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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ぶっきらぼうにいう少女の神秘的な容姿に小百合は衝撃を受けた。見た目は小百合よりも少し年上の高校生くらいに見える。すらりと背が高く、銀の翼の形の飾りのある水色のリボンで長い銀髪をポニーテールに、切長の目は右が金で左がターコイズブルー、恐らく素足に白いブーツ、ミニに近い丈の薄桃のスカートから下に流れるパール色の生足は女性でも思わず見とれてしまうような艶(なま)めかしさだ。腰のところには動物の尻尾を模した白い房飾りをぶらさげ、上着はスカートに合わせた薄桃色のフレアな長袖のブラウス、その上に短い白マントをはおっている。
 その少女の格好が変わっている上に、この世のものとは思えない美しい顔立ち、小百合はオッドアイの人間が存在することに驚いた。それに、彼女から感じる雰囲気もなにか普通ではないなと思った。
「うわあ、猫可愛い!」
 ラナは小百合をおいて猫の集団に飛び込んでいく。
「もしかして、津成木町中の野良猫が集まってるんじゃないの?」
 それから小百合は離れた場所で様子を見ていた。中心にオッドアイの少女がいて、その周りで子供とラナが猫と戯(たわむ)れている。少女はせっせと猫たちに餌をあたえていた。
「まったく、ただのキャットフードじゃ嫌だなんて、最近の野良猫は贅沢だね」
 少女はぶつくさ言いながらかがんで、側にある買い物袋の中からネコ缶を一つ取り出して蓋を開けて中身をプラスチックの皿に乗せる。すると、猫たちがにゃーにゃー言いながらすり寄ってくる。
「わかったわかった、順番にやるからちょっと待って。あ、こら! マントをひっかくんじゃないよ!」
 ラナの言うネコお姉さんは、時折まるで会話でもするかのように、まわりで鳴いている猫に向かっていっていた。
「なに、ささみのやつじゃないと嫌だって? わがままだねぇ」
 そんな様子を見て黙っているラナではなかった。
「お姉さん、猫がいってることわかるの?」
「ああ、わかるよ」
 彼女が当たり前のようにいうと、まわりにいた子供たちから歓声があがる。
「ねえねえ、この子はなんていってるの?」
 小学校低学年くらいの女の子が、白と黒のぶち猫をなでながらいう。その猫がミャーと低く鳴くとネコお姉さんが頷く。
「この人間のガキが! この俺様の体に勝手にさわるんじゃねぇ! うざってぇんだよ!」
「うわ〜」
 喧嘩でも売るようなネコお姉さんの言葉にラナはドン引き、子供たちはびっくりして固まってしまった。猫の鳴き声だけが、その場を支配する。そして、ぶち猫を可愛がっていた少女は泣きだした。
「うわーん! ママーっ!」
「お、おい、待て、わたしは猫の言葉を伝えたけだよ」
 ネコお姉さんは逃げていく少女の背中に手をのばすが間にあわなかった。彼女は子供たちの異様な空気に気づいていった。
「そんな顔するな、その猫が本当にそう言ったんだから仕方ないだろ」
「こら、そこでなにやってるんだ!」
 猫の集会に突然の乱入者が現れる。二人の警察官が近づいてきていた。
「君、猫に餌をやってはいかん! 苦情がきているんだ」
「苦情だって? そんなもの知るか! これは大切な仕事なんだから邪魔しないでおくれ」
「なにを訳の分からないことをいってるんだ! とにかく猫に餌をやるんじゃない!」
「黙れ! 人間のくせに、わたしに指図するな!」
 警察官二人とネコお姉さんの押し問答が始まると、ラナと子供たちが離れていく。
「なんかもめてるわね」
