女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~
罪と罰 2
どうしたのかと後を追ったジルヴェスターをチラリと見遣り、薄っすらと笑みを浮かべる。
(変わっていなければ、今もここにある筈…?)
目的の物は難なく見付けたが、他にも色々置いていた筈の魔術具が無い事に、内心で首を捻る。
「ヒルシュールの研究室に置いていた魔術具であれば、未来で其方が片付けていたぞ。」
「そうか…。成る程、そう言う事か。」
何かを納得して頷くフェルディナンドに、今度はジルヴェスターが首を捻る。
「ジルヴェスター、これを持て。」
渡された魔術具にフェルディナンドが作ったモノだろうかと考える。
「これはどう言うモノだ?」
「聞くより見た方が良い。」
また背中を向けて、フェルディナンドが歩き出す。ふとジルヴェスターの視界に、髪を纏める自分と揃いの髪留めが入った。
(あれ? 何時からだ…?)
何時からフェルディナンドは髪が短くなっていたのか。何時からフェルディナンドの髪から揃いの髪留めが喪われたのか。
フェルディナンドが髪留めを大切にしていたのを知っている。それを目にしなくなったのは何時からだったのか。
ジルヴェスターはこの時に事実を確信したのだ。
「ジルヴェスター。」
最初に居た位置にまで戻ってから、フェルディナンドが振り返る。
「ん?」
「それに魔力を籠めてみろ。この様に持ってから。」
指定された通りに持ってから、魔力を注いでいく。
「それほどの量はいらぬ。既に発動させられる一歩前までなら、私が込めている。」
「此処に来る前に?」
「そうだ。」
何処か自嘲の響きが感じられ、ジルヴェスターが不審に思った時、魔術具が光り、ジルヴェスターに向かって光が放たれた。
「え、」
反射的に躱そうとするが、至近距離では上手く行かない。魔術具を落とすと言う選択肢は、フェルディナンド作の貴重品と言う意識から、端から存在しない。
ジルヴェスターの体に魔方陣が放射される。そして。
ドクンっ!!!!!!!!!
自らの大きな鼓動を胸に聞いた瞬間、全身に激痛が走る。
「―――――っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
声が出ない程の痛み。立っていられず、崩れ落ちる。既に手から魔術具は零れ落ちている。
四つん這いで息を荒くするジルヴェスターの大きな手が、長くとも節のある指が、1,5回り程小さく、細く滑らかな指に変わる。全身もその変化に合わせたか、完全にフィットしていた筈の衣類に緩みが生まれ出す。ジルヴェスター自身は気付いていなかったが、変化中、身体が発光していた。
「……は…?」
痛みが治まり、自分の身体の違いに漸く気付く。
「何だ? …!?」
呟いて知るは、声の高さ。思わず口元を抑え、混乱しながら次いで喉に触れる。
「!!?」
喉仏が無い。不意に視界に屈んだフェルディナンドが現れる。伸ばされた手は胸に。ムギュウ、と有り得ない感覚が広がる。
「!!??」
そして。無遠慮にフェルディナンドの手が股間に動く。怒りよりも何よりも信じられない心許なさに支配される。