魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦
ロキが指を鳴らした瞬間にその姿が消え、同時にプリキュアとロキが戦い破壊された跡も元通りになった。ロキがいなくなっても、フレイアに笑顔が戻らなかった。
「あなたたち……」
ダークネスとウィッチに見つめられ、フレイアはそれ以上言葉が出なかった。フレイアは二人が自分に疑いを持つのはもう避けられないと思った。しばらくの間、遠く儚(はかな)げなセイレーンたちの歌だけがそこにあった。ダークネスは苦し気なフレイアにいった。
「フレイア様、過去に何があったとしても、わたしは気にしません。フレイア様は、わたしたちを助けてくれました。それだけで十分です。わたしはフレイア様を信じます」
「わたしもフレイア様が好きだよ。ちょっと無茶ぶりすごいけどねぇ」
「リリンもフレイア様がだーいすきデビ! フレイア様はきれいで優しくて素敵デビ!」
みんながいうと、フレイアの顔にもいつもの笑顔が戻った。
「皆さん、ありがとうございます」
女神の眼尻には涙が浮んでいた。
バッティの魔法で元の農道に帰った時はもう日が暮れかけていた。バッティは別れの前に小百合たちにいった。
「君たちの力は伝説の魔法つかいプリキュアに匹敵する。君たちが側にいればフレイア様も安心できるでしょう」
バッティが手のひらをだすと、その上に奇妙なものが現れる。
「これを持っていきなさい」
それをもらった小百合の顔が引きつった。それは異様な魔法陣で、角の生えた三つのドクロが円の形に組み合って、外円は骨組み、内円は蛇が自らの尻尾を噛んでいる形になっている。
「これ、何ですか?」
「闇の魔法陣のタリスマンですよ」
「闇の魔法陣!?」
「安心しなさい、君たちに害を与えるようなものではありません。そのタリスマンを上にかかげるとセスルームニルに瞬間移動することができます」
「バッティさん、ありがとうございます」
「君たちを導くのもわたしの使命ですからね。闇の結晶はお任せしますよ」
「はい、必ずフレイア様のご期待にこたえて見せます」
「では、次はセスルームニルでお会いしましょう。イードウ!」
バッティの姿が消えると、小百合とラナは重い足取りで歩き出す。
「疲れたわね……」
「今日はもう闇の結晶さがせないねぇ」
「早く帰って寝ましょ」
「明日も学校だぁ」
「明日からどうやって学校にいこうかしら……」
暗い紅に染まりゆく農道にリンゴの樹の影が落ちる。少女たちは黄昏の中を歩いていった。
作品名:魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦ 作家名:ユウ