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新しい日々 第1話

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 香澄はまた、日が沈む辺りになってからやって来た。
「やっほ、まひる。今日の調子はどう?」
「うん? 大丈夫。病院はヒマでナマケモノになりそうだけどね」
「やっぱり、入院してると勉強はできないみたいね」
「うん。まあ、部屋にいてもしてないんだけど」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
 話が続かない。何故だろうか。心持ち香澄が元気ないような気がするけど、何かあったんだろうか。
「香澄」
「なに?」
「なんか今日元気ないけど、どうしたの? いつもは、会話が途切れる事なんてないのに」
「そう? 病院だからじゃないかな。それにまひるだって、元気なさそうよ。そもそも会話が途切れないのはあんたが途切れる間もなく、いろいろ話すのに合わせてるだけだし」
「そうだっけ」
「そうよ」
「……………」
「……………」
「……………」
 今度の沈黙は香澄によって破られた。
「ねえ、まひる」
「ん?」
「巡回の看護婦さんとか、後どれくらいでくるかとか分かる?」
「う〜ん。もう30分くらいは来ないとおもうけど、どうかしたの?」
「うん、ちょっとね」
と、香澄はカバンから、小さな包みを取り出すとあたしに差し出した。
「香澄………これって」
「そう、チョコレート。まひる、甘いもの好きだからあげようと思って。ううん、それだけじゃないんだけど」
「うん」
「あのね」
「あ、待って!」
 私は、香澄の言葉を遮る。これはあたしが言うことなんだと。
「あ……うん」
 あたしは、ひなたからもらった包みを取り出すと、香澄に渡した。
「これ、ひなたが買ってきたんだけど。あたし、さっきひなたが来るまで、今日がバレンタインデーだってこと忘れててさ」
 香澄は少し微笑みながら言う。
「まひるらしいわ」
「うん、まあね。それで、香澄に謝らせて欲しい事があるの」
「うん」
「プエルタでの事。ごめん! あの時、あたしがどうかしてた。最初は香澄を困らせてやろうとしてたんだけど」
「いいのよ。もう、私気にしてないし。最初からまひるは何も変わっていなかったのに、無理やり男っぽくさせようとした私が悪かったのよ。私の方こそ、ごめんね」
「ありがとう、香澄。でもね、あたしもう一つ言いたい事が」
「分かってる」
「へ?」
 一瞬の事だった。香澄はあたしの唇に唇を重ねたのだ。
「香澄……」
「何も言わないで。それが私の答えだから」
「うん……」
「それよりさ、私のチョコ食べてくれない? 初めて作ってみたんだけどさ」
「え………初めて?」
「まあね。ほら、いいから食べてみなさい」
「うん」
 包みを外して箱を開けると、トリュフチョコがぎっしりと入っていた。いやに重いなと思ったのはこの量のせいだったのだ。でもこの重さは香澄の思いなんだ、そう思った。
 一つつまんで口に入れてみる。少し固い外側をかむと中からトロッとしたチョコクリームが口の中にひろがって、とにかく甘くて、とてもおいしかった。
 そして、何だか…………
「まひる、あんた泣いてるよ」
「えっ?」
 バジャマの裾で目を拭くとしみが出来ていた。あたし、泣いたんだ。
「かすみぃ、チョコおいしかったよ。おいしくって泣いちゃったよ」
「もう、大げさなんだから」
 そう言った香澄の声もなんだか、鼻がかっていた。



 思えば、これが日々の始まりだったのだろう。
 そう、あたし達の新しい日々の。


The first episode of "New Days" is closed.
作品名:新しい日々 第1話 作家名:みけやん