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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 校長が見下ろした先に小人が前で手を組んで立っていた。背中にはトンボに似た4枚の翅があり、草葉を思わせる緑色のドレスと頭には大きく開いた桃色の花びらの上に可愛らしい白花を乗せた冠をかぶっていた。彼女は妖精の里の女王である。
「騒がせてすまぬ。わしは魔法学校の校長じゃ」
「まあ、魔法学校の校長先生でしたか。よくここがお分かりになりましたね」
 魔法学校の校長と聞いて女王は納得した。普通の魔法つかいでは妖精の里にたどり着くのはまず無理なのだ。
「レジェンド女王に尋ねたいことがあって参じたのだが、お会いできるだろうか?」
「レジェンド女王様は日光浴をしておられますわ。はるばる校長先生がここまで来たのです、きっとお会いになられるでしょう」
 校長は鎧姿の妖精兵士の案内で無限に広がると思われるような広大な花の平原に出た。虹のような色彩の野の花の中に台座が設けられ、レジェンド女王がそこに座って目を閉じていた。周りには数人の護衛の兵士もある。先ほどの女王とは違って丸顔で等身が短く翅も小さめで、全体的に丸っこくて可愛らしい印象である。団子にした薄紫の髪とパフスリーブの小さなドレスがその体躯によく似あっていた。このレジェンド女王は自分でも分からなくなるくらい遠い昔から生きている。
「お休みのところ申し訳ない」
 校長が頭を下げて言うと、深い皺の中にある二つの真ん丸の目が開いた。陽光で輝く瞳の中には小さなピンクの花模様が入っていた。
「あなたがこんな場所まで訪ねてくるなんて、よほど大切な用事なのでしょう」
「さよう、あなたに教えてもらいたいことがあるのです」
「わたしの分かる事であればお教えしましょう」
 少し肌寒い風が吹いて色とりどりの花びらが二人の間で舞った。
「あなたは有史以前から魔法界の歴史のすべてを目撃しているはず。わしが知りたいのは魔法界の有史と闇の歴史の間にあると言われている虚無の歴史についてなのです」
「そんな歴史は存在しません」
 レジェンド女王ははっきりと言った。濁りのない一言であった。
「本当に何も知らぬのか? はっきりとしたことでなくても構わない。断片的な記憶でも何でもいいのだ」
 校長の必死な思いが伝わって、レジェンド女王の顔にはっきりとした戸惑いが現れる。
「わたしは魔法界の全てをこの目で見てきました。そんな歴史の記憶はございません。それに、昔のことはあまり思い出したくないのです。とても恐ろしい記憶なので……」
 校長が残念そうに目を伏せる。校長にとってレジェンド女王の記憶が一つの希望であったが、逆に謎を深める結果になってしまった。
「あの時、どうして闇の魔法があんな風に広がってしまったのでしょう……?」
 レジェンド女王が下で咲き乱れる野花を見つめて独り言のように話し始めた。校長はそれに神経を集中して耳を傾ける。
「穏やかな光の下で誰もが幸せに暮らしていたのに、全ての人が魔法をつかい、魔法を愛して、平和に暮らしていたのに、人々は突然に狂いだし、瞬く間に魔法界は闇に覆われました。何があんな風に人々を狂わせたのでしょうか……?」
 レジェンド女王は顔を上げて、そこに何者かがいるかのように宙を見つめる。
「とても温かなあの光は……」
 レジェンド女王の丸くて小さな瞳が輝いて涙がこぼれ落ちた。
「なぜ泣いているのですか?」
「よくあるのです、昔のことを思い出すとふと悲しくなることが。どうして訳もなくこんなに悲しくなるのでしょう、おかしなことです」
 もうこれ以上話すことはなかった。校長はレジェンド女王に黙礼して花園から去っていった。
 渡る風で花吹雪が乱れる。レジェンド女王は空に精霊のように舞う花びら見つめてまだ悲しそうな顔をしていた。可愛らしい真ん丸の瞳からまた涙がこぼれ落ちた。