女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~
告白
「どうせ忘れる一時の夢。それならば欲望に身を任せると決めた。それがジルヴェスターの現実であるとしても、爪痕を残したかった。
…全て忘れたその果てに、ジルヴェスターの言う幸せがあると言うならば協力しろと…、半ば八つ当たりの気分だった。」
名捧げの力を使われたフェルディナンドには、全てを話す以外の事が出来なかった。
今になって思い出してしまった、あの頃の恋心が犯した罪を購う為に、ジルヴェスターを男に戻そうと躍起になった。
事が終わった後、落としただけでは壊れなかった魔術具を、破壊してしまったフェルディナンドは一から作り直すしかなかった。
グルトリスハイトに頼らず(まだ手に入れていなかった)、作り上げた熱は相当なモノだった。
その熱は神々の気紛れに翻弄された結果、回復させ、漸く体が馴れて動かせる様になったジルヴェスターに罵倒されても構わないとさえ思う程、理性を奪った。
――ジルヴェスターは罵倒等しなかったが。
――寧ろ、すまないと謝って来たのだが。
ジルヴェスターは何も言わなかった。何1つ、自分を責めなかった。
「慰謝料案件ですね…。」
ローゼマインが青い顔で溜め息を吐く。
「で、子供が出来ているかも知れないのですよね。」
「ああ…。」
「…とにかく、先に養父様に謝罪しましょう。お話はそこからです。」
フェルディナンドは恐る恐るローゼマインの腕を掴む。
「ローゼマイン…、私を、捨てないでくれ…っ! 私はっ、私はっ!! 君、が……、」
あの日、自暴自棄になって捨てた想いの記憶を取り戻しても、想いそのものは還って来なかった。何故ならば。
「今はっ、君が……、」
今のフェルディナンドが想う人間は、ローゼマインだから。
「解っています。捨てる訳ないじゃないですか、当たり前ですよ。貴方が犯した過ちを貴方だけに背負わせません。――私達は夫婦になるのですよ?」
安心させる様に笑って、フェルディナンドを抱き締める。
「今夜はちゃんと眠って下さいませ。明日、一緒に養父様の処に行きましょう。」
まるで母親と息子の様に。男は何時まで経っても子供だ、と言ったのは麗乃の母か修の母か。…フロレンツィアもエルヴィーラも似た様な事を言っていた気がする。世界を越えた共通言語かも知れない。