魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦
マジカルが地上に向けたリンクルステッキの先にオレンジ色に輝く蝶が現れ、それが羽ばたくとダークネスの足元がうねる。
「しまった!?」
マジカルはうねっている大地にまっすぐに降りてくる。そして、地上すれすれで黄色い球体が足場を作ってマジカルを受け止めた。マジカルはそこから前に向かって跳び、ダークネスに迫る。
「はあ――っ!!」
今までやられた分のお返しとばかりに、マジカルの思い切りのいい拳がダークネスにヒットした。ダークネスが悲鳴をあげて吹っ飛び、大きなキノコの茎に背中から激突してそれを押し倒した。
モフルンとリリンは空中からプリキュア達の戦いを観戦していた。リリンがモフルンを後ろから抱いて空を飛んでいる。
「ミラクル、マジカル、がんばるモフ!」
「今回はダークネス達が負けてるデビ」
この二人にはプリキュア達が戦っても悲愴感がないどころか、プリキュア同士敵対しているのに、妖精同士は仲が良かった。彼女らはプリキュアの本質の部分を体現した存在なのだ。
「ミラクル、元気になったね!」
「ウィッチのおかげでね」
「よ〜し、おもいっきりいくよっ!」
二人は同時に走りだし、出会った瞬間に同時に突いた拳がぶつかり合った。二人の間から衝撃波が起こって土煙が舞い上がる。
「とあーっ!」
ウィッチがさらに力を込めると、ミラクルは押し出されて少し態勢が崩れた。
「うあっ!?」
「お? わたしの方が強い?」
「力で負けてる。やっぱりトパーズにも弱点があるんだ。でも!」
ミラクルが後方に高く飛ぶと、ウィッチも跳躍する。
「まて〜っ!」
ウィッチの行動はミラクルの予想通りだった。迫ってきたウィッチの回し蹴りをミラクルの前に現れた黄色い盾が防いだ。
「うえ、なにそれぇ!?」
ミラクルの眼前の盾が丸くなって二つに分かれ、それが足の方に移動して広がる。ミラクルはそれを蹴ってウィッチに向かって急降下、空中のウィッチはびっくりした。
「うわぁ、やばい!」
「はぁっ!」
ミラクルの蹴りがガードしたウィッチの腕に強い振動を与える。ウィッチが弾丸のように下降して瞬間的に地面に叩きつけられ、土片と煙が舞い上がる。
「いったぁっ!」
ウィッチが大げさに言いながらクレーター状にへこんだ地面の中央に立ち上がる。予感があって上を見ると、土煙の間から空中にいるミラクルの姿が見える。彼女は頭上で形を成した黄色いハンマーを掴んで振りかぶった。ウィッチは空中から迫るミラクルに対して左手をあげる。
「リンクル・ブラックオパール!」
「とぉりゃーっ!」
ウィッチの手から広がった黒い盾にミラクルのハンマーが炸裂した。その時にまき散らされた圧力で辺りにただよっていた大量の月煙が一気に吹き飛ばされた。二人は同時に逆方向に跳んで距離をとった。休まずミラクルの方が攻める。真正面から疾走して迫るミラクルをウィッチが待ち構える。するとミラクルは、ウィッチの目の前で横に飛んだ。
「えっ!?」
目を丸くするウィッチ、ミラクルが跳んだ先に黄色い玉がきて円に広がる。ミラクルはそれをまるで垂直の壁でもあるかのように蹴り、次の瞬間にはウィッチに急接近していた。
「やあーっ!」
ミラクルの肘鉄をウィッチがまともにくらって飛んでいった。
「うわぁ〜っ!?」
ウィッチは墜落してから長い距離を滑って土煙をあげて、体が止まった途端に跳び起きてミラクルを睨んだ。ミラクルは今まで散々苦労させられてきたウィッチを圧倒できて、なんだか不思議な気持ちになった。
「マジカルの言うとおりだ、トパーズならいけるよ!」
「ずっこいよそれーっ!!」
