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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 ラナが真っ先に手を出してミカンを一つ口に放り込む。ラナは目を閉じてよく咀嚼(そしゃく)し、料理評論家のような威厳を演出した。
「これは、シャリシャリのシャーベット状で固くて噛み応えがあって冷たくて、さいっこうに美味しい冷凍ミカンだよ〜」
「ちょっと待って、それは冷凍ミカンとして間違ってるわよ」
 小百合がいうと、リコがうっと神妙な顔になる。そして、みらいと小百合も冷凍ミカンを口に入れる。二人は食べながら微妙な表情になった。
「リコ、まだ解凍に失敗する時があるんだね」
「失敗なんてしてないし!」
 みらいがいうと、リコは全力で否定した。そして、さもありというように補足を加え始める。
「ほら、いつもと同じじゃ飽きるでしょう。だから今日は少し硬めにしたのよ。計算通りだし」
「本当にぃっ!?」
「ほ、本当なんだから!」
 小百合の容赦のない突っ込みに焦るリコ。小百合は疑わしい目をリコに向けながらいった。
「まあいいわ、そういう事にしておきましょう。それにしても、余計な気を回さなくてもよかったのに。わたしは甘くて柔らかくて冷たい冷凍ミカンが食べたかったのに、本当に残念だわ!」
 小百合はわざとらしくいってから、もう一つミカンを口の中に入れた。リコは、「くうぅ……」と悔しそうにうめいた。
「モフルンもミカン食べたいモフ」
「リリンも食べるデビ」
 今度はぬいぐるみたちが甘い解凍のミカンを食べる。
「少し硬いけど冷たくておいしいモフ」
「リリン的には、これはこれでありデビ」
 ぬいぐるみたちのフォローに、リコは有難いやら恥ずかしいやらで何とも言えない。そんな様子を見ていたみらいが言った。
「リコの計算通りに突っ込み入れてる人なんて初めてみたよ」
「鬼の突っ込みだよね〜。わたしなんて、一日百回くらい突っ込まれてるよ!」
「小百合って大変なんだね……」
 気の毒そうに言うみらい。ラナは、「何が大変なんだろう?」と心の中で思っていた。

 リコと小百合の勉強会は旅の間みっちりと続けられた。魔法界の文字や数字など基本的なところは小百合は一日でマスターしたのだが、彼女が目指すのは魔法界ですぐに勉強が始められるレベルであったので、まだまだ勉強することがあった。文字が違うだけで言葉はナシマホウ界とほとんど変わらないが、魔法界にしかない言葉が膨大といっていい程にあった。その中で特に重点的に勉強するのが、魔法に関連した言葉である。二人はいつも隣同士寄りそって勉強していた。これは小百合の提案によるもので、向かい合って座ると、文字が逆になってノートを見せる時に反転させなければならないので効率が悪いのだという。
 この時も二人で横に並んで勉強していた。いつも側にいながら勉強しているとお互いに親近感がわく。名前で呼び合う事にも違和感がなくなっていた。
「もう4時間も勉強しているわ、少し休憩しましょう」
「もうそんなにたってるの?」
 小百合はラナやみらいが騒いでいても、全く気にせずに凄まじい集中力を見せる。この勉強で発揮される集中力にはリコでも密かに舌を巻いていた。
「厨房からお茶を頂いてくるわ」
「ありがとう、リコ」
 リコが休息スペースを出て寝室の前を通りかかると、小百合たちの部屋からモフルンが飛び出してきた。
「逃げるモフ〜」
「逃げろ〜っ!」
「デビ〜っ!」
 モフルンに続いて、ラナ、リリンも飛び出し、リコは驚いて廊下の端によった。最後にみらいが飛び出してきて先に出てきた3人を追いかける。
「まてーっ!」
 どうやら鬼ごっこをしているようだ。「はぁっ」とリコは少し呆れたようにため息をついた。猛勉強している小百合に比べてラナは、とそんな思いがあったがリコがどうこう言う筋合いはない。それからリコは厨房から紅茶をもらって戻った。途中でみらい達とすれ違う。今度はラナが鬼役になっていた。
 リコがポットからティーカップに紅茶を注ぎ小百合にふるまう。小百合は紅茶を一口飲んで感嘆(かんたん)した。
「この紅茶、美味しいわね!」
「そうでしょう。わたしが選んだのよ、魔法界でも最高級の茶葉なんだから」
「あなたは何でも知っているのね」
「何でもというわけではないけれど、お母さんが料理人だから食べ物のことには詳しいのよ」
 それから二人は言葉も交わさずに静かに紅茶を飲んでしばしの休息を満喫していたが、ふと小百合が思い出していった。
「そういえば、あなたラナに謝っていたわね」
 リコは小百合がなにを言っているのか分からなかった。
「あなたがラナをすごい魔法つかいだと勘違いした時に、なぜか謝っていたでしょう、まるで悪いことでもしたというようにね。どう考えても理に合わないのよね」
「あれは別に深い意味はないわ」
「そんなはずはないわ、あなたが無意味に謝るとは思えない。ラナに謝らなければいけない理由があったんでしょう」
 小百合に確信めいていわれると、リコは切り返しに困った。
「それは……」
「例えば、ラナが魔法を使えない事情を知っているとか」
 リコは黙っていた。その様子から、小百合はそうに違いないと思った。
「実はラナには病気があって、そのせいで魔法が使えない、そして余命はいくばくもないとか」
「そんな、命にかかわるような病気じゃないわ」
「じゃあ病気なのね!」
 小百合に急に迫られてリコは言葉が詰まる。彼女は小百合にうまく乗せられてしまい少し悔しい思いをした。
「ラナがわたしに隠し事をするなんて、よほど深刻なんだと思うわ。お願いよリコ、どんな病気なのか教えてちょうだい」
「それはわたしの口からは言えないわ。本当に病気なのかもわからないし、もし間違っていたら本人に失礼だし」
「……そうよね、本人の口から聞くべきね」
 小百合が問い詰めればラナは白状するだろう。けれど、小百合はラナにそれを聞くつもりはなかった。言うべき時がくれば、ラナは自分から真実を教えてくれるだろうと思ったからだ。
 それから魔法界に到着するまでは平穏な時間が過ぎていくのであった。

 小百合たちが魔法界へ旅立って間もない頃、一匹の白猫が魔法商店街を優雅に歩いていた。彼女が水路橋にさしかかり、欄干(らんかん)の上を歩いている黒い雄猫を見つけると、彼女は跳び上がりって欄干に乗り、黒猫の行く先を塞いだ。黒猫は驚いて時が止まったように動きを止め、金色の瞳で見たこともない白猫を見つめていた。その白猫のオッドアイに睨まれて、彼は「何かやばい奴にゃ」と思った。
「おい、お前、この町のボスのところに案内しな」
「……それは構わないけど、お姉さんは何者にゃ?」
「わたしはフェンリル、すぐにこの町の女王になる。よく覚えておきな」
「ぼくはロナといいますにゃ。ボスのところに案内しますにゃ」
 ロナは頭を低くしてもうフェンリルの子分という体で言った。ロナが先を歩き、フェンリルが後を歩く。フェンリルの見た目の美しさとその身に纏(まと)うただならぬ空気に町中の猫が注目していた。
「ボス、きれいなお姉さんが会いたいというので連れてきましたにゃ」