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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「へぇって、あんたも同じでしょ! なんでそんな大事なことを知らないのよ! あんただけならともかく、他人まで巻きそえにしてるじゃない!」
「そ、そんなこといわれてもぉ……」
「確かにあんたは知らなかったんでしょう。でも、知らなかったじゃ済まない状況になっているわ!」
 後ろから怒鳴(どな)り散らされてラナはしゅんと小さくなっていく。自分がどんなとんでもないことをしでかしたのか理解してきたようだ。
 みらいとリコはすっかり意気消沈(いきしょうちん)して、どんよりと黒い雨雲にでもおおわれたような陰気さと暗さを漂わせている。そんな二人に小百合はいった。
「二人とも大丈夫よ、わたしが黙っていれば済むことでしょう」
「そういうわけにはいかないわ。それに、あなたも魔法界に行きたいんでしょう?」
「それはそうだけれど、もうそれどころじゃないでしょ」
 リコは思案していった。
「こうなったら、あなたのことも、わたしたちのことも、一緒に校長先生に相談しましょう。どこかに水晶を置くのにちょうどいい場所はないかしら?」
「水晶? それならお屋敷の離れにあるカフェテラスがいいわ」
 四人は3本の箒でそろって降下して、屋敷の庭に降りる。みらいは目の前に現れた大きな屋敷に目を見張った。
「すごい家だね」
「まるでお城モフ!」
 いきなり抱いていたモフルンがいうのでみらいは焦った。前にいた小百合とラナが振り向いてみらいを見つめる。
「今の、あなたがいったの?」
「モフって、かわいいね!」
「そ、そうなんだよ。ちょっとした癖(くせ)でたまにでちゃうんだ、モフっ!」
 そんなみらいをリコがハラハラしながら見ていた。
 その時に、みらいは小百合が自分と同じようにぬいぐるみを抱いているのに気付く。
「あれ、その黒猫さんのぬいぐるみ、もしかしてプリンアラモードの人?」
「……前にどこかで会ったような気がしていたけれど、あの時の人だったのね。記憶が確かなら津成木第一中の制服を着ていたわね」
 本当をいうと、小百合は会った時からみらいのことには気づいていたが、とぼけてそんなことをいった。
「こんなところで会うなんて奇遇だねぇ。わたしと同じで魔法界のお友達もいるし、親近感わいちゃうな。わたしたちいい友達になれるんじゃないかな」
「そういう話は後にしましょう。今はもっと大切なことがあるでしょう」
 小百合が突き放すようにいうと、みらいは悲しそうな顔をしていた。ラナに負けず劣らず明るくて元気で人懐(ひとなつ)っこいみらいに対して、小百合は距離を取っていた。
「こっちよ、ついてきて」
 小百合の後に他の3人が続く。この広い庭の一角に小さなログハウスがある。これは清史郎の趣味で建造したもので、一人で酒を飲んだり、少人数をもてなす時などにも利用されている。小百合も時々ここでお茶を飲んだりしていた。
 中に足を踏み入れると、そこは小さな喫茶店そのものの空間になっている。カウンターの背後には高級酒が並んでおり、バーの要素も含んでいる。
「あそこがいいデビ」
 今度はリリンが声を出してカウンターの方に手を向ける。小百合は焦ってリリンの口を塞いだ。後ろからついてきていたリコが怪訝(けげん)な顔をする。
「どうしたの? 急に声が変わったみたいだけれど」
「いや、その、もしかしたら風邪(かぜ)かしら? ちょっとのどの調子が悪いみたい」
 そういって咳(せき)払いをする小百合であった。
「小百合、大丈夫? 風邪薬もってこようか?」
「どうぞ、おかまいなく」
 ラナが本気で心配していうので、小百合はちょっと面倒だなと思いながら適当にあしらっていた。
 リコは持っていた鞄から水晶さんを出してバーになっているカウンターの上に乗せる。ラナが小走りで近寄り、間近で水晶玉を見つめた。
「魔法の水晶だ! これと同じの校長先生の部屋でみたことあるよ」
「これは校長先生からお借りしているものなのよ」
 リコがいった後に、水晶に魔女の影が現れる。
「みなさん、ごきげんよう」
 水晶から女性の声が響いてきた。
「水晶から声が!?」
「おお〜、校長先生の水晶の中には女の人がいたんだね! 噂の真相はこれかぁ」
 驚く小百合の横でラナが訳のわからないことをいっていた。
「なにやら大変なことになってしまったようね」
「そうなんです。校長先生に相談したいので、お願いします」
「今お呼びいたしますわ」
 水晶から魔女の影が消え、代わりに銀髪の美丈夫(びじょうふ)が映し出された。
「あ、校長先生だ! お〜い、校長先生〜」
 ラナはリコの前に割り込んで水晶に向かって手を振っていた。リコはとても迷惑そうな顔をしている。
「おや、君は? ナシマホウ界にきていたのか。姿が見えないので心配していたよ。元気そうでなによりだ」
 小百合がいつまでも水晶の前にいるラナの腕をひっぱる。
「ほら、邪魔しないの、こっちきなさい」
 ようやく校長と話ができるようになったリコは、心を落ち着けてから一つ一つ今までのことを説明していった。すべてを聞き終えた校長はいった。
「ううむ、複雑至極(ふくざつしごく)な状況だのう」
 水晶の向こうで校長が考えている時に、小百合が前に出てくる。
「ちょっとお話させてちょうだい」
 小百合は校長の前で深く頭を下げてからいった。
「校長先生、初めまして、わたしは聖沢小百合と申します」
「うむ、魔法界に来たいというのは君だね」
「はい」
「よほど特別な事情がない限りはナシマホウ界の人間を魔法界に入れることはできぬ。まずは、魔法界にきたい理由を聞こうか」
 小百合は寄りそっているラナの肩に手を置いて語る。
「この子は闇に閉ざされたわたしの心を救ってくれました。今度はわたしがラナのために何かしてあげたいと思っています。わたしはラナの故郷を知り、ラナと同じように学び、ラナのために私ができることを見つけたいのです」
 フレイアからいわれていたこともあるが、これもまた小百合の本心であった。
「小百合……」
 小百合の話を聞いたラナの瞳から涙がこぼれ落ちる。ラナはその涙をふいてからいった。
「校長先生! わたしからもお願いします! 小百合はナシマホウ界で行くところがなかったわたしを、ずっとお城みたいに素敵なお家においてくれてるんだよ! 小百合はいい人なの! そりゃ、細かいことばっかりいって口うるさかったり、すぐ怒ったりするけど、でもやさしい人なの!」
 ――わたしが怒るのは、あんたが変なことばっかりするからよ!
 と小百合はよっぽど声に出していいたかったが校長先生の手前我慢(がまん)した。小百合をフォローをしているのか貶(けな)しているのかよくわからないラナに、みらいとリコは苦笑いしている。ラナは真剣な眼差(まなざ)しを自分に向ける校長に最後にこういった。
「それに、ファンタジックな魔法界を小百合にも見てほしいよ」
 ラナの言葉を聞いて校長が微笑(びしょう)を浮かべる。
「なるほどな、二人は親友なのだな。よかろう、君の魔法界への渡来(とらい)を許可しよう。みなでこちらへ来るといい。それと、みらい君とリコ君の件は不問とする。また教頭先生にはどやされるだろうが、君たちはなにも心配しなくていい」