二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|129ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

「あの二人はわたしたちと同じプリキュアであることは紛れもない事実だけれど、それと敵味方はまったく別の問題よ。同じプリキュアでも目的や考え方が違えばぶつかり合うことだってあるのよ。あなたはそこの所がまったく分かっていないわ」
「どっちも闇の結晶とかいう黒い石ころを集めてるんだろ? 協力すればいいじゃねえか!?」
「わたしたちの主は全ての闇の結晶を欲しているわ。リコとみらいがこっちに闇の結晶を渡してくれるのなら喜んで協力するけれど、彼女たちには彼女たちの考えがあって闇の結晶を集めているの。だからいずれは、彼女たちが持っている闇の結晶も奪い取らなければいけない」
 冷たく言い放つ小百合の前に、チクルンは先ほどの偉そうな態度が一変して、魂を打ち砕かれたかのように呆然としてしまう。小百合の言葉の中には貫徹(かんてつ)した意思があった。やがてチクルンの表情が徐々に変わり、歯を食いしばり行き場のない気持に小さな体が固まった。
「……おいらには何がなんだかさっぱりわからねえ。けどよ! お前はみらいやリコとは戦っちゃけねえって気がするぜ!」
「みらいも同じようなことを言っていたわ。何の根拠もない無意味な言葉だわ」
 チクルンは小百合に完全に言い負かされてぐうの音も出なかった。体の震えで悔しい気持ちを表して、チクルンはテーブルの上から飛び去り、開いている窓から飛び出していく。
「ちっくしょーっ!」
「あっ、チクルン!」
 ラナがリリンを頭に乗っけたままドアから出ていく。誰もいなくなった部屋で、小百合は軽いため息と共に再びペンをとった。

 外に出たラナは、すぐに空中で止まっているチクルンの姿を見つけた。
「あ、いた〜」
 チクルンはくるりと振り向くと、腹を触りながら言った。
「おいら腹減っちまった」
「それならいいものがあるよ!」
 ラナは近くの樹からリンゴを三つもぎって樹の根元に座った。その左と右にリリンとチクルンが降りてきて同じように座ると、ラナがリンゴをそれぞれに渡す。チクルンは自分の体より大きいリンゴにかぶりつくと、そのうまさに顔を上気させた。
「うめえ! このリンゴ、花の蜜くらい甘いぜ!」
「おばあちゃんのリンゴ最高でしょ〜っ」
「いつ食べても最高デビ!」
 そして3人仲よく並んでリンゴを食べ始める。チクルンは小百合にもの申すためにリリンについてきたのだが、ラナともすぐに仲良くなったのであった。
 チクルンはリンゴを食べながら言った。
「なあラナ、小百合ってなんか怖くないか?」
「そんなことないよ〜、小百合はとっても優しいよ。わたしうんとたくさん助けてもらったんだ」
「そうなのかよ。おいらには優しそうには見えないぜ」
「小百合は優しいけど厳しいんデビ」
「どっちなんだよ……」
 それからチクルンは腹いっぱいになると、飛び上がってラナとリリンを見おろして言った。
「おいらモフルンのところに行ってくるぜ!」
「うん、きをつけてね!」
 チクルンは空に向かって飛んでいったかと思うと、途中でUターンして戻ってくる。
「魔法学校ってどっちだ?」
「あはは〜、あっちの方だけど、チクルンのハネじゃすんごい時間かかると思うよ〜。わたしの箒で送ったげるよ!」
「本当か、助かるぜ!」
 それからラナがマッチ棒程度の箒を一振りして元の大きさに戻すと、それにまたがって言った。
「二人とも、しっかりつかまってないと落ちちゃうからね!」
 リリンはラナのひざの上に座り、チクルンはラナの肩につかまった。
「いっくよ〜」
 ラナが箒を斜め上に空に向けると、筆の部分から小さな星が無数に噴出し、爆音と共に凄まじい勢いで飛び出した。筆から飛び出す星々はロケットの噴射さながらで、想像だにしない勢いでチクルンは振り落とされそうになった。
「は、はええっ!??」
「いやっほ〜っ!」
 今日は小百合が後ろにいないので、ラナは遠慮なしに飛ばし、周りの雲を吹き飛ばしながら進んでいった。
 
 間もなく魔法学校の正門にラナが着陸した。
「とうちゃく〜」
「も、もうついたのかよ!?」
「本気出して飛べばこんなもんだよ」
「とっても早くて楽しかったデビ〜」
 ラナに抱かれて言うリリンを見て、チクルンも前の方に座ればよかったと少し後悔した。止まった場所が悪かったので、ラナにつかまっているのに必死で楽しむ余裕などなかった。
「じゃあ、チクルン、元気でね! みらいたちによろしく!」
「なんだ、一緒にこないのかよ?」
 チクルンに言われるとラナが首をふった。
「みらいたちに勝手にあったりしたら、小百合を裏切っちゃうから」
 とても行きたそうに言うラナが、チクルンには寂しそうに見えた。
「わかったぜ、世話になったな!」
「また遊びにくるデビ」
「おう! またな!」
 チクルンはリリンと右手を上げ合い、魔法学校の門をくぐっていった。

 みらいたちが魔法商店街から帰ってくると、意外な訪問者に驚かされた。チクルンが半分開けてあった窓から入ってきたのだ。
「やっときたな、待ってたぜ」
 みらいに抱かれているモフルンが最初にチクルンを見つけて手をあげる。
「チクルン、こんにちわモフ。遊びにきたモフ?」
「ちっと話したいことがあってな」
 リコはチクルンの姿を認めると言った。
「あなたにはまだお礼を言っていなかったわね。この前は助けてくれてありがとう」
「気にすんなって。それより、お前らが小百合とラナの敵っていうのは本当なのか?」
「それは……」
 リコの表情が途端に曇る。チクルンは黙っているリコにむきになっていった。
「どうなんだよ!」
「しーっ、しーっ! 今そんな話しちゃダメっ!」
 みらいが慌てて唇に人差し指を当てて言うと、チクルンが不審げにそれを見つめる。するとリコが気力を失ったように肩を落として歩き出し、自分の机の前に座ると突っ伏してしまった。菫色の長い髪が周りに広がり、顔は完全に見えなかった。そんなリコの姿を見たチクルンはびっくりしてしまった。
「おい、リコはどうしちまったんだ!?」
「それが……」
 みらいがチクルンに耳うちする。
「なんだってぇっ、リコが小百合を怖がってるだって!?」
「声が大きいよ! リコに聞こえちゃう! 今落ち込んでるんだから!」
「す、すまねぇ」
 チクルンは急に小声になって言った。
「でもよ、リコの気持わかるぜ。早百合って確かに怖いよな」
 チクルンが言うと、みらいはどこか納得できない気持ちを下げた眉に現した。
「小百合は本当は友達おもいの優しい人なんだよ。ただ、お母さんのためにすごく一生懸命なだけなんだよ」
 まっすぐにそう思うみらいの気持はチクルンに十分に伝わった。それでも今度はチクルンがどこか納得のいかない顔をしていた。