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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「あんた、いい加減にしなさいよ! 公衆の面前であんなこと叫ぶなんて、なに考えてんのよ!」
 小百合が本気で怒っているので、ラナは慌てた。
「い、いい考えだと思ったんだけどな〜」
「あんなことしたら怪しまれるだけでしょ! だいたい、魔法界の人は魔法界からきたことを秘密にしてるって、あんたが自分で言っていたんじゃない。あんなことして手をあげる人なんているわけないでしょ、秘密にしてるんだからっ!!」
「それもそうだね、アハハッ!」
 ラナが快活に笑うと、小百合は急に全身の力が抜けて怒る気が失せた。
「疲れたわ、もう帰りましょう……」
「うん、そうしよう! おなかも減ってきたしね!」
 ラナはたった今、小百合が怒っていたことも忘れたかのような笑顔でいうのであった。

 外から屋敷の庭に入ってきた小百合は疲れ切ってため息をついた。ラナはその前を鼻歌をうたいながら元気に歩いていく。小百合が何となく空を見上げると、変なものが視界に入った。ずいぶん遠くをマッチ棒のようなものが並んで飛んでいく。何も知らない人が見たらよくわからない謎の飛行物体だが、魔法つかいを知っている小百合には、それが箒に乗っている人のように見えた。
「ラナ、あれって魔法つかいよね?」
 ラナは小百合が指さした空を見て瞳を輝かせる。
「ほんとだ魔法つかいだ! ちょっと聞いてくるね!」
 ラナが自分の箒に乗ると、星屑の光を散らしながらぶっ飛んでいく。
「いってらっしゃいデビ」
 リリンがそういったときには、ラナの姿は空のかなただった。
 小百合が目撃したのは、箒に乗って魔法界へ向かう途中のみらいとリコである。先ほど校長から魔法界に闇の結晶が現われていることが二人に告げられたのだ。
「魔法界にまで闇の結晶が現われるなんて……」
「急がないと大変なことになっちゃうよ」
 そういうみらいをリコは心配そうに見つめていた。
「みらい、無理はしないでね」
「この前のことならもう平気だよ。とっても悲しかったけれど、いつまでもくよくよしていられないよ!」
「よかった、いつものみらいに戻ってくれて」
「リコ、心配かけてごめんね」
「いいのよ、気にしないで」
 箒で空を飛びながら二人の少女が笑顔で見つめ合っていると、その頭上を何かが途方もない速度で通り過ぎた。
「モフ!?」
 みらいに抱かれているモフルンが驚き、みらいとリコは無言で顔を見合わせる。
「……今なにか通り過ぎたような」
「……気のせいかしら」
「行きすぎた〜っ!」
 スピードの出し過ぎで数百メートルも行きすぎたラナが戻ってきてみらいとリコの前に現れる。
「こんにちわ!」
 とラナは目の前の二人に気楽に手をあげた。みらいとリコは唐突に現れた少女に驚(おどろ)いた。
『魔法つかい!?』
 二人とも、ラナの顔には見覚えがあった。みらいが気づいていった。
「この子、さっき公園で叫んでた子だよ!」
「わたしのこと知ってるの? わたしって有名人?」
 そんな惚(とぼ)けたことをいうラナにリコは苦笑いする。
「あんなこと叫んでる姿を見たら、忘れようにも忘れられないわ」
「やっぱり魔法つかいだったんだね」
 みらいがいうと、ラナが箒を操(あやつ)ってぐっと二人に近づいてくる。みらいの中で愛嬌(あいきょう)のある笑顔で近づいてくるラナが、尻尾を振って近づいてくる愛らしい子犬のイメージと重なる。リコはどうかわからないが、みらいはラナに強い好感を持った。
「ねぇねぇ、わたし魔法界に帰りたいんだけど、帰れなくなっちゃったの」
 それを聞いて、二人ともピンときた。魔法界とナシマホウ界の行き来ができなくなった原因は、過去のデウスマストとプリキュアの戦いにあったからだ。
「あなたは悪いタイミングでナシマホウ界にきてしまったのね」
「なあにそれ? どういうこと?」
「なんでもないわ、今のは気にしないで」
 事の顛末(てんまつ)を説明することなどできないので、リコは話をはぐらかした。
「わたし朝日奈みらい、よろしくね!」
「わたしは夕凪ラナだよ。夕凪っていうのは、友達がつけてくれたんだ!」
「わたしは十六夜リコよ」
「みらいとリコだね!」
 リコはいきなり呼び捨てなんて慣れ慣れしいなと思いながらいった。
「あなた、なんでナシマホウ界にきたの?」
「リンクルストーンを探しにきたの! そしたら帰れなくなっちゃったの!」
「ええーっ!?」
「り、リンクルストーンですって!?」
 みらいとリコはまた驚かされた。リコはすぐに状況を整理分析して、自分なりの答えをだしていった。
「そんな宝探しみたいなことのためにナシマホウ界にくるなんて呆(あき)れるわ」
「むかしのリコみたいだね」
「わ、わたしのは宝探しとかそんなのじゃないし!」
 みらいがいったことに過剰(かじょう)に反応するリコ、ラナと一緒にされるのは不本意極まりないというところだが、いっていることはまったく論理的ではない。
 話がよく見えないラナは、場の空気を無視して慌てているのか怒っているのかわからない状態のリコにいった。
「リンクルストーンを探してたらいつの間にかこっちの世界まできちゃってたんだよね〜」
「わたしたちはこれから魔法界に向かうことろだから、一緒にくるといいわ」
「ほんとう!? 魔法界に帰れるの!?」
「ええ、あなたはとても運がいいわ」
「じゃあ友達も一緒につれてって、今つれてくるから!」
「え、友達って!?」
 リコがそういう間にラナの姿は消えていた。ラナはものすごい速さで急降下したのだ。口を開いたまま固まっているリコの隣でみらいがいった。
「いっちゃった、友達ってどんな人かなぁ」
「ただいま!」
「え? はやっ!?」
 電光石火の速さで戻ってきたラナにみらいが目を見開いて驚く。戻ってきたラナの後ろには、リリンを抱いている小百合が座っていた。
「なにがどうなってるのよ、ちゃんと説明しなさいよ!」
 わけの分からないうちに連れてこられた小百合が、ラナの背後で騒ぐ。
「この人たちが魔法界につれてってくれるって」
「そうなの? 本当に大丈夫なのかしら?」
 ラナの性格をよく知る小百合の言葉は慎重であった。そうして小百合はみらいとリコの姿をみて無表情で思う。
 ――この二人は……。
「ちょっ、ちょっと待って、お友達はナシマホウ界の人じゃないの?」
「そうだよ」
 ラナが平然と答えると、みらいとリコの表情が変わっていく。二人の様子は明らかに尋常ではなく、その中には人生が終わったかのような絶望感すらあった。
「ど、どうしようリコ!?」
「大変だわ、大変なことになってしまったわ!」
 小百合は二人の慌て方が異常だったので、なにかとんでもないことが起こっていると思った。
「どうしたの? なにが大変なのか教えてちょうだい」
 リコは胸を押さえてなんとか落ち着きを取り戻すといった。
「魔法つかいは、ナシマホウ界の人に魔法を見られてしまったらおしまいなのよ。ばれたら最後、魔法の杖を没収(ぼっしゅう)されてしまうわ」
「なんですって!?」
「わたしたち、もうダメだよね……」
「へぇ〜、そうだったんだぁ、知らなかった」
 みらいとリコに比べて、ラナは落ち着いたものだ。