胃のむかつきを覚えた。
「俺は気が短い、次はないものと思え」
「へへぇっ!?」
 ボルクスは巨体を丸めて頭を下げていた。ロキに対する恐怖がそのように体を突き動かした。そんな情けない姿のボルクスの横でフェンリルが顔を上げて言った。
「ロキ様、報告があります」
「何だフェンリル、言ってみろ」
「伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいは敵対関係のようです。これを利用しない手はないかと」
「そうか。奴らは光と闇、対極の存在だ。相容れぬのは当然だろう」
 ロキは玉座に落ち着き傍らの台の上の黒龍の像をお気に入りのペットのように愛おし気になでて言った。
「フェンリル、お前に任せよう。ボルクスはフェンリルの命令に従え」
「うぐぐ、へい……」
 ボルクスは体を丸めたまま悔しそうにうめいた。

 翌朝から闇の結晶の捜索が始まる。小百合とラナは今までに何度かいっている商店街から探してみたが、あまり見つからない。代わりに闇の結晶らしきものをくわえている猫を何度か見かけた。
「また猫が闇の結晶みたいのくわえてるよ〜」
 ラナが指す方向に堀の縁を歩く猫がいた。確かに黒い物をくわえている。小百合が近づいていくと、今まで見た猫と同様に一目散に逃げてしまう。