二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|23ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

 曇り空が広がる薄暗い津成木町の上空に漆黒のドレス姿の女性が立っていた。そのドレスは肩がパフスリーブになっている袖がフレアの長袖、腰に漆黒の帯を巻いて背中で蝶結びにし、スカートは地上に立てば裾が地面に付くほどに長い。その足元にはナシマホウ界の外を覆っている魔法陣と同じ形のものが広がっている。彼女は両目を閉じて穏やかな笑顔を浮かべていた。紫銀の髪は腰まで届くほど長く、頭を青い花の冠で飾り、右手には金の錫杖を持ち、その先端には開花し始めたチューリップの形の赤い宝石が嵌(はま)っている。そして、左の手のひらには金の台座に嵌め込まれた黒いダイヤモンドを乗せていた。
「魔法界の歴史から消え去り、悠久(ゆうきゅう)の時を彷徨(さまよい)いつづけた伝説が蘇(よみがえ)る。ブラックダイヤのリンクルストーンよ、わたしの大切な子供たちに力を」
 彼女は左手を傾けて、黒いダイヤモンドを宙に放った。その輝石は不思議な輝きを放ちながら、街に向かって落ちていった。


 小百合とラナはヨクバールの追跡から逃れようと必死であった。ラナの箒のスピードが早いので、ヨクバールとの距離が開いていく。
「これなら逃げきれそうね」
 小百合が後ろを見ながら言うと、ヨクバールの竜頭の口が開いて、青い火の玉を吐き出す。
「危ない、右によけて!」
 ラナに後ろの様子は分からなかったが、小百合の言う通りに体を右に傾ける。すると、火の玉が近くをかすめるように通り過ぎた。
「うわあ、なんか撃ってきた!」
「あんなの当たったらひとたまりもないわ!」
 ヨクバールが再び口を開けて火の玉を吐き出す。
「次は左!」
 小百合が叫び、ラナは言われた通りに箒を操作する。そして後ろからきた火の玉が通り過ぎたと思った次の瞬間、近くでそれが爆発した。少女たちは爆風を受けて箒から投げ出されて悲鳴をあげる。その時に小百合のポシェットからリリンが飛び出してしまった。
「リリン!?」
 小百合が叫び、空中で穏やかな笑顔を浮かべているリリンに向かって小百合とラナが同時に手を伸ばす。そして、小百合はブレスレッドのある右手でリリンの左手を掴み、ラナはブレスレッドのある左手でリリンの右手を掴んだ。その瞬間に、少女たちの間に黒い輝石が落ちてきて光を放つ。その輝きを受けた小百合とラナは不思議な力で落ちずに宙に浮いた。黒い輝石は小百合とラナとリリンの間で光を放ち続ける。やがてその光が二つの道となって、それが小百合とラナのブレスレットの中心に繋がる。光は二つのブレスレットに吸い込まれていく。そして、二人の前から光と輝石が消えてなくなった時、二人のブレスレッドの中央に黒いダイヤが輝いていた。
「これ、リンクルストーン!?」
 ラナが驚いていると、今度はブレスレッドのダイヤが輝いてリリンを照らす。すると、リリンの胸元の青いリボンの真ん中に丸いブローチが現れる。円の中に二つの三角形が重なる六芒星があり、その中心に三日月、六芒星を成す二つの三角形の内、片方の三角形の三つの頂点に星マークがあった。そしてリリンの閉じていた目が開いて赤い星が宿る青い瞳で小百合とラナを見つめた。
「魔法の呪文を唱えるデビ」
 とリリンは言った。小百合は突然声を発したリリンに自分が空中にいる事を忘れるほど驚いた。
「リリンがしゃべった!?」
「早く呪文を唱えないと落ちちゃうデビ」
 リリンがそう言った途端に、小百合とラナは浮力を失って急激に落下し始めた。リリンは黒い翼を開いて二人を追う。
