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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 リコはプライドを傷つけられたのだ。同じくプライドの高い早百合にはその気持ちがよくわかる。
「リコは魔法が苦手だったのね?」
 ジュンは小百合に頷いて言った。
「ああ、一年の終わりごろまではビリケツだったんだ」
 みんなの意識がリコに集まっている時に、小百合は少し目を細くして悪心のあらわな笑みを浮かべた。
 ――これは利用できそうね。
「ええ〜、そんなはずないよ! ビリはわたし、リコはビリから2番目だよ!」
 ラナが出てきてフォローにもならない事を言うと、小百合が冷たく言い放った。
「あんたの場合は数にも入ってなかったんでしょ」
 ラナは特異中の特異だったので、小百合の言ったことは的を射ていた。
 
 その日からリコと小百合の戦いが始まった。と言っても、周りからはそう見えるという話で、本人たちの間にはそこまでの意識はない。今までは難解な問題を率先し答えていたのがリコだけだったのが、そこに小百合も加わるようになったので二人で競争しているように見えてしまうのだ。そのうちに生徒たちの間では、二人はライバル同士という認識になっていく。
 ある時、小百合は、職員室まで行ってリズ先生にお願いした。
「リズ先生、今までの魔法の実技の試験を全部やらせてください」
 それを聞いた周りの教師は驚いていた。リズは小百合の無理とも思えるお願いに笑顔で答える。
「いいわよ。一度に全部は無理だから、放課後に少しずつやっていきましょう。でも次の試験には間に合わないわね……」
 リズは残念そうに言った。
「期末試験には間に合います」
「そうね、あなたならそれで十分ね。さっそく今日からやる?」
「よろしくお願いします!」
 小百合のやる気に満ちた声が職員室に響き、教師達を感心させた。
 魔法実技の試験は勉学の試験とは違って、一年生から今までの課題をすべてクリアしなければ受けることができない。魔法実技は危険もある為、実績が求められるのだ。
 誰もいなくなった放課後の教室にリズが入ってくる。そこには数人の少女が残っていた。小百合が黒板の前で待っていてリズに頭を下げる。ラナを始めにみらいとリコ、ケイ、ジュン、エミリーも様子を見守っていた。
「魔法実技の試験は1年生で6回、2年生で6回、合わせて12回よ。今日から放課後に一つずつ小百合さんの実技のテストを行います。合格出来たらこれにハンコを押すわね」
 リズは12個のマスがある用紙を小百合に見せて言った。他の少女たちは固唾をのんで見守っている。
「まずはこのテストからよ。キュアップ・ラパパ」
 リズがタクトのような杖を振ると、教壇の上にランプが現れる。
「このランプに火をつけて炎を燃え上がらせた後に消せたら合格よ」
「それだけですか?」
「1年生の最初の実技試験だからこんなものよ」
 リズが言うのを聞いてリコは胸を掴まれるような苦しさを感じる。この試験はリコにとっては苦い思い出がある。リコはランプを爆発させてしまったのだ。
 小百合はランプの前で黙っていた。
「どうしたの? あなたなら出来ると思うけど」
「あの、自分がどこまで出来るのか最大限の力でやってみたいんです」
「それは良いことだと思うわ。どうしたいの?」
 小百合の願いにより、リズの魔法で教壇に5つのランプが並べられた。何をするつもりだろう? 誰もがそう思った。
「キュアップ・ラパパ、火よ付きなさい!」
 真ん中のランプの白い芯に火がつき、炎が大きくなってランプの外まで吹き出す。
「炎が少し大きすぎないか?」
 ジュンが燃え上がる炎を見つめて言う。小百合が杖を振ると、炎の一部がプロミネンスのように弧を描いて隣のランプに移った。
「炎を移動させた!?」
「なんだそりゃ!?」
 リコとジュンが同時に驚愕する。
 小百合は火がともった二つ目のランプの炎を燃え上がらせてその隣に移す。それを繰り返してすべてのランプに火をつけた。最後に杖を一振りして5つのランプの炎を同時に消した。
 魔力と集中力を消費した小百合は大きく一息ついた。リズが控えめな拍手をしていた。
「ここまで出来るなんて正直驚いたわ、試験は合格よ」
 リズが用紙にハンコを押して小百合に渡す。するとラナが大騒ぎした。
「小百合やったね! ちょ〜すごいよ〜、最高だよ〜」
「よろんでくれるのは嬉しいけど騒ぎすぎよ」
 小百合は言いながらリズから受け取ったものを見た。
「……先生、ハンコが二つ押してありますけど」
「魔法で物を移動させる物体移動の実技試験があるのだけれど、質量のない炎を移動させる方がずっと難しいのよ。ですから物体移動の試験も合格とします」
「一気に二つも、すごいよ小百合!」
 みらいもラナと一緒で自分のことのように喜んでいた。
「テストは一週間後だから、魔法の実技のテストには間に合わないね」
「もし小百合がテストを受けられたら一番になるんじゃないかな」
 ケイとエミリーが言うと、リコは浮かない顔をしていた。

 まもなく学校内で小百合の魔法がすごいらしいと噂になっていた。それはラナを始めに、みらい、ケイ、エミリーの口から広まっていったものだ。それから放課後の小百合のテストに少しずつ人が集まるようになった。どのテストでも小百合はみんなを驚かせたが、特に水を操る試験では水でリリンの形を作ってそれを自由に飛ばし喝采を浴びた。
 テスト直前のこの日も小百合の試験を見に校庭に生徒が集まっていた。今度は何をやってくれるんだろう? とみんな少し楽しみにしている。リコだけはいつも難しい顔で小百合の試験を見学していた。彼女は小百合と自分の魔法を比較していた。昔の自分とは比べ物にならないが、今の自分と比べてどうか? と。
 小百合は自信満々の姿で校庭の中央で待っているリズに向かって歩いていく。その右手には魔法の杖がある。
「先生、今日はどんな試験ですか?」
「今日の試験には魔法の杖は必要ないのよ」
 リズが右手を上げるとボンと白い煙に巻かれて箒が現れる。リズはその箒を持って小百合に見せた。
「今日は魔法の箒のテストよ」
「ほ、箒!? そ、そうですよね、当然それもありますよね……」
 小百合の全身に冷たい汗がにじむ。他人のせいにしてはいけないと思う反面、ラナが恨めしくなってしまう。そんな小百合の気も知らずにリズは箒を小百合に渡していった。
「あなたなら上級者用で行くわよね」
 生徒が周りに集まっている状況で最悪の展開になる。
「小百合〜、がんばれ〜っ! 小百合なら上級者用でも楽々だよ〜っ!」
 小百合の箒の実力を一番知っているはずのラナが大声て叫ぶと、生徒たちの期待が高まる。
 ――ラナのバカーーーっ!!
 小百合はよっぽど大声で叫びたかった。小百合は恥ずかしいやら情けないやらでもう死にたいと思いながらリズに言った。
「初心者用でお願いします……」
「あら、そう」
 リズは意外そうに言って、小百合から箒を返してもらうと上級者用の箒はまた白い煙をあげてリズの手の中に消え、今度は初心者用の箒を出して小百合に渡した。
「あなたが思うように自由に飛んでみて」
「自由にですか……はい」
 小百合が初心者用の箒にまたがり必要以上に力んで言った。
「キュアップ・ラパパ、箒よ飛びなさい!」