女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~
兄弟喧嘩 2
(う~ん、どうしようか。)
突如、始まった兄弟喧嘩は互いを思っての事だ。ローゼマインは静観している過去のフェルディナンドが、ジルヴェスターと同じ髪留めを着けているのに気付き、何と無く事情を察していた。
ローゼマインが周囲を確認すると、やはりどうしようかと言うように首を傾げている。
(多分、養父様から大事な物を奪いたくないんだろうけど。)
それだけでは無い、と思う。気持ちが受け取りたくないだけならば、ジルヴェスターを完膚無きまで言い包めるだろう。それをしていないのだから、きっと髪留めには未練がある筈だ。
ジルヴェスターもそれに無意識かも知れないが気付いていて、畳み掛けている。
(…私としては…、フェルディナンド様に我慢して欲しくない…。)
親族として…、葬儀にも参加出来なかったフェルディナンド。思い出の品を持っていて欲しいし、けれど無用な罪悪感は持って欲しくない。ならば。
(うん。)
意地を張って受け取りたくないと言い続けるのであれば。
(これだ。)
ローゼマインが声を掛けようとした時、ジルヴェスターが我慢出来なかったのか、フェルディナンドの手を掴む。無理矢理に渡そうとしたのだろう。
「やめろっ!!!!!!」
反射的にフェルディナンドがその手を振り払いーー、
「うわっ!!!!!!」
「「「「え。」」」」
ドサッ!
驚いたジルヴェスターの声に唖然とした数人の声が重なる。ジルヴェスターは過去のフェルディナンドに背を預ける形で受け止められていた。
「す、済まぬ、助かった。」
「いや、大丈夫か?」
「うむ。」
体勢を整えながら話す2人とは別に、ローゼマインと今のフェルディナンドが話している。
「…今の養父様には健康で鈍臭くない私の積もりで接した方が良いですね。」
「留意しておく…。」
咄嗟に手を振り払った際の力加減が、今までのジルヴェスター、詰まり男の体だったジルヴェスターを基準にしたモノだったのだろうが、女の体は体重が軽く、踏ん張る力も弱かった為、見事にバランスを崩してしまったのだ。吹っ飛んだ、とも言える。
そしてそんな状態だったにも関わらず、髪留めを手放さない辺りは流石である。