「きゃーっ!」
「あはは、落ちてるよ〜」
「笑い事じゃないわ! 魔法の呪文って何よ!」
「キュアップ・ラパパの魔法の呪文だよ!」
「こうなったらやるしかないわ! いくわよラナ!」
「うん!」
 空中で小百合が伸ばした左手にラナが右手を合わせて強く握る。その瞬間、黒い魔女のとんがり帽子の後ろに赤い三日月が重なるエンブレムが現れ、二人の体は七色の輝きが混じる黒い衣に包まれた。そして、つないだ手を後ろに二人で同時にブレスレットのある手を高く上げ、魔法の呪文を唱える。
『キュアップ・ラパパ!』
 二人のブレスレッドのダイヤから同時に光があふれ出て、光は全てリリンの青いリボンの中央にある魔法陣に吸い込まれ黒い輝石となる。二人は黒いダイヤが光るブレスレッドの手をリリンに向かって開放した。
『リリン!』
 二人の呼びかけにリリンは飛んできて小百合とラナと手を繋げば希望を表す輪となった。リリンの体に黒いハートが現れると、三人は穏やかな闇にのまれ、次の瞬間に星々が瞬く宇宙空間へと放たれた。
『ブラック・リンクル・ジュエリーレ!』
 三人で体と腕をいっぱいに広げて花開くような輪を描き回転しながらどこまでも落ちていく。三人の姿が宇宙の闇の底に消えると、月と星のヘキサグラムが現れて光を放った。
 優しい闇に包まれて少女たちの姿が変わっていく。
 小百合の黒髪はさらに長くなり、前髪の一部が三日月型に伸びる。服は胸の辺りに黒い羽毛の房飾りの付いた二の腕に短い袖のあるオフショルダーの黒いドレス、背中に赤いマントが広がり、右足の脹脛(ふくらはぎ)から左足の太腿部へと切り上がるシャープなラインのスカートは黒、灰色、白の三重フリルになっている。続いて胴回りには赤い三日月のオブジェが付いた銀のリング、足には左右に青い翼が付いた黒いブーツ、黒髪に赤い三日月のヘアピン、開いた瞳は深紅に、右胸に青いリボン、続いてその中央に黒い宝石が現れる。
 ラナのレモンブロンドのポニーテールは長く大きくなり、合わせて耳から頬にかかる横髪も伸びて先端がカールになる。黄色いフリルの付いたパフスリーブの黒いドレスに身を包み、裾が黄色い二重フリルになっている黒いミニスカート、背中には黄色い大きなリボンが現れる。足を揃えてかかとを打てば上部に黄色いリボンが付いた黒いブーツ、ポニーテールにピンクのリボン、頭の左上には赤い星のマークと鍔元(つばもと)に黄色いストライプが入ったミドルサイズの黒い三角帽子、そして胸に大きな黄色いリボンとその中央には黒い宝石、最後に二人で手を重ねれば、小百合の手には黒い手袋が、ラナの手には黄色いフリルの付いた黒いフィンガーレスのロンググローブが現れる。二人の頭上で月と星のヘキサグラムが光を放ち、宵の魔法つかいへと姿を変えた少女たちは黒い魔法陣の上にリリンと一緒に召喚された。真ん中のリリンが前に向かって飛んでいくと、魔法陣の左側にいた小百合は右に、魔法陣の右側にいたラナは左に向かって同時に飛んでクロスを描いた。変身した小百合は右、ラナは左に着地して二人は寄りそうように並んだ。
 小百合は優美な動作で下から右手のひらで顔をなでるようにして腕を上げ、そこから空を切るような鋭さで右手を横に振る。
「穏やかなる深淵の闇、キュアダークネス!」
 ラナは開いた左手を頭の上にかざし、右手を前に出してウィンクする。
「可憐な黒の魔法、キュアウィッチ!」
 ダークネスとウィッチが後ろで左手と右手を繋ぎ、体をぴたりと合わせ、もう一方の手も合わせて目を閉じれば無垢な少女の色香が漂う。二人は離れると後ろの手を放し、その手を前に突き出し同時に言った。
『魔法つかいプリキュア!』