神殿長ジルヴェスター(11)
私は軽く目を見開いた。その名を久しく思い出さなかった。それでも名を聞けば、思い出す事は出来る。けれどその鮮やかさは喪われている。
…すっかり思い出だな。
今、私の中で女性と言えばマインが真っ先に浮かぶ。…まあ女性と言うには子供だが。
「…1度、会っておくべきだろう。何を話す事はなくとも。」
フェルディナンドからフロレンツィアとの事を案じる言葉を聞くとは思わなかった。その事に違和感を感じない訳では無かったが、反論する様なモノでは無い。
「…分かった。久しぶりに城に帰るとしよう。」
私は領主会議の準備の為に、暫く神殿から出る事を決めた。これが還俗に繋がる道とも知りもせずに。
作品名:神殿長ジルヴェスター(11) 作家名:rakq72747