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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「どうして猫が闇の結晶なんかを?」
「たまたまなのかなぁ」
 小百合が考えていると、空から闇の結晶を探していたリリンが降りてくる。
「小百合、くやしいデビ!」
 リリンが小百合に胸に飛び込んでくる。
「何がくやしいの?」
「木の上に闇の結晶を見つけたのに、猫に取られたデビ」
「また!?」
「商店街の猫はきっと黒い物が好きなんだね」
 ラナが安易なことをいうと、小百合の頭に閃きが降りてくる。
「猫が好きなのは魚でしょう。あんな石ころをくわえている猫が何匹もいるなんておかしいわ。何者かが猫を統率して闇の結晶を集めさせているのかもね。そうだとすると敵の仕業ね」
 その時に小百合はさらに閃きがあって微笑した。
「次の場所に移りましょう。他に街はないの?」
「あるよ! 魔法工場街(まほうこうばがい)!」
「魔法工場?」
 ラナが笑顔でうんうん頷いてから言った。
「いろんな魔法の職人さんがお仕事している街なんだ」
「魔法の職人さんのお仕事みてみたいデビ」
「さっそく行ってみましょう」
 それから小百合たちは二人用の箒に乗ってラナの言う魔法工場の街に向かった。

 ラナは全速力ではないが、相当な速さで飛ばしていく。小百合は少し怖かったが、さすがに慣れてきた。リリンはラナの膝の上で抱かれて一番前の特等席で風を切る感覚と流れていく魔法界の景色を楽しんでいた。
「あそこにお空に浮かぶ島があるデビ!」
 リリンが黒い手で指した方角に空中に浮いている大きな島があった。
「あれが魔法工場街だよ〜」
「大きいわね」
 ラナが箒を傾け横滑りしながら島に近づいていく。その箒操作に小百合の足がすくんだ。
「ひっ!? なんでそんな変な飛び方するのよ!」
「ちょっと方向まちがっちゃったからさ」
 小百合はそれっきり何も言わない。自分が箒に乗れるようになるためにも、すこし足がすくむ程度のことは我慢しようと思いなおしたのであった。
 街に近づくと、魔法商店街とは一味違った街並みが見えてくる。魔法商店街の全容が八角形なのに対して、魔法工場街は正方形であった。大型の建物が多く、道も広く商店街の3倍はありそうだ。網の目状に走ったその道が長方形のエリアをいくつも作っている。小百合はまるで工業団地だなと思った。工場の屋根は三角だったり平らだったり斜めだったり様々な形のものが赤や黄色や緑など色付きのおもちゃの積み木のような色彩で見た目にも楽しい。
 背後から動物の鳴き声らしきものが聞こえてくる。それは鳥の鳴き声をもっと太く勇ましくしたような声だった。
「危ないよ、お嬢さんたち!」
 後ろから来た巨大な生物が小百合たちを抜かしてゆく。
「おっきいデビ!」
「あれは、ドラゴン!?」
「ウィンドドラゴンだよ。重い荷物を運ぶドラゴンの運送屋さんだね〜」
 それは緑色の体に大きな翼と長い尻尾の付いた翼竜であった。首の根元の鞍に乗って男性が操っていた。その背中には山積みの丸太がくくりつけてある。
「ドラゴンが降りられるように道が広くなっているのね」
「それだけじゃないよ、ほら、あれ」
 ラナの示した方を見ると、荷物満載の大きな空飛ぶ絨毯が広い道に降りるところだった。遠くの方にはカタツムリニアのレールも見える。魔法界の工業の中心地だけあって、材料の搬入にあらゆる運送手段が用いられているのだ。
 小百合たちは広い道の隅の方に降りた。
「さ、闇の結晶を探すわよ」
「うわ〜」
「デビー」
 ラナとリリンは小百合の言うことなど聞いておらず、近くの工場を覗き始めた。小百合は目的を忘れている二人をジト目で見るが、自分も職人の魔法には興味があった。
 そこは木工所で丸太を職人が木材に変えていた。数人の職人が魔法の杖を振り、複数のノコギリやカンナが勝手に動いて丸太から木材を切り出し、角材や平材に仕上げていく。熟練した職人の魔法による製材は素早く、まるでオートメーションの工場を見ているようだった。
 職人の姿は長袖に長ズボン、鍔のない丸い帽子というような成りが多く、商店街ではよく見かけたとんがり帽子やケープはほとんど見当たらない。
 次の訪れたのは家具工場で、二人の職人が木材で何かを作ろうとしていた。
「キュアップ・ラパパ、組み上げろい!」
 中年の職人が杖を振ると材料が一気に組みあがって椅子の形になる。
「キュアップ・ラパパ、トンカチよ釘を打て!」
 もう一人の若い青年職人が杖を振ると、トンカチと釘がひとりでに浮いて必要な場所に次々と釘が撃ち込まれていく。始めて見る魔法の制作を小百合は食い入るように見つめていた。
「共同作業なのね」
「うちの親方なら一人で全部仕上げちまうけどな」
 青年の方が小百合に向かって言うと、
「こら、きれいなお嬢さんだからって仕事中に話しかけるんじゃない!」
 中年の職人に注意されて青年は謝っていた。
 今度こそ闇の結晶を探そうと小百合たちが歩き出すと、街の低空に垂れこめている雲に人が集まっているのが見えた。小百合は興味が抑えきれずにラナに聞いた。
「あれは何をしているの?」
「人が雲にあつまってるね〜」
 小百合が聞きたいのはそんな事ではない。ラナに聞いても無駄だと思った小百合は、ラナを促してそこまで行くことにした。二人箒に乗って雲に集まる職人たちに近づいていく。
「キュアップ・ラパパ、綿になりなさい」
 小百合たちは呪文を唱えている若い女性の近くまできた。
「雲を魔法で綿にしているの!?」
「すごいデビ! 雲をちぎっているデビ!」
 小百合とリリンが驚いて声を上げると、綿にした雲を丸めながら若い女は笑顔で教えてくれた。
「クモーメンカを作っているのよ。これで職人がベッドや布団を作るの」
「魔法界の綿は雲が原料なのね!?」
 小百合は理解を越えた魔法界の物づくりに目を見張った。
 職人の街は刺激が多すぎて闇の結晶探しが遅れてしまった。気を取り直して懸命に結晶を探し始める二人の少女と一体のぬいぐるみだったが、ここでもあまり見つからなかった。
「あ、あそこに落ちてる!」
 ラナが闇の結晶を見つけて拾おうとすると、その前に猫が来て闇の結晶をくわえて走り去ってしまう。
「あっ! まて〜っ!」
 小百合は猫を追いかけるラナの姿を見ながら言った。
「また猫?」
 猫に逃げられてしまったラナが無念そうに肩を落としながら戻ってくる。
「せっかく見つけたのに取られちゃったよぅ……」
「さっきも闇の結晶らしい物をくわえている猫を見かけたわ。どうやら猫を操っている者がいることは間違いなさそうね」
 小百合が不敵な笑みを浮かべてからラナに言った。
「もう帰りましょう」
「え、もう帰るの? まだ時間あるんじゃなあい?」
「もう闇の結晶を手に入れる算段が付いたから、早めに帰って休みましょう」
「どういうこと?」
「あとで教えてあげる」
 それから二人人は箒に乗って魔法工場街を後にした。時間は昼を少し過ぎたところで、工場街で見つけたパン屋の菓子パンをみんなで食べなが飛んでいった。ラナが食べかけのパンを持ちながら言った。
「今日はあんまり闇の結晶みつからなかったね」
「こういう日もあるわよ。他に集めている敵も多いしね」
「敵って?」