二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|65ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

 街の中央広場、ランタンを持つ猫の石像の足元に右目が十字の傷でつぶれている大きな猫が座って見おろしていた。体は虎のような縞模様で迫力がある。石像の周りにもたくさんの猫があつまっていて、彼はその中に飛び降りた。その図体は周りの猫たちの培近い。ロナが脇によるとフェンリルとボス猫の間に障害物がなくなり、2匹の猫の視線がぶつかる。ボス猫は目を見開いて感激した。
「ほう、これは美しい! この俺に相応しい女だ!」
「何勘違いしてんだい。今からあんたをぶっ潰して、わたしがこの町の女王になるのさ」
「何だとぉっ!!」
 牙をむき出して叫ぶボスの声に周りの猫たちが震えあがる。ボスはニヤリとしてフェンリルにゆっくりと歩み寄ってくる。
「この俺を倒すだと? 言っておくが、俺は生まれた時から体を強化する魔法がかかっている特別な猫だ。俺の物になるというのなら、今言ったことは聞き流してやる」
「ほほう、猫にも魔法かい。さすがは魔法界だね」
 フェンリルの目の光が強くなり、頭を低く地面に爪を立てる。ボスの方は立ったまま余裕で構えていた。フェンリルが前に出た瞬間、石畳は穿たれて爪の数と同じだけの傷が残った。フェンリルは猛然と自分よりもはるかに大きなボスに突撃していった。
 一分後、ボコボコにされたボスがフェンリルの足元にひれ伏した。
「すいませんでした! 俺が調子にのっていました!」
「わたしがこの町のボスだ、文句はないね」
「ありません! もう、どこまでだってついて行きます!」
 巨体のボスが細身のフェンリルの前に伏せる姿は面白く、周りで見ている猫たちから失笑がもれる。今までのボスは高圧的で評判が悪かったので、ざまあみろという気持ちもあった。
「ロナ、お前がナンバー2だ」
「にゃ、にゃんですと!?」
「そ、そんな、どうしてロナなんぞを……」
 ロナが驚き、今までボスだった猫が不平をもらす。しかし、フェンリルが睨むと元ボスは口を閉ざして震えあがった。
「必要なのは力よりも知恵だ。ロナはものを見る目がある。このわたしの実力を会ったその時に見抜いたからね」
「わかりましたにゃ。謹んでお受けいたしますにゃ」
「よし。そして、お前は3番目だ」
 フェンリルは元ボスに向かっていった。
「3番目、名はなんという」
「マホドラといいやす」
「じゃあマホドラ、子分をここに集めな、緊急に頼みたいことがある」
 フェンリルの命令により、魔法商店街中の猫が中央の広場に集まってきた。猫の像の周りに様々な猫があつまってひしめき合う。これには人々も驚き、何事かと遠巻きの見物人が増えていく。
「フェンリル様、全員集まりましたぜ」
 マホドラが言うと、フェンリルは猫の像の足元に跳びのり、今や子分となった猫たちにいった。
「お前たち良く見な!」
 フェンリルはどこからか黒い結晶を出してそれを器用に猫の手で握ると、結晶を下に叩きつけるように置いた。その時に発生した衝撃で強風が起こり、周りの猫たちを吹き晒す。フェンリルの力と女神のごとき神々しさに猫たちは視線を釘付けにした。
「いいかい、この黒い結晶と同じようなのを見つけて持ってくるんだ。ただとは言わない、褒美は出す」
 それを聞いて猫の間からざわめきがおこる。褒美とは何か、肉か、新鮮な魚か。そんなようなことを口々に言っていた。
「肉? 魚? いやいや、そんなちんけな物じゃない、もっとうまい物を食わせてやるよ」
 得意になって言うフェンリルに、猫たちは喜び興奮した。そんな猫たちの声は、周りの人間にはうるさい猫の鳴き声にしか聞こえなかった。
 フェンリルは猫がいる街に行っては、そこを支配して子分となった猫たちに闇の結晶を集めさせていたのだった。

 カタツムリニアの旅が始まってから七日目の昼ごろ、小百合がノートを閉じるとリコは言った。
「すごいわ小百合、この短期間に魔法界の主な言葉を覚えてしまうなんて」
「リコの教え方がよかったからよ。今まで付き合ってくれて本当に感謝してる」
 その時、連結部の扉を勢いよく引いてラナがみらいと一緒に休息スペースに入ってきた。その手には箒が握られていた。
「小百合、ついにきたよ! 魔法界だよ!」
 手近の窓を開けて4人で顔を出すと、今度は小百合とラナが驚く番だった。
「うわ!? なにあの緑色のでっかい魔法陣!?」
 小百合は目を見開いて黙して魔法界を覆う不思議な緑色の魔法陣を見つめていた。カタツムリニアのレールはその中心に向かっていた。
「はーちゃん!」
 みらいが聞きなれない名を言うと、小百合が何気なく窓から離れてみらいの様子を見た。みらいはまるで目の前にその人がいるような、懐かしむような目で魔法陣を見つめていた。

「行こう!」
 巨大な魔法陣を越えて魔法界に入った途端に、ラナは小百合と手をつないで走り出す。その勢いがすごかったので小百合はこけそうになった。
「ちょ、ちょっと! 行くってどこへ!?」
「魔法界に決まってるよ!」
 ラナはそのまま小百合を引っ張っていって、最後尾の扉を勢いよくスライドさせる。新鮮な風が車内に入ると同時に空気が出口の方に流れて小百合の長い黒髪が水平近く宙を泳いだ。ラナは青空を仰いで箒に跨る。
「まさか、ここから飛ぶ気!?」
「そうだよ〜、小百合だってカタツムリニアから早く出たいでしょ」
「それは、まあ」
 そんな曖昧な返事をしたのが間違いだった。
「いざ、ファンタジックな魔法界へ〜」
「待ちなさい! わたしまだ乗ってないから!」
 身の危険を感じた小百合は、ラナの後ろに乗らざるを得なかった。小百合は一足先に、強制的に魔法の世界へと躍り出た。
「ゴーゴー」
「速いわよ! 少し速度落として!」
 小百合とラナの声が遠のいていく。それまでの一部始終をみらいとリコは半分呆けて見ていた。
「……いっちゃったね」
「ものすごい子だわ」
 リコがぽつりとラナに対する感想を述べた。

 ラナの箒が風を切って魔法界を行く。そのあまりのスピードに小百合は恐怖しながら言った。
「速すぎるっていってるでしょ! スピード落としなさいよ!」
「魔法界の有名なところ全部回るんだから、そんなにゆっくり飛べないよ〜」
「全部なんて見なくていいわよ! それに、こんなスピードじゃ何も分からないわよ!」
「あっ、そっかぁ」