「え?」
ウィッチがミラクルをすごく恨めしそうに見ていた。ミラクルの近くに二つの黄色い玉が浮遊してくると、ウィッチの表情に羨む子供のような味が混じる。
「なにその黄色いの!」
「そ、そんなこと言われても、これがトパースの能力なんだよ」
「その黄色いのかわいい! わたしもほし〜」
「え? ええぇ……」
純真無垢な心で碧眼を輝かせているウィッチを見ていると、ミラクルはふと悲しくなり、もうこれ以上は戦えないと思った。
「ミラクル、もっとトパーズの力をみせてよ!」
ウィッチが元気いっぱいに向かってくる。そしてミラクルにむかって右左のパンチ、回し蹴りと攻撃を仕掛ける。それを避けたミラクルがウィッチの頭上に跳び、彼女の上で黄色い天井のように置かれた四角い板を蹴り、頂点の鋭い三角の形に跳んで一瞬でウィッチの背後に回る。予測不可能なミラクルの動きにウィッチが慌てて振り向く、そこへミラクルの足払いが決まり、ウィッチは尻餅をついて倒れた。
「きゃっ!?」
「ごめんね、ウィッチ」
ミラクルが手を前に出すと、彼女の意思に従って黄色い玉がウィッチの近くに飛んでいって、にゅーっと長く伸びた。それがウィッチの体にまとわり黄色いリングになって小柄な体を拘束した。
「うわ〜」
ウィッチは観念してその場に座り込んだ。
「あう〜、動けない〜、負けた〜」
ミラクルとウィッチの勝負は決まった。しかし、マジカルとダークネスの勝負はまだ続いていた。
巨大なキノコが倒れて地鳴りがする。その前に座り込んでいたダークネスが立つと、彼女から少し距離を置いた場所にマジカルが二つの黄色い玉と一緒に舞い降りた。
「やってくれるわね。ここまで追いつめられるとは思わなかったわ」
「トパーズならいけると思っていたわ、計算通りだし!」
マジカルの計算通りを聞いて、ダークネスは追い詰められているにも関わらず少し楽しそうだった。
「優れた対人能力だわ、それに戦略性も高い。あなたにはおあつらえ向きね。それにしても戦いもしないでトパーズスタイルが有利だとよくわかったわね」
「ルビースタイルであなた達と戦っている最中に、勝てるとしたらトパーズしかないと考えたわ。自信がなかったから勝てると確信できるまで何度もシュミレーションしたんだから」
「あなたの努力には素直に敬意を評するわ。けれど、もう勝った気ではいないでしょうね」
ダークネスが右手を上げて唱える。
「リンクル・ジェダイト!」
腕輪の黒いダイヤが草色の宝石と入れ替わると、ダークネスはその手を地面に向けた。地面に叩きつけられた暴風で釣り埃がわきたち、一瞬にしてマジカルの視界がなくなる。ダークネスの想定外の行動に、さすがのマジカルでも面食らった。
「たあーっ!」
マジカルの間近で気合の一声があり、視界のない中でマジカルがダークネスの蹴りを食らって真横に飛ばされる。
「うああっ!?」
煙の中から躍り出たダークネスが吹っ飛んだマジカルを追いかける。二つの黄色い球体がマジカルよりも先に飛んで先回りし、二人が合体して広がる。マジカルは空中で一回転して黄色いクッションに足を付いた。それが硬すぎず柔らかすぎず、トランポリンくらいの弾力でマジカルを受け止める。マジカルは足を曲げて力をため、黄色いクッションが押し戻す力を跳躍に加えて飛び出す。後を追いかけてきたダークネスが立ち止まり、薄い笑いを浮かべた。拳を突きだしたマジカルが空を引き裂いて迫る。ダークネスはわきの下にマジカルの拳を通し、刹那マジカルの左腕を右腕で組んで捕える。
「はっ!」
作品名:魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦ 作家名:ユウ