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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 フェンリルは足下の闇の結晶を口にくわえると、屋上をぐるりと囲む手すりに飛び乗り街を見下ろす。するとビルの間を飛んでいるカラスが目に入った。フェンリルは手すりを蹴り、カラスに向かって跳んだ。そしてフェンリルは空中へと躍り出た後に、その背中から白い光が噴き出して翼の形になる。フェンリルは光の翼を羽ばたかせて高速でカラスに迫り、それに気づいたカラスは慌てて鳴き声をあげる。
「クアーッ!?」
 フェンリルに背中を取られたカラスは四肢で押さえつけられて急降下。
 ――さあて、どれにするかねぇ。
 フェンリルはカラスと一緒に急降下しながら地上のものを物色していた。そして、カーショップに置いてある2tトラックに目をつけた。
 ――よし、あれだ。
 フェンリルは空中でカラスの背中を蹴ってトラックの空の荷台に叩き込み、続けてくわえていた闇の結晶も荷台に放り込んだ。目を回してひっくり返っているカラスの隣に闇の結晶が転がる。フェンリルは白い翼を大きく開き前屈みになって叫んだ。
「いでよ、ヨクバール!」
 フェンリルの首にあるタリスマンから浮き出た闇の魔法円が巨大化して空に張り付く。急激に暗い雲が広がり、荷台のカラスや闇の結晶と共にトラックが闇の魔法陣に吸い込まれていく。
「ヨクバールは融合する素材が多いほど強力になるが、そのぶん制御も難しくなる。わたしのタリスマンでは三つの素材を融合させるのが限度だ。まあ、やつらを倒すのにはこれで十分だろう」
 フェンリルは翼で飛んで元いたビルの屋上へともどっていく。
 空に張り付いた魔法陣から黒い闇があふれ出し、それが形になっていく。両腕、鳥の足、そして背後に黒い翼が開く。一気に闇が晴れて、トラックのボディーに黒い翼と鳥の足が生えた怪物が現れる。ちょうどトラックが垂直に立ち上がったような姿で、運転席の屋根の部分に竜の骸骨の仮面があり、前輪のあった部分から黒い腕が伸び、タイヤが肩になっている。手や腕の関節部は複雑な構造で、その部分だけはアニメのリアルロボットのようだ。後輪の部分から生えている鳥の足は巨大でそれぞれ踵(かかと)にタイヤが入っている。そして車体の背面に開いた大きな黒い翼はカラスそのものであった。ヨクバールの竜の骸骨のアイホールに赤く異様な光が現れる。
「ヨクバアァーーーールッ!!」
 その時、小百合たちは別の場所で遠くに突然広がった黒い雲の様子を見ていた。
「なあにあれ? 雨でもふるのかな〜」
「雨雲はあんな風に急には広がらないわ。たぶん闇の魔法陣が現れたのよ」
「ヨクバールが襲ってくるデビ?」
 小百合のポシェットから顔を出しているリリンがいうと、小百合は首を横に振る。
「わたしたちを狙っているのなら、もっと近くでヨクバールを召喚するわよ。狙われているのは、もう一方の魔法つかいプリキュアね。ラナ、箒だして」
「うん、助けにいくんだね!」
 小百合はそれに対してなにも答えない。それでもラナは、嬉々として箒を出してそれに跨った。
「早くいこうよ!」
 一方、みらいとリコは急に空が暗くなったので空中で止まっていた。二人で振り返ると、間近に黒い魔法陣が広がっているのが見える。そこから現れた巨大な怪物が黒い翼を広げて赤い双眸(そうぼう)で二人を睨む。
『よ、ヨクバール!?』
 二人が驚いている隙に、ヨクバールは翼の羽ばたき一つで一気にみらいとリコの目前に迫る。
『うわあぁぁっ』
 二人で同時に声を上げて二人で同時に方向転換、ここまでヨクバールに接近されては変身する余裕がない。みらいとリコは、全速力で箒を飛ばしてとにかくヨクバールと距離を取ろうと考えた。
「ヨクバァールッ!」
 ヨクバールが黒翼で何度も羽ばたくと、逃げようと背中を見せた二人に豪風があびせられる。
「きゃっ!」
 みらいの方が風をまともに受けてしまい、箒から投げ出される。その時に、闇の結晶を詰め込んだバッグがみらいの体から離れて落ちていく。そしてそれは街路樹の枝に引っかかり、みらいの箒は歩道に落ちて転がった。
「みらいっ!」
 リコが伸ばした手が間一髪でみらいの手を掴む。みらいの右腕に抱かれていたモフルンは、びっくりして目をパチパチさせていた。
「リコ、ありがとう」
 中学生の少女のリコでは、みらいを片手で引き上げるのは不可能なので、急降下してすぐ近くのビルの屋上に不時着した。みらいは屋上のフェンスから街路樹を見下ろしていった。
「闇の結晶が……」
「まずはあれを何とかしましょう」
 二人の頭上に現れたヨクバールが黒い翼を広げる。みらいとリコは目を合わせてから頷き、左手を右手を重ねた。その瞬間に、輝くとんがり帽子と魔女の箒のエンブレムが現れ、瞬間に少女たちが輝く衣を身にまとう。そして二人はもう一方の手をあげて呪文を唱えた。
『キュアップ・ラパパ、ダイヤ!』
 みらいとリコのペンダントに現れたダイヤが光になって移動し、モフルンの胸のブローチの上で重なって一つのダイヤとなる。モフルンがハートの手のひらを上げると、みらいとリコがその手を取って三人で手をつなぎ、光を放ちながらゆるりと回転する。
『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』
 みらいとリコが伝説の魔法の呪文を唱えると、モフルンの胸に白いハートがやどり同時にブローチのダイヤから光が走る。二つのダイヤの光が交わると、二人を包む世界に星とハートの光あふれる。頭上にハートのペンタグラムが現れて二人の姿が強い光の中に消えていく。
 地上に現れしハートのペンタグラム、その上にプリキュアとなったみらいとリコが召喚される。二人のプリキュアが魔法陣の上から飛んで地上へと降り立つ。
「二人の奇跡、キュアミラクル!」
「二人の魔法、キュアマジカル!」
 ミラクルとマジカルが左手と右手を後ろ手に体を寄せ合い、もう一方の手と手を合わせてハートを描けば、それは平和を守る魔法つかいの象徴(しょうちょう)。二人は後ろでつないだ手を前に叫ぶ。
『魔法つかい! プリキュア!』
 二人が変身している間に、モフルンは街路樹の下へ。まずは小さくなっているみらいの箒を回収し、つぎに見上げると、枝に引っ掛かっているみらいのバッグに手を伸ばしてみる。
「高いモフ、届かないモフ」
 モフルンは闇の結晶の入ったバッグは諦めて、大樹の陰から二人のプリキュアを見守った。
 一方で、白い翼のフェンリルは、ヨクバールの更に上空から地上を見おろしていた。
「出たねプリキュア! ヨクバール、そいつらを潰せ!」
「ギョイィーーーッ!」
 ミラクルとマジカルは同時にジャンプして二人並んで空飛ぶ箒の上に立つ。向かってくるヨクバールに対し、二人のプリキュアは箒を蹴って敵に向かっていく。
『たあーっ!』
 二人の拳がヨクバールのボディにめり込む。
「ヨクッバール!」
 ヨクバールが体を反り返すと、ミラクルとマジカルははじき返されてしまった。
「うわっ!?」
「はね返されたし!?」