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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ラナが笑顔になって、フレイアの体にひしと抱きついた。その瞬間の動作から、「ずっとこうしたかった!」という気持ちが口で言うように伝わった。その時に小百合は、何も考えずに行動するラナが羨ましいと思った。そう思っていると、フレイアの手がゆっくり動いて小百合を抱き寄せていた。小百合がフレイアの体に顔をつけると、温もりと一緒にとても懐かしい匂いがした。それは小さい頃に母に抱かれた時に感じたのと同じ匂いだった。さっきまで寂し気だったセイレーンの歌が、今は小百合の耳に心地よく聞こえている。小百合とラナの間にいるリリンも満面の笑顔だった。


 天気が良く雲の少ない日には、天空に巨大な魔法陣の一部が青空の中にかすんで見えることがある。みらいたちは今、魔法学校の上階をつなぐ渡り廊下でそれを見上げていた。
 みらいはしょっちゅう小百合たちのことを考えては胸を痛めていた。
「はーちゃんがいてくれたらなぁ」
 みらいがほとんど無意識に言った。彼女らの親友の花見ことはなら、今のいかんともし難い状況を何とかしてくれると思えた。リコが今にもため息の出そうな顔のみらいを見つめる。
「きっとはーちゃんは、わたしたちには出来ない大切なことをしているのよ。わたしがナシマホウ界に行けたのもはーちゃんのおかげだと思うし」
「うん、そうだね。近くにいてくれてるって、何となく感じるよ」
 春風が少女たちに触れていく。リコが再び空を見上げると、一欠けらの雲が巨大な魔法陣の下を流れていた。
「はーちゃんの魔法陣とナシマホウ界の黒い魔法陣がつながっているのはどういうことなのかしら?」
 それはリコの独り言だった。みらいもずっとそれが気になっていた。
「あの時見た黒い魔法陣って、小百合たちが魔法を使う時に出るのと一緒だよね?」
「ええ。はーちゃんは何か知っているかもしれないわね」
 そうは言っても、ことははいない。遠くの空に彼女の痕跡があるだけだ。けれど、みらいとリコには確信があった。
「また会えるよね」
「会えるわよ、絶対に」
 根拠などなにもない。けれど、二人とも心の底からそう信じられた。


 ラナがリリンと並んでベッドの端に座り、楽しい夢でも見るように両手で頬を包んでうっとりしていた。それとは全く逆に小百合は開いた教科書とノートを前にして口を一文字に引き結びペンの先でノートを何度もつついている。眉を寄せたまま表情を変えない小百合は、まるで怖い構えの置物のようで、ラナと彼女の間の空気に奇妙な隔たりがあった。
「はぁ、トパーズのプリキュアいいなぁ」
 さっきからぼーっとしているラナの前で、チクルンが飛びながら腕を組んでみていた。
「おめぇ、負けたんじゃねえのか?」
「負けたよ〜、トパーズのプリキュアちょーつよい!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ……」
「だってさあ、ちょうかわいくて、ファンタジックなんだよ! きいろポヨンまで付いてるし! いいなぁ、わたしもあんな可愛いプリキュアになりたいなぁ」
「何だよきいろポヨンて……。のんきというか、なんというか、ここまでいくと何にもいえないぜ」
「あんた、いい加減にしなさい。さっきからうるさいわよ」
 ずっと考えてるふうだった小百合が、目だけをラナに向けて言った。
「小百合だってかわいいと思うでしょ、トパーズのプリキュア」
「冗談いわないで、かわいいわけないでしょう。トパーズは優れた対人戦能力を持っているわ。対抗する方法を見つけなければ」
「そんなの簡単だよ。わたしたちもトパーズみたいなプリキュアになればいいんだよ!」
「なれないわよ、おバカ!」
 それから小百合が考えて出した結論は、もうみらい達には手出しをしないことだった。いくら考えても現状ではトパーズのプリキュアにはかないそうにない。今できることといえば、方々飛んで闇の結晶を探すことくらいだった。


 小百合たちは当所もなく魔法界をさまよう。闇の結晶はなかなか見つからなかった。それはみらいたちも同様で、どちらの組も闇の結晶を頑張って探していた。そして数日が経った。
 そこはいくつかの村が点在する大きな島で、草原の中に森が点在している。上空から眺めると、森が緑色になった海に無数に浮かぶ島のように見える。そして、その島の中央にはひときわ大きな樹、杖の樹があった。杖の樹は魔法界の各所に点在しているのだ。
 この島で小百合たちとみらいたちが箒に乗って別々の場所で闇の結晶を探していた。この二組が同じ島に来ているのは偶然だった。いま彼女らが出会ったとしても、どちらも闇の結晶がないので戦う理由はないはずだ。そんな状況をあざ笑うように、邪悪な意志によって島の中央の空から暗雲が急速に広がった。小百合とみらいは別々の場所で同じものを見つめる。黒い雲はまるで生きているかのように蠢(うごめ)き、島全体を覆っていった。
「え、なになに? どうなってるの?」
「見て!」
 きょとんとして辺りを見ているラナに小百合が言った。
「なんだよあれ」
「魔法陣デビ」
 チクルンとリリンは遠くに見える島の中央、杖の樹がある場所を見つめていた。その上空が黒い雲の中心になっている。そこから魔法陣が広がっているのが見えた。
 みらいとリコとモフルンの目にも魔法陣が映っている。遠くからなので形まではわからなかったが、そこから何が出てくるのかは予感していた。
 黒い魔法陣の中央に描かれている竜の骸骨が形を成し、魔法陣の中から体がひきずりだされていく。黒い塊から腕と足が伸びて、背中に漆黒の翼が開く。その姿は人型の漆黒の影で、頭の竜の骸骨の上に黒いリングが浮んでいた。
 遠くからその姿を目撃したみらいが声をあげる。
「ヨクバール!?」
「どうしてあんな遠い場所にヨクバールが現れるの?」
「さゆりとラナが狙われてるんじゃ?」
 そう言うみらいにリコが何か答えようとしたその時に、
「ヨクバアァーーーールッ!!」
 召喚された怪物の叫び声が空気を震わせた。その瞬間に、別々の場所にいたみらい達と小百合達が同時にふっと消えた。気づいた時には四人の少女の目の前にヨクバールがいて、アイホールの真紅が彼女らを睨みつけていた。リコはそれにも驚いたが、それ以上に小百合たちがすぐ横にいたことにさらに驚愕した。
「ええっ!? あなたたち!?」
「どうなっているの!?」
 小百合もリコを見て同様に驚く。みらいとモフルン、ラナとリリンとチクルンは訳が分からず口をあけて呆然としていた。
「ヨクバールゥ……」
 怪物の唸り声に全員の体に怖気が走った。
「迷っている暇はないわ!」
「そうね、考えるのは後にしましょう」
 小百合がリコに同意して言うと、四人が箒で急降下、草原に柔らかい草の上に立って全員が身構える。みらいとリコ、小百合とラナがそれぞれ手をつないで力を込める。
『キュアップ・ラパパ! ダイヤ!』
『キュアップ・ラパパ! ブラックダイヤ!』