女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~
罪と罰 3
喉から離した手で、恐る恐る自らの股間に触れる。素直(?)に引いたフェルディナンドの手があった部位に触れる。
「!!!!!!??????」
嘘だっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
この世界にひぐらしは居ないから、鳴きようが無いが、ともかくジルヴェスターは出ない声で絶叫した。
ぐらり。
不意に目眩に襲われ、ジルヴェスターは倒れ込む。そうなる事が解っていたフェルディナンドの腕の中に。
「え? は? 何が、」
答えが返る代わりに、ジルヴェスターは抱えられた。ローゼマインなら迷いなく、お姫様だっこと呼ぶだろう抱え方で。
「フェ、フェル、」
名を呼び切る前に下ろされたのは、2人が座っていた場所近くにある長椅子だった。そして。
「…!」
口付けられた。しかも深く。
「~~~っ!!?」
魔力が口内に押し付けられる。反発力が弱い。反発力が無い訳じゃない。寧ろ、反発しようとしている。だが入り込む圧力に負けているのだ。
(枯渇…、仕掛かっている!?)
思う様に動けない理由が分かった。だが理由が分かっても、どうする事も出来ない。
圧し掛かるフェルディナンドを退かす力はなく、唯一の反撃になりうる舌を噛む行為は、無意識に避けている。
しかも口付けしながら、恐らく初めてだろうに、器用にも服を脱がしに掛かっている。体のサイズが変わってしまった為、引っ掛かっている様な状態だったとは言え、末恐ろしい。
「はあっ、」
漸く離された口付けの代わりに、ジルヴェスターは言葉と対峙させられる。
「ジルヴェスター…、私には、其方に知られたくなかった事が2つある。」
「何…?」
「1つがこの心。ブルーアンファとエフロレルーメが舞い、育つラッフェルがフォルスエルンテの手に落ちぬ事を知りながらも、その鼓動を止めようが無い心だ。」
冷静な語りを、零れ落ちる涙が裏切る。
「ずっと…、其方が…、」
「そんな…、」
「フロレンツィア様の話を聞く度、思った。何故、其方は女じゃない? 女だったら…、まだ望みはあった! アダルジーザの事を打ち明けてでも!! 其方の弟でなくなってでも!!! …其方が欲しかった…っ!!!」
耐えきれない激情が伝わる。
「そう思いながらこの魔術具を造ったのだ。打ち明けて、使って、嫌われる勇気も無いくせに。」
自嘲の笑みは余りに哀しい。
「其方に魔力を込めさせれば、発動出来る段階まで、魔力を注いでおいて…、何にもなりはしないのに。」
実を言えば、ジルヴェスターはアダルジーザの事を知っていた。父親から聞かされていたからだ。
フェルディナンドに何も告げなかったのは、知らない事にするべきだと思ったからだ。血が繋がっていなくとも、弟だからだ。
だがフェルディナンドにとっては、ジルヴェスターは兄であって、兄じゃ無かった。フェルディナンドが望んだのはそんな事じゃなかった。