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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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「お姉ちゃんの言ってくれたことがうれしくて、もう大丈夫だから」
 リコは涙を拭いてから姉の目をしっかり見つめていった。
「お姉ちゃん見てて、わたし絶対一番になるから」
 リズは嬉しそうに微笑を浮かべて頷いていた。そんな姉妹の姿を見ていたみらいは、リコが元気になって本当に良かったと思った。

 薄暗いの世界の中で全身が闇色のヨクバールとダークネスが戦っていた。激しい戦いの末に、ダークネスはヨクバールの手にとらわれてしまう。ヨクバールの手に力が入り、身動きの取れないダークネスが全身を締め上げられる。彼女はもうおしまいだと思った。
 小百合が夢にうなされて目を開けると、お腹に変な重圧を感じる。頭だけ起こして見てみると、ラナが小百合のお腹の上に覆いかぶさって眠っていた。
「なんでこんなに寝相が悪いのよ、ええいっ!」
 小百合がラナを押しのけて起き上ると、ラナは転がって仰向けになった。その後もラナは気持ちよさそうに眠りこけていた。
「小百合おはようデビ」
「おはよう」
 一緒にベッドで寝ていたはずのリリンはもう起きていて、テーブルの上に座って小百合のことを見ていた。
 着替えた小百合がリリンを抱いて外に出てくる。その姿はコバルトブルーのカートルに同色のロングスカート、そして白いエプロンと白いケープ、ラナのおばあちゃんが若い頃に着ていた服を借りたのだ。
 まだ早朝で朝焼けが差してきている。小百合はリリンと一緒に散歩しようと思って歩き出した。そうするとすぐにエリーに出会った。彼女は早朝からリンゴの収穫に勤(いそ)しんでいた。今日は休日だが、リンゴ農家の収穫期に休みなどない。
「キュアップ・ラパパ、さあハサミたちよ、チョッキンチョッキン収穫よ」
 5つの籠(かご)と5本のハサミが同時に操られて、ハサミが枝から真っ赤なリンゴを次々と切り落としていく。枝から切った後のリンゴはふわりと浮いて、傷がつかないように優しく籠の中に積まれていった。様々なものを同時に動かす為なのか、エリーがリンゴの杖を振る動きが指揮者のようにしなやかで複雑だ。小百合はしばらくエリーの魔法に魅入っていた。
「すごくきれいデビ〜」
 リリンがエリーのたおやかな姿に感動して、エリーはその声で小百合の存在に気づいた。
「おはよう、小百合ちゃん」
 エリーは杖を動かしなら言った。
「おはようございます。エリーさん、わたしにも手伝わせて下さい」
「手伝ってくれるの? でも、魔法でリンゴの収穫は難しいわよ」
「やってみます」
「じゃあ、予備の籠とハサミがそこにあるから使って」
 小百合は杖を出してリンゴの木の下に積んである籠に向かって唱える。
「キュアップ・ラパパ!」
 小百合の魔法でハサミの入っている籠が動き出す。小百合はゆっくり杖を動かして慎重に籠をリンゴの木の下に持っていく。
「ハサミよ収穫して」
 小百合の命令でハサミが動き出す。リンゴをハサミが切り落としたところまではよかったが、リンゴが籠に勢いよく落ちてしまった。
「しまった……」
 ――複数のものを同時に動かすのがこんなに難しいなんて
 リリンがリンゴの樹の根元に座ってリンゴをかじりながら収穫の様子を見ていた。
 それから小百合は苦心しながらもリンゴの収穫に慣れていった。だいぶ時間がたって日が強くなってきた頃に、小百合は二つの籠とハサミを同時に動かすことに挑戦したが、それはうまくいかなかった。収穫がひと段落する頃に小百合は五つの籠をリンゴでいっぱいにするのがやっとだった。エリーはその10倍以上のリンゴを収穫していた。
