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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「もしかして、二人は愛を誓い合った仲とか?」
 まゆみがとんでもない事をいいだして、小百合はどう返せばいいのか迷った。その隙にラナがいった。
「まあ、そんなようなものかなぁ」
『ええーっ!?』
 みらい達は3人で同時に驚き、もう小百合は叫びだしたいような気持だった。
「ちょっと、ラナ、いい加減なこというんじゃないわよ!! 誤解されるでしょ!!」
 小百合が本気で怒り出すので、それでラナはびっくりしてしまった。
「ご、ごめんね、じゃあいい加減じゃないようにいうよ。この腕輪はね、プリっ」
 間一髪のところで、小百合はラナを捕まえて右手で口を塞いでいた。その手首にはラナと同じ形の腕輪が光っている。
「プリ? なに、その先は!?」
 みらいが異常なほどに反応して二人に迫る。追い詰められた小百合は、嘘のように焦りがなくなり、心を急速に冷凍でもするように、何かを超越した冷静さを宿す。
「そんなに知りたいなら教えてあげるわ。これはね、プリンアラモードの誓いの腕輪よ」
「プリンアラモード!?」
「そうよ、わたしたちはプリンアラモードが大好きなの。このプリンアラモードが大好きな素敵な気持ちを忘れないようにという誓いの腕輪なのよ」
 小百合はラナの口を塞いだ状態でまことしやかに話す。
「プリンアラモードの誓いなんて変わってるわね……」
 まゆみは口を半分あけて何ともいえないという表情だった。
 小百合はラナを開放すると、その肩を掴んで無理やり自分の方に振り向かせて目と目をしっかり合わせた。小百合の瞳の中にはもはや怒りを通り越し、悪魔的な冷徹さと非情さが醸(かも)す闇が広がっていた。それに見つめられたラナは命の危険すら感じた。
「ねえ、ラナ、プリンアラモード好きよね?」
「ひぃぃ! 好きです、大好きです! もうプリンアラモードには目がなくって!」
「まあ、そういうことだから、この腕輪の話はもう終わりね」
 急に笑顔になっていう小百合の姿に、みらい達は背筋が凍った。みらいとまゆみは小百合の内なる迫力に圧倒されてしまったが、魔法つかいへの情熱を燃やすかなには恐れなどなかった。
「そんなことよりも、正義の魔法つかいよ! あなた達の学校で出たっていう正義の魔法つかいについて知ってることがあったら教えて!」
 顔を引きつらせる小百合の横で、ラナが大きく頷く。
「それならよく知ってるよ〜」
「本当に!? どんなことでもいいから知ってることを教えて、見た目とか髪型とか、どんな魔法つかうとか、身長とか体重とか生年月日とか!」
 みらいとまゆみが後半の質問はないなと思っていると、ラナが言った。
「生年月日? えっとね、生年月日はね」
 その刹那、小百合がまたラナの肩を掴んで自分の方に振り向かせる。
「ラナ、公園でイチゴメロンパンが待っているわよ!」
「おお、そうだった! イチゴメロンパン!」
「ホイップがけだろうが、チョコトッピングだろうが、何でもかかってきなさい!」
「やった〜!」
「さあ公園にいくわよ!」
「お〜」
 ラナは手をあげて、さっさと先に歩き出した。
「イチゴ! メロンパン! イチゴ! メロンパン! ついでに闇の結晶も見つけよ〜」
「余計なこというんじゃないの!」
 ラナは小百合にどやされていた。去ってゆく二人をみらい達は唖然として見送った。その時、小百合が振り向いてみらいを見つめた。それは本当に一瞬のことだったが、みらいを見る小百合の目はとても鋭かった。
「変わった人たちだったね……」
「あの黒猫さんのぬいぐるみ、もっとよく見てみたかったな」
 まゆみとみらいが小さくなっていく小百合たちを見ながら言った。
「そんなことより聞き込みよ! すみませんそこの人、ちょっとお話聞かせて下さい!」
 かなは二人を置いて下校中の聖ユーディア学園の生徒たちに突撃していった。

 かなの積極的な聞き込みによって、色々なことが分かった。学校に現れたのは獣の骸骨のような仮面をかぶった怪物で、それを倒したのは黒っぽくて可愛らしい姿をした二人組の女の子だとか、その二人が魔法を使って怪物を倒したことや、学校の屋上まで一気に跳躍する人を超えた身体能力があるだとか、聞き込みに応じた大抵の生徒はそんなようなことをいっていた。そしてみらいは、その二人の女の子が前に見た黒いプリキュア達であることを確信した。

 かなの聞き込みに付き合った後は、みらいは家に戻って着替えて最近の日課になっている黒い結晶を探しに公園に出かけた。
 いつもモフルンの居場所になっているピンクのショルダーバッグには黒い結晶が入っているので、最近のモフルンはバスケットの中に入ってみらいと一緒に散歩している。この日、みらいはいつかリコと出会った時のように、桜が満開に咲く公園の中をモフルンと一緒に歩いていた。
「今日はぜんぜんないなぁ」
 いつも公園を散歩すればいくつか見つかる黒い結晶が今日は一つもなかった。
「他の場所にいってみようか」
 みらいはモフルンに向かっていった。
 夕方近くなり、公園には花見に集まる客が増えていた。大人たちが桜の美しさを楽しみながら酒を酌み交わし、楽しそうに雑談する姿があちこちに見られる。公園の中で鬼ごっこなどをして遊ぶ子供や、ジョギングや散歩をする人も多かった。その中を白い猫が歩いていた。野良猫のようだが人など恐れもせず、近づいて触ろうとする子供や少女を巧みな身のこなしで避けていく。その左目は金色で、右目がターコイズブルーのオッドアイで、長い尻尾は毛が多くふんわりとしている。その尻尾を優雅に揺らして歩く姿には気品があった。そして白猫は首から黒いタリスマンを下げていた。それは、オーガのボルクスがヨクバールを召喚する時に出現させる闇の魔法陣そのものの形をしていた。
「タリスマンが強く反応している、すぐ近くに闇の結晶があるね」
 人の言葉を発した白猫は、反応するタリスマンに従ってみらいの背後に近づいていく。
「ちょいと待ちな、そこの人間」
「はい?」
 みらいが振り向くと、そこには誰もいなかった。
「あれ、今誰かに呼ばれたような……」
「目の前で呼んでるよ!」
「ええ!? 声が聞こえるのに姿が見えないなんて!?」
「どこ見てんだい、下だよ下っ!」
 みらいが視線を落とすと、足元に白い猫が座ってこちらを見ていた。驚いたみらいはしゃがんで白猫をよく見た。至宝の宝石のように美しいオッドアイを見つめると、驚きは即座に感嘆(かんたん)に代わる。
「きれいな白猫さんだね! あなたしゃべれるの?」
「わたしの名はフェンリル、ロキ様のために闇の結晶を探しているのさ。あんたは闇の結晶をたくさん持っているだろ、それを渡してもらおうか」
「本当にしゃべってる! そうか、誰かに魔法をかけてもらったんだね」
「ちがうよ、わたしはしゃべれる猫なんだよ!」
「すごい! 猫をずっとしゃべれるようにできる魔法なんてあるんだね!」
「ちがーう! 魔法は関係ない、魔法から離れろ! ええい、面倒だね!」