女体化ジルヴェスターの災難~ドレッファングーアの暇潰し~
兄弟喧嘩 3
(声を掛けるなら喧嘩が再発する前にした方が良いよね。)
「養父様、髪留め、生前贈与として私が頂きます。」
誰よりも早く、ローゼマインは爆弾を落とした。
「「は?」」
ジルヴェスターとフェルディナンドの声が重なり、ぎょっとした様な視線が集まる。
「フェルディナンド様は頑固ですから、絶対受け取らないと思います。ですから養父様がどうしてもフェルディナンド様にお渡ししたいのであれば、私にお渡し下さいませ。夫婦の財産は共有出来ますから。」
生前贈与、詰まりジルヴェスターの形見の品としてローゼマインが受け取ると言う事だ。そして婚約者であるフェルディナンドが夫になれば、自然とフェルディナンドの物にもなる。
「フェルディナンド様が受け取らず、仮に髪留めが最後の瞬間まで役割を果たすならば、それは養父様の形見になります。
そうなれば実子であるヴィルフリート兄様達の誰かの手に渡るのが自然でしょう。他領の養女や異母弟が欲しいと言える代物ではございません。
…頂けるのは今しか無いのです。」
ジルヴェスターは渡したい、フェルディナンドは奪われたくなかったが故に、奪いたくない。ならば妥協点を探せば良い。
「代わりに私から男性用の装飾品をお渡し致します。お2人お揃いで。楽しみにして下さいませ。」
ローゼマインがそう言って笑うと、ジルヴェスターも笑う。
「うむ、カッコいいモノを頼むぞ。」
ジルヴェスターの髪留めが、ローゼマインの手に渡る。フェルディナンドは止めなかった。止められなかった。ローゼマインの手の中にある髪留めを複雑そうに、けれど嬉しそうに見詰めていた。