「大丈夫かなぁ、ネコお姉さん」
 小百合とラナが二人並んで見守っていると、ついに警察官が強硬な手段にでる。
「いうことを聞かないなら仕方がない、派出所まできてもらうぞ!」
 警官の一人がネコお姉さんの腕をつかむ。その瞬間、彼女の表情が鋭くなった。
「邪魔するんじゃないよ、人間ごときがーっ!」
 ネコお姉さんがその警官の胸元をつかみ、左足を一歩前へ、踏みつけたブーツの底が地面にめり込む。
「どりゃーっ!」
 なんと彼女は警官を片手で投げ飛ばした。小百合とラナは呆気にとられ、自分たちの頭上を越えていく警官を阿呆のような顔になって見上げた。警官は満開の桜の樹に突っ込んで枝に引っ掛かり、逆立ち状態で枝にぶら下がって目を回していた。振り返ってそれを見た小百合とラナが同時に声を上げる。
『ええぇーーーっ!?』
「ネコお姉さん、お巡りさん片手で投げちゃったよ!?」
「人間わざじゃないわ……」
 もう一人の警官も思わぬ事態に唖然としている。
「バカな人間め、わたしの仕事の邪魔をするから悪いのさ」
 ネコお姉さんは当然といわんばかりの態度、それに気を持ち直したもう一人の警官が憤怒(ふんぬ)する。
「お前、公務執行妨害で逮捕されたいのか!」
「捕まえられるものなら捕まえてみな!」
「待ちなさい!」
 ネコお姉さんが素早く走って逃げて近くの茂(しげ)みに飛び込む。追ってきた警官も茂みに入るが、そこには誰の姿もなかった。
「どこに行ったんだ、あの女は……」
 辺りを見ていた警察官は、目の前に白い猫がちょこんと座っているのに気付いた。それはフェンリルであった。
「なんだこの猫は? 人の目の前に座って逃げも隠れもしないとは……」
 その時、フェンリルが笑った。彼は猫が笑うなど聞いたこともなかったが、目の前の白猫は口端を吊り上げ牙を見せて、にぃっと笑っているようにしか見えなかった。瞬間、そのフェンリルは信じられない跳躍力で警察官の目と鼻の先へと跳びあがり、開いた両前足の爪で警官の顔をバツの字にひっかいた。
「ぐあああぁっ!?」
 警官が顔を押さえて転げまわると、フェンリルはクイッと首をふり、無様(ぶざま)な人間を見下していった。
「はん、間抜が!」
 それからフェンリルは茂みから道に出て、悠々(ゆうゆう)と歩いて去っていった。それを見ていた小百合はいった。
「なんて狂暴な白猫なの……」
「ネコお姉さんはどこいったんだろ〜?」
 ラナはネコお姉さんの姿を探していたが、それらしい人はどこにも見えなかった。

 闇の結晶の下に運命の歯車が回りだす。小百合とラナとリリン、みらいとリコとモフルン、種々(たねだね)の思惑(しわく)と共に、各々(おのおの)が闇の結晶を求めていく。時にはみらいと小百合が道一本をへだてた路地で鉢合わせ寸前であったり、リコとラナが街中ですれ違ったり、ようやく見つけた闇の結晶を野良猫に横取りされたりしたが、不思議と双方が出会う事はなかった。まるで運命がそうさせてでもいるように、プリキュアとなった少女たちの衝突は避けられていた。
 
 孤高の白猫フェンリル、彼女は今、街の高層ビルの屋上に座って青空を見ていた。そのしなやかな右足で闇の結晶を踏みつけられている。
「そろそろいい頃合いだろう。闇の結晶の反応が強くなっている。たくさんの闇の結晶を持ったやつが街の中にいる。そして、そいつらはもうすぐここを通る」
 そしてフェンリルが思った通りに、箒に乗った少女たちが青い空を横断していく。二人は遥(はる)か上空、その姿は小さいが、フェンリルが確証を得るには箒で空を飛ぶ二人組というだけで十分だった。
「いたなプリキュアども! 今度こそ闇の結晶を渡してもらうよ!」