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女体化ジルヴェスターの災難~腐女子の養女・前編~

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かくれんぼの終わり 5



 盗聴防止範囲外へ出たカルステッドは後ろを向いた。読唇術を使わぬ様にだろう。正直、そこまで進んでしてくれるとは思わなかったので、少々驚いた。
「お伺いします。アウブ、魔力圧縮方法を知ったらどうなさいますか?」
「勿論、使わせて貰う。其方の様にとまで行かなくとも、シュタープに頼らない程度まで引き上げられるなら、大人も子供も関係無く勧められる。加護や属性を増やす事も再度検討する価値がある。」
 やはり、と私は頷く。
「私が望む事は、伝授に対する条件を全て、領地外でも通用する契約魔術で縛る事でございます。」
「当たり前だな、それで其方出す条件とは?」
 既にローゼマインで前例がある故か、あっさりと頷かれる。
「私の魔力圧縮方法は2つ、1つは魔力操作技術に直結し、もう1つは魔力増量方法と言って良い程のモノでございます。2つ共お教えするのはアウブとアウブ候補に限定し、他は魔力増量方法のみとして下さい。」
「何故だ?」
 意外だった様で、ジルヴェスターが疑問を投げ掛ける。無論、質問が出るのは分かっていた。
「この世界の規律を守る為でございます。」
 きっぱりとまずは1つ。
「どう言う事だ?」
「操作技術は自分の魔力だけでなく、このユルゲンシュミットに満ちている魔力をも扱うものだからでございます。」
「は?」
 意味が理解出来なかった様だ。
「魔術を使用する時、扱うのは己の魔力のみでしょう。複数の青色の方が神具を使用する時も、己以外の魔力を扱っている訳ではありませんし、他者の魔力が込められた魔石を使用する時も、己の魔力を干渉させた結果、負担の減少となるのです。人が動かす魔力は、自分の魔力のみでございます。」
「…まるで他人の魔力をも自在に使えるのだと言っている様に聞こえるが…。」
「その通りでございます。」
「なっ!」
 私は素早く自分の魔力を動かし、ジルヴェスターの中に入り込ませる。これだけなら誰でも出来る。反発はあってもなくても自分の魔力で、誰かの魔力に干渉する事は変わらない。でも私はそれで終わらない。
「!?」
 ジルヴェスターの目が見開く。感情が完全に表に出た。無理も無いと思う。自分の意思ではなく、その手にシュタープが握られたのだから。
 因みに不快感は無かった筈だ。さっき記憶したジルヴェスターの魔力に合わせたからね。
「この技術の基本であり、同時に先でもあるモノが、誰のモノでもない魔力を、ユルゲンシュミットに満ちている魔力を操る術になります。
 勿論、理屈を覚えたから出来る、と言う訳ではありません。ですが…、下級貴族がこの方法を取れる様になったら、貴族社会が崩れかねません。
 また、やはり理屈の話ですが、魔力が少過ぎる平民に教え込む事も出来ますので、実現すればそれだけではすみません。」
 ひくっ、とジルヴェスターが口元を歪な形にさせる。
「空恐ろしいな…。」
「私はこの世界の社会を乱すつもりはございません。身分制度の無い社会に生まれたとは言え、そこで培った常識を押し付ける気もございません。
 もしこの世界で革命が起こるとしても、巻き込まれたくありませんから。」
 私はそう言って、続ける。
「だからこその条件なのです。」
「む…、」
「悪戯に下に力を持たせるべきではありません。力が全てではありませんが、魔力が特権の元になっている以上、増長する者が必ず現れます。
 少なくとも魔力が増えても己を律する事が
出来る様に基板を整えるべきだと思います。」