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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「そんなこと思ってないわよ!」
 いい加減なことを言いうリリンに小百合が怒り出す。その時になってリコは少し落ち着きを取り戻して言った。
「どうしてわたしを助けてくれたの?」
「自分でも愚かなことをしたと思うわ。けれど、もしあんたを見捨てたら、ラナはわたしを決して許さない。わたしたちの友情はおしまいになるわ。それは絶対に嫌よ」
 それから小百合はリコのことをしっかり見つめて言った。
「あんたはわたしを殴りたいでしょうね。殴ってもいいわよ、正し無事に帰ることができたらね」
 小百合は上空を警戒しながらこの難局をどうすれば乗り切れるのか考えていた。
「魔法の箒が一つしかないのが痛いわね。二人乗りじゃあのヨクバールから逃げ切ることはできない。脱出する為には2本の魔法の箒があることが絶対条件だわ」
 リコに頭に先ほど自分が乗っていた箒の事が過ぎるが、それを探す暇をくれる程敵は甘くない。二人がどうすべきか考えていると、リリンがポシェットの中から何か出してきた。
「これを使うといいデビ」
 それを見た小百合の顔に驚きが満ちる。
「それ、ラナの箒じゃない!」
「ラナから借りてきたデビ。ラナは小百合の力になりたいんデビ」
 小百合はリリンから箒を受け取ると、感銘と一緒に申し訳ない気持ちが胸を突き上げた。小百合は正直にいって、リリンをプリキュアに変身するためのマスコットくらいに思っているところがあった。今この時に、リリンが小百合やラナに対して心を砕いていたことがわかった。
「ありがとう、リリン」
 小百合は今までの感謝も込めてリリンに言った。それからラナの箒を一振りして元の大きさにすと、自分の乗っていた初心者用の箒をリコに押し付けるようにして渡す。
「あんたはわたしの箒を使いなさい」
「その箒に乗るつもり!?」
 リコは小百合と彼女が持つレーシング用の箒を交互に見つめた。
「これに乗れなきゃ、わたしたちはおしまいよ」
「どうするつもりなの……?」
「あのヨクバールから逃げ切るのは不可能よ。倒して隙を作るしか方法はないわ」
「倒すって、そんなの無理よ。人間の魔法でヨクバールが倒せるわけない……」
 上を見ていた小百合は振り向くと、その眼に怒りと嫌なものを見るような光を乗せてリコの両肩を強くつかんだ。
「あんた、どうしちゃったのよ!? いつもの自信はどこにいったの!? みらいがいないとそんなに弱くなるの!?」
 小百合は不安に押しつぶされそうな顔のリコの肩から手を離すと今度は水の流れるような調子で言った。
「あんたの自信は努力に裏打ちされた本物よ。どんなに辛くても苦しくても努力し続けて、自信をもって今までで前進してきたんでしょう。あんたのそういうところを、わたしは尊敬しているわ」
 今の危機的状況が、小百合の言葉が本物であることを証明していた。リコは胸の内で美しい音律が響いているような気持になった。
「いつものリコに戻りなさい。それが出来なければ、わたしたちは二人ともここで終わりよ! そんなのは絶対にごめんよ! わたしはラナに謝りたいのよ!」
「わたしだってそうよ! みらいに謝りたいわ! いいたい事だってたくさんあるんだからっ!!」
 その時、烈風がリコたちから少し離れた樹の何本かをなぎ倒した。周りに散った風が小百合とリコの長い髪と制服を激しく揺さぶる。
「隠れても無駄だよ! さっさと出てきな! でてこないなら、その辺の樹を全部ぶっ倒してやる!」
 上から威嚇するフェンリルの声が聞こえてくる。そんな状況でもリコと小百合は真剣な目をぶつけ合っていた。小百合はマゼンダの瞳に負けん気の強さを認めると微笑した。
「いつもの調子が出てきたわね。作戦を話すわ。わたしが囮になってヨクバールを引き付ける。リコがその間にできるだけ強力な魔法を使ってヨクバールに一撃を与えて、その隙に乗じて二人で逃げるの」
「強力な魔法って言われても、ヨクバールを倒せるような魔法なんて……」
 リコはそんな強力な魔法を使ったこともないし、その知識すら持ち合わせていなかった。リコが迷いを見せるのは当然だった。小百合はそんな彼女に言った。
「わたしはリズ先生を尊敬しているわ、校長先生よりもよ。あのリズ先生が、リコはすごい魔法つかいになるって自慢気に言っていたのよ。あんたなら必ずできるわ! できないはずがない! リズ先生がそこまで言っているんだからね!」
 リコはそれを聞くと姉の顔を思い出し、むくむくと自信がわいてきて誇らしい気持ちにもなった。刹那的に弱気が消えて、リズに必ず答えてみせるという強い強い気持ちになった。そしてリコは言った。
「あの白猫に見せてあげましょう、人間の底力を!」
「一人で無理でも、二人なら大丈夫モフ!」
「一人と二人の間には天と地くらいの差があるデビ!」
「わたしたちはそれを誰よりも良く知っているわ!」
 最後に小百合が言った。二人は顔を合わせて頷き、ぬいぐるみ達の顔にも絶対に負けないという強い気持ちが出ていた。リコと小百合は同時に箒にまたがり、同時に飛翔した。二人とも手に魔法の杖を握りしめていた。その姿を認めたフェンリルは、狩人としての余裕を見せていた。
「あきらめて二人で仲よく天国に行く相談でもしたのかい?」
 その時、小百合が悲鳴をあげて燕のようにフェンリルの目の前を過ぎていく。
「なにっ!? 一人を囮にして逃げるつもりか!?」
 フェンリルは驚かされながらも、自然と残ったリコの方に視線がいく。リコはフェンリルとヨクバールを見おろす位置で胸の辺りで星の杖を構えていた。その表情に恐れなどない。リコは小百合が敵を目の前にして逃げるような人でないことを知っていた。フェンリルは、二人の少女が生きることを諦めて出てきたと思っていたので、怪訝な顔になった。
 高く上昇してた小百合は雲の中に突っ込んで凄まじい速力に耐えていた。できるだけ体を低く、箒の柄を持つ手の指が握力で白くなっていた。
「でたらめな速さだわ!? あの子、こんなのに平気で乗ってたの!?」
 小百合はこの滅茶苦茶な箒はまるでラナそのものだと思った。そう思うと、ラナにバカにされているような気がして腹が立ってきた。
「気合いれなさい、わたしっ!!」
 小百合は状態を起こし、馬の手綱を力いっぱい引くように箒の柄を引き上げた。小百合は箒で雲の中で半円を描き、雲を突き抜け一気に湖に向かって急下降、そしてヨクバールとフェンリルを前にして止まった。
「戻ってきただと?」
 小百合が三日月の杖をヨクバールに向けると、フェンリルは信じられないものを見て顔を歪め、次の瞬間には笑いだしていた。
「面白いねぇっ! いい悪あがきだ! それでこそ人間だ!」
 小百合は上方向にいるリコと一瞬だけ目を合わせた。
 ――この難局を乗り越えられるかどうかは、全てあんたの魔法の一撃にかかっているわ。頼んだわよ、リコ!
 小百合の気持を受け取ったかのように、リコが動き出した。リコは下に広がる湖を見て、自分たちに運があることを悟る。追い詰められて、たまたまこの場所に来たことに運命すら感じた。
「わたしにヨクバールを倒せる魔法があるとしたら、氷の魔法しかないわ」