神殿長ジルヴェスター(6)
ギュンター視点
俺はギュンター。兵士をやっている。騎士に憧れた事が切っ掛けで、選んだ職業だったが、お貴族様がそんなキレイなもんじゃない事は知っている。特権意識の固まりだって。
そんな俺の意識は今、変わりつつある。良い事なんだろうが。
俺には娘が2人いる。美しいエーファに負けないくらいの娘だ。
俺が貴族の見方が変わりつつあるのは、下の娘のマインが切っ掛けだった。
マインはとても可愛い。エーファより美人だ。神様が何時も手招きするくらい愛されている。
そのマインが身食いと言う病に侵されていて、その病が魔力に寄るものだと分かった時から、自分の力無さには嘆いたものだ。いや、今も嘆いている。
だがマインの洗礼式で、ルッツからお貴族様が話をしたいと言っていると聞いて、初めてジルヴェスター様と話した。
平民で貧民等、蔑まされるだろうと思っていたが、ジルヴェスター様はそんな様子を欠片も見せなかった。
無礼で首が飛ぶ覚悟で言った事もしっかりと聞き入れ、譲歩して下さった。あんなお貴族様が居るのだと驚いたモノだ。
だがそれでも特権意識を持つお貴族様を信頼は出来なかったし、そんな相手がマインを生かすのだと思えば自分の力無さが情けない。
そんなある日の夕方。
「は?」
すまん、もっかい言ってくれ。
「あ~、神殿長がおじさんの服貸してくれって。森に行きたいって。」
俺の服をお貴族様が着る!!?? 何でそうなるんだっ!!??
「神殿長ってさ、やっぱりちょっと変な人だよな。」
全力で同意するぞ、ルッツ…。
門番中、俺の服着たジルヴェスター様から獲物を頂いた。
…変わってると言うより、子供っぽいんじゃないか?
現実から逃避したい俺に、誰かがそっと囁いた。
続く
作品名:神殿長ジルヴェスター(6) 作家名:rakq72747