 リンゴの木の下で息を切らしている小百合にエリーは言った。
「魔法が使えるようになったばかりでここまで出来るなんて大したものだわ」
「もっとお役に立てればよかったんですけど」
「十分よ、手伝ってくれてありがとう」
「複数の物を魔法で同時に動かすのって難しいんですね」
「そうね、慣れが必要よ。でも、小百合ちゃんなら少し練習すれば籠二つくらいは使えそう」
「リズ先生の水で作った像の玉乗りもすごかったけれど、エリーさんのリンゴの収穫は圧巻でした」
「実技ではリズに勝っていたもん。その分勉強では負けていたんだけどね」
 小百合は山積みになっている籠一杯のリンゴを見ながら言った。
「それにしても、この大量のリンゴはどうやって出荷するんですか?」
「カタツムリニアで運ぶのよ。この時期は出荷用の定期便がくるの」
 エリーと小百合が話していると、パジャマ姿のラナがあくびをしながら農道を歩いてきた。
「あ、エリーお姉ちゃんと小百合だ。なにやってるの?」
「あんたが眠こけてる間にリンゴの収穫を手伝っていたのよ」
「ふ〜ん。それよりもお腹空いたよぅ」
「あんたリンゴ農家の娘なんだから、少しは興味持ちなさいよ」
 エリーは微笑みながらラナの頭をなでて言った。
「じゃあ、ご飯にしましょうか」
「うわ〜い!」
 食事はいつもエリーが用意してくれていた。小百合は悪いので自分たちで何とかすると言っても、エリーは気にするなと食事を持ってきてくれる。
 朝食の時間にラナがエリーに言った。
「エリーお姉ちゃん、今日はアップルパンの日だよね」
「ええ、そうね。仕込んだアップルパンを魔法商店街に卸(おろ)さなくちゃ」
「それ、わたしたちにやらせて下さい。いつもお世話になっているのでお礼がしたいんです」
「いいのよ、そんなに気を使わなくても」
 エリーが言うと、ラナが手をあげる。
「わたしアップルパンのお店ぜ〜んぶ知ってるよ!」
「それなら丁度いいわ。ぜひわたしたちにやらせて下さい」
 恩返しがしたいという小百合の気持ちがエリーに伝わる。それに、エリーはまだまだリンゴの収穫や出荷などで忙しいので、小百合の申し出はありがたい面もあった。
「それじゃあ、お願いしようかしら」
「ラナと一緒に行ってきます」
「もう一つお願い。校長先生にもアップルパンを届けてほしいの」
「わかりました。帰りに魔法学校によっていきます」
 それから小百合たちは魔法学校の制服に着替えてから、二人用の箒にアップルパンの入った大きな籠を下げて魔法商店街へと向かうのであった。

 みらいとリコも小百合たちも学校で忙しかったが、闇の結晶集めもしっかりやっていた。闇の結晶は人が集まるところに多く出現するらしく、魔法商店街ではよく見つかる。リコたちも小百合たちも度々商店街に闇の結晶を探しに来ていたが、小百合の方で気を付けて避けていたので、ばったり出会ったりはしなかった。
「あっちに行ったよ、リコ!」
「待ちなさい!」
 賑やかな商店街を少女たちが風を切って箒を飛ばしている。二人は空中から一匹の猫をおいかけていた。
「なんで猫が闇の結晶なんかをくわえているのよ」
 リコが急降下して逃げる猫に近づく。すると、猫は急角度で曲がって建物の間にある細い隙間に入ってしまった。
「リコ、危ない!」
 みらいの鬼気迫る声が飛んでくる。リコが前を見ると街路樹が迫っていた。
「うわあっ!?」
 リコはとっさに急上昇して樹にぶつかるのは回避できたが、茂った葉の中に突っ込んでしまう。その後リコは深い枝葉の中から葉っぱをまといながら突き出てきて止まった。
「リコ、大丈夫?」