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女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~

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予想不可能



 フェルディナンドの引っ掛かる何かは分からないまま、素材回収は終えた。
「そろそろ過去のフェルディナンド様と合流しましょう。」
 ローゼマインの言葉に頷く皆を見て、ローゼマインがオルドナンツを出す。
「養父様、ローゼマインです。そろそろ合流しましょう。」
 オルドナンツが飛び立ち、暫く。
「ローゼマイン、カルステッドだ。厄介な事になった。ヒルシュールの研究室に来てくれ。」
 ジルヴェスターではなく、カルステッドの返事が届いた。

 ヒルシュールは煌めく笑顔だった。
「時の神秘に生命の摩訶不思議。こんなに素晴らしい事に出会えるとは…!」
「前者はともかく、後者で喜ぶのはどうかと…。」
 カルステッドが溜め息と共に吐き出す。
「何があったんですか?」
 首を傾げながら、中を覗くと見覚えのある、衣類がある。
「養父様の服?」
「体に合わなくなったから着替えたのだ。まだこっちがマシだったからな。」
 聞き覚えの無い女性の声。けれど口調は貴族男性。+親しさを感じさせる雰囲気。
「……養父様……? え? え? 何で…?」
 ローゼマインの視界に映り込んだのは、一際華奢になったジルヴェスター。

 彼は'彼女'になっていた。

 ジルヴェスターの話に依れば。ヒルシュールの研究室で、兄弟水入らずと言う事で2人だけにして貰い(ヒルシュールには後で話をしようと言い包めた)、会話を楽しんでいたのだが、何かの話から部屋にある魔術具の話になり、何となく適当に手に取った魔術具が何故か発動してしまい、結果、女性になっていた、らしい。
 しかも使用は1度しか出来ないのか、発動後に完全に壊れてしまい、魔術具は最早、残骸と成り果てていた。
「そんな訳で勝手をして悪かったが、ヒルシュールの騎獣服を借りたのだ。そのままでは何とも動けなかったのでな。
 まあ胸は(ヒルシュールよりデカイから)狭いし、腰は(ヒルシュールより細いから)大きいし、(身長が男時と変わらないから)腕も脚も裾は足りない(ヒルシュールの騎獣服は作った当時の流行りで腰裾が長めなので、そこの長さだけは何とかなった)し、ピッタリとは程遠いのだが。」←悪気は無い。
 ヒルシュールの顔がピクリと動いたが、声が発せられない。
「で、着替え後にカルステッドとヒルシュールを呼び出した処で、其方からオルドナンツが飛んで来たのだ。」
 ローゼマインがヒルシュールをチラリと見ると、溜め息を1つ。
「先程の言葉はヒルシュール先生に失礼ですよ。」
 しかしジルヴェスターには通じていない。もう1度、溜め息を吐く。
「それで…、養父様は男性に戻りたいですよね。」
「うむ。」
「新たに魔術具を造るとして…、過去のフェルディナンド様に頼んでも、出来上がる前に過去に還るかも知れませんよね。」
「そうだな。」
「今のフェルディナンド様に頼むんですよね。」
「うむ。」
「依頼料を請求します。魔術具作成と必要な素材収集と素材使用を合わせるのと、造るのに掛かる時間が分かりませんので、鐘1つの時間給で計算させて貰って、更に短期で解決した場合の特別給金を計算して…、」
 簡易な計算方法を示し、最低料金を割り出す。素材のレア度や品質で高値になる事を含めながら…。
「…酷いぞ、ローゼマイン…。」
「一生女性でいますか?」
「そうしようかな…。ブリュンヒルデと冬を迎えぬままでも良くなるし…。」
 どうやらブリュンヒルデとはまだ何も無い様だ。本人達は納得しているのだろうが、後ろが煩いのだろう。この際、代わった性別を理由に子作りをしない事にすれば良い。既に子供の数は4人だ。この現状で、夫を作れと強要される等、流石に無いだろう。
 …開き直ったのか、自棄になったのか。ローゼマインは眉を潜めた。
「養父様?」
「ジルヴェスター?」
 フェルディナンドの発言と重なる。確かに結構な値段だが、そこまで困る額ではない。態々諦める理由が無い。だが問い詰める前にジルヴェスターが話を変えた。