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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ダークネスはマジカルの腹に膝を入れて、巴投げの要領でマジカルの攻撃を受け流すと同時に投げ飛ばした。マジカルの攻撃の威力を100%利用した完璧な反撃だった。
 ――この勢いならトパーズの能力でも対応はできない!
 ダークネスのその計算は間違いではなかった。マジカルは地面にしたたかに叩きつけられるか、障害物に激突して大きなダメージを受ける。ダークネスがそれを確信して振り向いた時、マジカルが空中で黄色い円に足を付いた瞬間だった。
「!?」
 驚愕するダークネス。先ほどと同じ柔らかさの黄色いクッションにマジカルの足が深く入り、先ほどの2倍程伸長した。ダークネスの反撃の勢いを更に加えて、マジカルが突出する。先ほどと全く同じ攻撃だが、勢いと威力が格段に上がっていた。瞬間と言ってもいい短い時間でマジカルが接近、ダークネスは腕を組んで防御するのが精いっぱいだった。
「はあーっ!」
 マジカルの攻撃が炸裂し、ガードの上からでもダークネスを盛大に吹っ飛ばす。ダークネスは腕が痺れて表情を歪めた。
「くう、わたしの攻撃を完璧に読んでくるなんて!」
 そう、マジカルはダークネスの攻撃を予測して先に黄色いオプションを配置していたのだ、自分が飛ばされるであろう場所に。
 吹っ飛んだダークネスが地面に足を着き、そのままの状態でかなりい長い距離を踵で地面を穿ちながら後退した。そして、ようやく止まったその場所の近くには、向かい合っているウィッチとミラクルの姿があった。ダークネスはウィッチが黄色いリング状のものに捕らわれている姿を見るなり、跳躍してウィッチの前に降りると同時に手刀を打ち下ろす。
「はぁっ!」
 黄色いリングが断たれ、ウィッチが自由になる。黄色い円盤の上を何度か跳んで後を追いかけてきたマジカルが、ミラクルの隣に着地した。そして二人の側に二つの黄色い球体が寄りそってくる。ダークネスが二人を睨みつけ、ウィッチはダークネスがどうするつもりなのか分からず不安な顔をしていた。今にも糸が引きちぎられそうな緊張した空気の中で、マジカルが右手を前に出してダークネスに見せつけた。彼女の手には黒い袋が握られていた。瞬間に変化したダークネスの表情には、驚き、憎悪、自分に対する怒りなど、様々な負が含まれていた。
「それは、わたしたちの!? いつの間に!?」
 マジカルはダークネス達が集めた闇の結晶の入った袋を持っていたのだった。マジカルは余計なことは何も言わずに、ただ黙ってダークネスたちに黒い袋を見せつけていた。すると、悔しそうなダークネスの表情が和らいで笑みが浮かぶ。
「今回はわたしたちの完全な敗北ね。ウィッチ、撤退よ」
 ウィッチは負けたのにも関わらずほっとしていた。ダークネスは飛んできたリリンを抱くと、二人で同時に跳躍し、大きなキノコの傘の上に乗ってから、もう一度跳躍して姿を消した。
「借りは返したわ」
 マジカルが言った直後に、いきなりミラクルが抱きついてきた。
「マジカル、良かった」
 頬を寄せてくるミラクルの眼尻に涙が浮んでいた。マジカルはミラクルを優しく抱いて言った。
「心配をさせて悪かったわ。わたしは大丈夫だから」
 慈しみの深い二人の姿を、モフルンはキノコの傘の上に座って嬉しそうな笑顔で見つめていた。

 小百合とラナが無人島を出た時には、もう夕方になって空は赤くなっていた。二人は箒で横並びに飛んでいく。ラナはしきりに小百合の横顔を見ていた。小百合は負けて落ち込んでいるんじゃないかと思ったが、無表情なので心情を読み取ることはできない。そのうちに小百合が言った。
「今回はリコにしてやられたわね」
「え? どういうこと?」
「トパーズで有利に戦えると分かっていても、自分たちからこちらを攻めればわたしは警戒するわ。わたしたちの方から攻撃させることが、リコの戦略の要だったのよ」
「はいぃ??」ラナには小百合の言っている意味が全然わからなかった。
「リコはね」それに続く小百合の話の内容に、ラナは大いに驚くのだった。


「演技だったの!!?」
 みらいの声がオレンジ色に染まる雲間に渡る。みらいとリコは箒に乗って晴れやかな気持ちで魔法学校に向かっていた。
「ええ、そうよ。わたしが落ち込んだふりをすれば、小百合が必ずその隙をついてくると思ったから」
「ぜんぜんわからなかったよ。わたし本気で心配してたんだから!」
「モフルンもぜんぜんわからなかったモフ」
 穏やかなモフルンとちょっとだけ怒ったふうなみらいにリコは申し訳なさそうに言った。
「本当に悪かったと思っているわ。わたしもみらいが心配してくれる姿をみるのがつらかった。でも、中途半端じゃ小百合を騙すことはできないわ。それにほら、敵を騙すにはまずは味方からって言うでしょ」
「でも、なんでそんな演技をする必要があったの?」
「こちらから仕掛けるのはみらいが望まないと思ったし、もし仮にこちらから攻めていったとしたら、警戒した小百合がどんな手を打ってくるかも分からないし、色々な観点から見て向こうから攻撃してもらう方が効果的だったのよ」
 みらいがうんうんと頷くと、リコは自分の講義に酔いしれる学者のような心持になって言った。
「小百合はその性格上自分から攻撃してきたからには、多少不利になっても引かないと思ったわ。その予想は的中したわね」
 小百合が不利でも戦い続けたからこそ、リコは闇の結晶をもぎ取ることができたのだ。相手の性格まで計算に入れていたリコに、みらいは驚くばかりだった。
「すごいよリコ! 完璧だよ!」
「狙いどおりだし!」
 みらいに抱かれて二人のやり取りを見ていたモフルンが心の底から嬉しい笑顔になった。
「みらいもリコも元気になって嬉しいモフ!」
 そんなモフルンを見ていると、みらいもリコも嬉しくなり、二人は顔を見合わせると同時に笑顔になった。


 その夜、みらいとラナはそれぞれの居場所で同じ月を見つめていた。ナシマホウ界の倍はある大きな三日月は、闇に抱かれた魔法界に淡い光をふらせる。まるで静かな水の底にいるような群青の大地に、木々や建物の薄い影が落ちていた。二人は別々の場所で、大切なものを探し求めるように三日月に向かって手を伸ばした。みらいは少しの悲しさと大きな希望を胸に言った。
「わたしたちは分かり合える」
 ラナは訳もなくうれしい気持ちになった。
「うん、そうだよ、みんな一緒になるんだよ」
 遠くのみらいに答えるようにラナは言った。互いの声が聞こえるはずがない。けれど、互いの心が触れていた。二人の思いが一つになり、別々の場所で二人の声は重なっていた。
『いつか、きっと!』