女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~
罰と母性本能
妊娠しやすいと解っていた為、妊娠検査具ー魔術具の一種ーを早々に使用した。
本来は妻であるフロレンツィアが準備するモノだったのだが、ヴィルフリートを宿した時、詰まり初めての懐妊時、余りに嬉しすぎて、ジルヴェスターが用意し、共に確認したのだ。
それ以来、その魔術具はジルヴェスターの管理下にあり、フロレンツィアが懐妊の兆しを見せる度、使用して来たのだ。
(まさか自分に使うとは…。)
懐妊の兆しは無いが、妊娠していれば、きっちりと示す。妊娠を示す女神の名前が浮かび上がるのだ。
ジルヴェスターは思っていた。その時までは。妊娠していないかもしれないのだから、黙っていても良いと。
ジルヴェスターは考えていた。その時までは。妊娠していても、流してしまえば良いと。
可愛そうだが、生まれれば問題しか無い。魔力を使えば業と流す事が出来る。初期ならば誰にも気付かれないで済むと。
考えていた、筈だった。それなのに。
(…………っ、)
いざ自分が子を宿していると分かった途端、急激に愛情が、執着が湧いてきたのだ。
出来ない。流す事が。
何度も確認している。結果は変わらない。
苦しい、哀しい、――そして愛しい。
我が子を、護りたい。
それが母性本能だと、ジルヴェスターは解らなかった。ただその苦しみを、フェルディナンドの気持ちに気付かず、傷付けた、自分への罰だと思っていた。