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神殿長ジルヴェスター(6)

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ルッツ視点



 孤児達を連れて帰ると、間も無く神殿長が様子を見に来た。マインとの会話が自然と耳に入ってくる。
「森っ!?」
 突如、驚いた様な声がして、思わずその方向に顔を向ける。
「え、あの、何かマズイのですか?」
「そうではないっ!!! マイン、下町には森があるのだなっ!? 私も行きたいっ!!! 連れて行ってくれっ!!!!!」
 はあっ!? 
「え、あの神殿長…、貴族街の森に行けば良いのでは?」
 そうだよ。
「貴族街の森より下町の森が良いのだっ!! 直接孤児を連れていくのは誰だ? ルッツか?」
 えっ、俺の名前覚えてんのっ!? 
「そうですけど…。」
「ルッツ、次は何時森に行くのだ?」
「え、えええっ?」
 俺に矛先が向いたーっ!!
「まだ決まってないのか? なら決まったら教えてくれ! ああそうだっ、平民用の服も必要だな!! ギュンターに借りといてくれっ!!!」
 ギュンターおじさんの服着んのっ!? お貴族様がっ!!??  
 驚いている俺を無視して、時間は流れて、そして当日。
「遅いではないか、マイン!」
 どれだけ楽しみにしてるんだ。
「遠足前の子供…。」
 マイン、エンソクマエが何か分かんねえけど、子供って…。いや、否定出来ねーけど。
「神殿長、これだけは言わせて下さい。」
 突然、ハッとしたかの様にマインは真剣になった。
「何だ?」
「下町の森には下町の決まりがございます。
狩りをすると採集場所は離れておりますし、他の狩人との決まりもございます。暗黙の了解になっている事も多いので、ルッツの言った事にお従いして下さいませ。」
 それ言って大丈夫か? 有り難いけどさ。
「初めての場所だからな、先達に従うのは当然であろう。
 ルッツ、今日は宜しく頼む。」
 …理不尽な事はしないだろうけど、本当に言うこと聞いてくれるんだろうか。夢中になって、指示が聞こえない状況にならないだろうか。
 俺は複雑な気持ちで頷いた。

 ジル様。お忍びだから、神殿長ではなく名前でと言われたので、呼びやすい様にジルヴェスターって名前を縮めて呼ぶ事になった。結構、型破りな貴族だと思う。
 そんなジル様は凄かった。獲物を狩りまくり、孤児達が拍手喝采だった。本人は嬉しかったのか、獲物を孤児達とそれとは別にギルベルタ商会へと分けた。後、ギュンターおじさんにも渡していた。
 兵士の仕事で受付に居たギュンターおじさんの驚きは…、うん、とにかく凄かった。
作品名:神殿長ジルヴェスター(6) 作家名:rakq72747