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神殿長ジルヴェスター(12)

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ジルヴェスター視点



 何なのだ、これ。

 神殿に入っている事を示すために、用意した新たな白の服で会議に参加しているのだから、目立つのは分かっていた。だが。
「あれがご兄弟の為に自ら犠牲になった…、」
「未だに妻になる筈だった方を想っていて…、」
 何だ、この美談。間違ってはおらぬが、エーレンフェストはここまで注目される領地では無い。…ユストクス辺りが印象操作していそうだな。いや、或いはハイデマリーか? 久々に会うエックハルトの妻を見て思う。
 何とも言えぬまま、外面を取り繕い、フェルディナンド達と別れ、挨拶廻りをすれば、気遣われる一方で、好奇心から色々と聞いてくる者も多い。
 …神殿にいる方が楽だな。ん? フェルディナンドは何処行った? ユストクスもエックハルトも居らぬでは無いか。
「ハイデマリー、其方1人でどうした?」
 ハイデマリーに近付く。
「はあ、それが先程急に暫く居なくなるから、ジルヴェスター様に此処を任せると。」
「「は?」」
 一体何なのだ? …私がこの時、欠片もマインについて考えもしなかったのは、マインに何かあれば、フェルディナンドが何も言わずに消えるのは有り得ないと思っていたからだ。
 …信頼、していたからだ。ああ…、まさかあんな―――、

 ダンケルフェルガーに挨拶した。暫くぶりに見るフロレンツィアは大人びていた。…綺麗だと思った。きっと幸せなのだろうと私は思った。
 全ては過去だ。私は何を話すとも思わなかった。
「ジルヴェスター様。」
「ユストクス?」
 声を掛けてきたのは、姿を消していたユストクスだ。一体、何処に行っていたのか尋ねると、まだ姿を消したままのフェルディナンドから連絡だと言う。
 ダンケルフェルガーに一声掛けてから離れると、ユストクスが盗聴防止の魔術具を出した。
「マインの村をアーレンスバッハの貴族が襲いました。身食いの契約が目的で、マインを浚おうとした様です。」
「何だと!?」
 ユストクスが現状を話していく。
「――と言う訳で、エグモンドの事を任せると。」
「分かった…。」

 ――バカな!! どう言う事だっ!! 

 感情を抑えながら、足早に移動する。フツフツと沸き上がる嫌な予感も含めて。