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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 フレイアから小百合の想像とは全く違う、そして最も恐れていた答えが返ってきた。小百合は心が凍りついた。
「もちろん、わたくしがバッティに命令したのです」
「そんな……。でも! 黒い結界を生み出したのはヨクバールです!」
「ヨクバール程度のものならば、闇の女神であるわたくしにも召喚することはできます」
 小百合は悲しみと恐怖に押し出され、無意識に何歩か下がってフレイアから離れていた。
「そんな、どうして……。あの戦いで、ラナとみらいが犠牲になったんですよ……」
「どうしてあなたは敵である伝説のまほうつかいの事まで気にしているのですか?」
 小百合は自分に伝説の魔法つかいが敵だと言い聞かせていたが、フレイアからそれを言われると息が苦しくなるほど胸がしめつけられる。
 ――目の前にいるのは本当にフレイア様なの?
 小百合は本気でそう思った。小百合が知っているフレイアとはまるで別人のように見える。言いようのない怖さが底の方からコップから零れる水のようにどっとあふれてきた。そんな小百合にフレイアがよくとおる声で言った。
「時には非情になることも必要なのです」
 そのフレイアの言葉は小百合の心をいじめるようで後に残る痛みを与えた。小百合は目が虚ろになると、フレイアに背を向けて去っていった。
 箱部屋に向かって来た廊下を戻っている時に、小百合はフレイアからもらった言葉を口にした。
「時には、非情になる事も必要」
 小百合はその声が持つ恐ろしい響きと暗い魔力に触れて身震いした。


 フェンリルはリリアの厨房で自分で作った青空鯛(あおぞらたい)のお造りを見ていた。青空鯛はその名の通り空のように青い色をした鯛で、トビウオのように大きなヒレがあって数百メートルも飛行することができる。見た目は奇抜だが、身がしまっていて非常に旨い。猫を喜ばせるには最高の素材だ。一つ一つが輝きを放つ薄青い切り身が魚の形の中で理路整然と並んでいて美しい。リリアが横からそれをのぞき込んでいった。
「フェンリルちゃん、腕をあげたわね」
「ありがとうございます、先生」
「素敵な料理を作ったのに、なんでそんなに怖い顔しているのかしら?」
「怖い? そ、そうでしたか。ちょいと考え事をしていましてね」
「愛の悩みかしら?」
「そうです」
「まあ! わたしで良ければ相談にのるわよ」
「……先生、わたしにはその愛というやつが良くわかりません。先生にとって愛とは何なのですか?」
 リリアは思っていたのとフェンリルの悩みの方向が違ったので少しばかり戸惑った。しかし、愛について聞かれれば、彼女の中には無限の泉がある。
「そうね、愛と一言でいっても様々な形があるわね。わたしにとって大切な愛は、夫、娘たちへの家族愛。もちろん料理も心から愛しているわ。わたしのお友達や、わたしの料理を美味しいと言ってくれる人も愛しているし、わたしが住んでいる魔法界も愛しているわ」
 リリアから次々と愛が飛び出してくるので、フェンリルは余計に混乱してしまった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。それじゃあ、何でもかんでも愛せるってことじゃないですか」
「その通りよ、愛は無限なのだから」
「愛は無限、無限か……」
 その無限という言葉がフェンリルには妙にひっかかった。
「どうかしらフェンリルちゃん。愛について少しは分かってもらえて?」
「ま、まあ、何となくは……」
 フェンリルは全然分からなかったけどそう言った。するとリリアは嬉しそうに、
「じゃあ、いつものやりましょう」
「はい……」
 リリアが手を組んで微笑を浮かべてフェンリルを見守る。フェンリルはかっと顔が熱くなるのを感じた。彼女が今まで生きていた中で、もっとも勇気と思い切りを必要とする瞬間が訪れる。しかし、料理を好きになっていたフェンリルに迷いはない。
「愛情、は・い・れ?」
 フェンリルの指で描いたハートが活け造りに輝きを与えた。少なくとも、リリアの目にはそういうふうに見えた。
 ――あ〜、恥ずかしい……。
 これをやった後のフェンリルは、決まってもどかしく所在ないような変な気持になってしまうのだった。愛というものが分れば、この気持ちも少しは変わるのかもしれないと彼女は思っていた。


「リコ、一人はダメモフ、危ないモフ」
 リコは魔法学校の制服姿で持ち物の点検をしていた。そんなリコの足元からモフルンが何かを怖がっているような目で見つめていた。
「このままじっとしてなんていられないわ。闇の結晶をたくさんあつめて、みらいが目を覚ましたら驚かせてあげるんだから」
「今はダメモフ、プリキュアになれないモフ」
「大丈夫よ、敵がいたらすぐに逃げるし」
 それはいくら何でも楽観的すぎる。その軽はずみな行動は、いつものリコからかけ離れていた。リコはみらいが倒れたことで自分を責めて、みらいの為に何かしようと必死で大切なことが見えていなかった。逆にモフルンにはリコのそういう心の変化がよく見えていた。
「どうしても行くなら、モフルンも一緒に行くモフ」
「あなたは、みらいの近くにいてあげて」
「いやモフ! リコと一緒に行くモフ!」
 モフルンが怒った顔で入り口のドアのところに立った。そこに一人では絶対に行かせないという強い意志が現れている。リコはそんな姿のモフルンを見るのは初めてだったので驚いてしまった。
「わ、わかったわ。それじゃあ、ちょっと待ってて」
 リコは壁に設置してある魔法の収納スペースの扉を開けて何かを探し始めた。実際、壁の向こうにあるスペースはわずかなものだが、その中に物を置くと10分の1程度の大きさになるので、10倍多く収納できる。箒を小さくする魔法を応用しているのである。リコは小さな家具の引き出しをいくつか開けて、薄紫の古いバッグを引き出した。バッグは外に出されると、たちまち元の大きさに戻った。
「あったわ、昔フランソワさんに作ってもらったバッグ」
 それはリコが小学生低学年くらいの年に、当時見習いだった仕立て屋がプレゼントしてくれたバッグだった。リコはしゃがんで星形のピンを外してバッグを開けると言った。
「みらいのバッグより居心地はよくないと思うど、この中に入って」
「モフ!」
 モフルンは可愛らしい足音を鳴らしながらリコの所に走って、バッグの中に入った。具合が良いようで、嬉しそうに笑顔を浮かべている。リコは一人で闇の結晶を探すのにモフルンを抱いて片手を塞ぎたくなかったので、丁度良さそうなバッグを探し出したのだった。
「リンクルストーンも持っていくモフ」
「変身できないんだから、リンクルストーンを持っていっても意味がないわ」
「だめモフ! リンクルストーンは、プリキュアの大切なお守りモフ! ちゃんと持っていくモフ!」
 これも珍しくモフルンが強く言うので、リコはみらいの机の上にある桃色の袋をバッグの開いているスペース、モフルンの隣に置いた。袋にはリンクルストーンがつまっていた。

深い霧の中をチクルンが飛んでいた。彼は休みなしに飛び続けていたので疲れ果てていた。
「はぁはぁ、もう少しだぜ」
 やがてチクルンは見慣れた大木の前に降りた。
「帰ったぜ! おいらチクルンだ!」