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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「はぁっ、何とかね。久々に墜落するところだったし……」
 リコのとんがり帽子に葉っぱが乗っかっていた。モフルンがみらいの懐(ふところ)から身を乗り出して商店街を見おろしていった。
「猫はどっかいっちゃったモフ〜」
「仕方ないわ、諦めましょう」
「プリキュアにでもならないと猫にはおいつけないよ」
 すんなり諦めるリコに対して、みらいは少し悔しそうだった。

 路地裏の少し開けた場所に沢山の猫があつまっていた。猫たちは一段高い木箱の上に君臨する白い女王にくわえてきたものを献上している。
「集まってきたね」
 フェンリルは木箱の下に小山になった物の近くに下りてくる。
「フェンリル様、今日はこれで全部ですにゃ」
 群れの中にいるロナが言った。
「よしよし、よくやったお前たち」
 小山の物をよく見たフェンリルの表情がかげる。
「なんだいこりゃあ」
 フェンリルが手に取って見たのは銀色の鈴だった。それをポイと捨てて小山の内容を確認していくフェンリル、見る程にイライラが増してくる。闇の結晶に大量の異物が混ざっていた。
「鈴やただの石ころはまだわかる。魚の骨が混ざってるのはどういうことなんだ!?」
 フェンリルが前足をすごい速さで動かして闇の結晶じゃない物をポイポイ投げて、群れの猫たちはフェンリルが不機嫌になっているのが分かって怖くなった。ロナがそんなフェンリルに近づいて頭を垂れて言った。
「自分からもよく説明しているんですにゃ。でもなかなか理解してもらえませんのにゃ」
「まだ理解できないのかい!?」
 フェンリルは思わずロナを怒鳴り散らした。すぐに彼女は怒りを鎮めて言った。
「これが猫の感覚ってやつなのかねぇ。まったくわからないね。 ……まあ、わたしも今は猫だけどな」
 フェンリルが闇の結晶の中から大きなネズミを引っ張り出した。
「これはお前か、マホドラ?」
「へい」
「聞いていいか? なんでネズミなんだい?」
 群れの一番前にいる巨体のマホドラがフェンリルに精いっぱい媚びをうって言った。
「フェンリル様に喜んでもらおうとおもいやして」
「こんなものいるかーっ!! 闇の結晶を持ってこい!!」
「ひいぃっ、すみませんフェンリル様ぁっ!」
 体の大きなマホドラが頭を押さえて伏せると、群れの中に恐怖が伝搬していく。その空気を感じてフェンリルは失敗したと思った。
「まあ、それなりには集まった。よくやったね、お前たち」
 フェンリルは闇の結晶をかき集めながらなるべく優しく言った。それを聞いても猫たちの緊張が解けない。
「これからもよろしく頼むよ」
 猫たちが去った後にフェンリルは闇の結晶を袋に詰めて口紐を縛ってから言った。
「鞭だけじゃいけないね、そろそろ飴も与えないと」
 その時、フェンリルが首から下げているタリスマンが光りだした。
「闇の結晶の反応だと? かなり強いな」

 みらいとリコが商店街の道を並んで歩いていく。辺りは買い物に来た客やお店の呼び込みなどで賑わいつつあった。
「アクシデントはあったけど、それなりに見つかったわね」
「朝早く来たかいがあったね!」
「せっかくここまで来たんだから、カフェテラスによっていきましょう。この辺に有名なお店があるの」
「いま、カフェテラスっていいました?」
「アップルパンが有名で、行列ができるほどの喫茶店なのよ」
「魔法界の喫茶店! わくわくもんだぁ!」
 みらいが大きな声を出すので通りがかりの人々が振り向いて、リコは恥ずかしい思いをしいた。

 カフェ魔法瓶の開店にはまだ時間があった。表通りには人が並び始めている。ラナはお店の裏口に箒を降ろして二人で着地する。裏口の前でお店のオーナーが待っていた。
「おや、今日はラナちゃんが持ってきてくれたんだね。それにしても久しぶりだね」
「おじさん、久しぶり〜」
 小百合がホールで3段のアップルパンを籠から取り出してオーナーの男性に近づく。リンゴたっぷりのパンなので、ホール三つは結構な重量がある。小百合は落とさないように慎重に運んできた。
「お待たせしました、アップルパンです」
「おお、ありがとう。いやあ、きれいなお嬢さんだね。ラナちゃんのお友達かい?」
 アップルパンを受け取ったオーナーが言った。
「そうだよ! 小百合っていうの、親友なの!」
「ラナちゃんの親友か、そりゃあいい。仕事が終わったら二人で店によりなよ、お茶とケーキをごちそうするからさ」
「やった〜っ、おじさん、ありがと〜」
 ラナとオーナーが話している時に小百合が裏口から店の外の方に目をやると、店の前の行列の中にみらいとリコの姿を見つけた。
 ――あの子たち、きっと闇の結晶を探しに来ているのね。
 自分たちは闇の結晶を探しに来ているわけではないので、小百合は特に警戒はしなかった。喫茶店への配達が終わると、次は高級宿屋に向かった。

 その頃、商店街の一角が騒然としていた。巨体のボルクスが街を歩き、その一歩ごとに地面が振動する。人々はその姿を見ては逃げ出し、慌てて店を閉め出す人もあった。
「強い闇の匂いだ。どこにいるプリキュア」
「なんだい、騒がしいと思ったらボルクスだったのかい」
「うん? 誰だ?」
 ボルクスが足元を見ると白猫がちょこんと座っていた。
「フェンリル? おめぇ、こんなところでなにやってるんだ?」
「そりゃこっちの台詞だ。あんたみたいのがこんな街中に出てきたら大騒ぎになるだろう、迷惑なんだよ」
「なにぃっ! 俺様はプリキュアを倒すためにここに来たんだ! つえぇ闇の匂いを感じるから、近くにいるはずだ!」
「あんたにしちゃあ、頭を使ったね。恐らくビンゴだろう。近くに闇の結晶を集めてる奴らがいるよ。闇の結晶の反応が複数ある」
「どこだ、プリキュア! 姿を見せろ!」
「落ち着きなって! 叫んだって出てきやしないよ。それよりもいい方法がある。二人でヨクバールを召喚するんだ」
「何だと? それの何がいいんだ?」
「いいから言われた通りにやりな!」
「チビのくせに、この俺に命令するな!」
 フェンリルがむっとして牙を見せる。飛びついてボルクスの顔をひっかいてやりたくなったが、自分の利益のために思い止まった。
「まったくわかんない奴だね! プリキュアを倒すのに協力してやるって言ってるんだよ。それがあんたの望みのはずだ。安心しな、プリキュアを倒した手柄は全部あんたに譲ってやるからさ」
「本当だろうな?」
「嫌ならいいよ、わたし一人でプリキュアを倒すから」
「ま、待て、それは困る! プリキュアを倒してロキ様に認めてもらわなくちゃならねぇんだ」
 フェンリルが隠し持っていた闇の結晶を地面に置いて手で弾くと、それがうまい具合にボルクスの手の中に入る。
「そいつを使いな」
 ボルクスは辺りを見て、人が逃げ出して無人になっている店先に冷凍ミカンが置いてあるのを見つけた。ボルクスがそれに向かって腕を一振りすると、凍ったミカンの表面に黒い結晶が突き刺さった。
「さて、わたしはどれにしようかね」
 フェンリルが見上げると、道の真ん中に幼い女の子がウサギのぬいぐるみを抱いて立ち尽くしていた。女の子はボルクスを見て震えていた。
「何だ? タリスマンがあのぬいぐるみに反応しているぞ」