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神殿長ジルヴェスター(11)

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ダームエル視点



 私はダームエル。下級貴族の次男だ。貴族と言えば聞こえは良いが、決して裕福な家では無い。
 騎士団の寮で暮らす私には、たまにだが実家から援助がある。家を継いでいるのは兄のヘンリックなのだが、身食いの少女と契約して以来、少女の実家である、富豪の商人から援助を受けられる様になり、随分助かってる様だ。
 下級の為、私は平民との距離が近い方だ。また兄の関係で平民の身食いにも理解がある方だと思っている。その為か、神殿に青色を纏う平民がいると聞いても、差して何も思わなかった。

 トロンベ討伐の折、私はその身食いの少女の護衛を任された。領主様とジルヴェスター様により紹介された、青色巫女見習いは見るからに幼く、か弱く思えた。巫女見習いを心身共に守れとまで命じられ、本当に大切に成されているのだと分かった。
 しかし、私と共に任務に着いたシキコーザはそうでは無かった様だ。明らかなる敵意―それも殺意と何ら変わらない―をぶつけ、巫女見習いを平民だからと蔑んだ。
 私はその悪意から守ろうと戦いを解説をして、気を逸らしていたが、とうとうシキコーザは敵意を言葉だけではなく、行動でもぶつけようとした。
 家格の差を武器に私を大人しくさせようとしていたシキコーザに、怯みつつも、特別だと言う言葉が諦めては行けないと訴える。しかしシキコーザは止まらない。そこへジルヴェスター様が舞い降り、シキコーザを糾弾し出した。戦いを終えた領主様が直ぐに後を引き継ぎ、結果、連帯責任が無い、シキコーザ1人の処罰と相成った。
 
 シキコーザが処刑された後、私は騎士団長のカルステッド様に呼び出された。
「儀式の巫女見習いの護衛として、貧民の村で過ごして欲しい。」
 私は目を見開いた。
「どう言う事でございますか? 神殿で過ごせない理由がおありで?」
「巫女見習いは孤児では無い。魔力を見込まれ、通いにて魔力奉納を行っている。家は貧民の村だそうだ。」
「そうだったのですか、しかし畏れながら危険が迫っているなら、神殿で生活された方が良いかと…。」
「ジルヴェスター様が領主命令で領主会議に出席する事になったのだ。庇護者の居ない神殿で、巫女見習いを留まらせるには危険だ。
 巫女見習いの価値は魔力だけでなく、大量の金貨を稼ぐ頭脳にもある。俄には信じがたいが…。シキコーザの件もあり、下級貴族には妬まれているだろう。シキコーザの母親は感情優先の女性とも聞いているしな。
 とにかく巫女見習いは今、危険だ。決まった場所で留まって貰い、護衛を付けたいのだ。
 しかし平民の護衛に上流貴族を付けるには難しい。時期も悪い。数が少ない中流貴族は、上流が居ない間は留まれる全員が留まって貰わねば困る。しかし下級貴族では巫女見習いに良い感情を持っている者は少ない。それこそシキコーザの二の舞に成りうる。だが其方ならば信用出来る。
 領主様、ジルヴェスター様が共に其方を希望したのだ。信用あっての事、決して裏切るなよ?」
「はっ!!」
 なんと!! 領主様達から信を得られるとは…!! 身分から理不尽を呑み込む事が多かった私に栄誉が!! 必ず守って見せると私は己に誓った。