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神殿長ジルヴェスター(12)

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 そしてそれからエーレンフェストの聖女のお噂が流れ出したのです。お名前はローゼマイン様、虚弱体質で体力もなく、人より小さい方です。しかし魔力はとても強く、また頭もとても良い方でした。
 そのローゼマイン様が入学される直前、フェルディナンド様より直接お会いしたいと言われ、私は時間を取りました。ジルヴェスター様も共に現れ、還俗したに関わらず、白の衣装でございました。
 そこで私はローゼマイン様の虚弱体質の事や、神殿育ちに加え、平民の商人達と混じり合っていた為に起こった、貴族としての社交能力の欠点がある事を教えられ、場合によっては庇って欲しいと願われました。
 …フェルディナンド様、危うい雰囲気から取り返しが付かない雰囲気に変わりました? 
「それからローゼマインはジルヴェスターの婚約者です。昔話は出来るだけ考慮して頂きたく思います。」
「可愛らしい願いですわね。」
 お祝い事の空気が無いのは何故でしょう。
「…処で私からも宜しいでしょうか。」
「何でしょう?」
「私の研究室に置きっぱなしの魔術具や資料…、完成未完成関係無く御座いますが、そろそろ整理をお願いして宜しいですか、アウブ?」
「そうですね…。分かりました。ではこれから向かわせて貰いましょう。」
「ジルヴェスター様、折角ですから最近の貴族院に付いて、お話し致しましょう。」
「分かりました。お伺い致します。」
 そうしてフェルディナンド様を追い出しました。
「ジルヴェスター様、何がありました? フェルディナンド様が特に可笑しい気がするのですが。」
 盗聴防止の魔術具を使いました。
「流石…、フェルディナンドの師匠ですね。」
 何とも言えない顔になります。
「今、私はフェアベルッケンの加護が欲しいです…。」
「フロレンツィア様の事だけではございませんのね?」
 …フロレンツィア様と星を結べなかった原因に関わりがあるのかもしれませんわね。それに…、
「フェルディナンド様の変化…、ローゼマイン様にも関わりがあるのでしょうか。」
「何も…、知りません。彼女には知って欲しくない…。」
 感情を吐露するのは貴族に相応しくありません。それだけにジルヴェスター様が追い詰められている事も、それでもローゼマイン様を護ろうとしているのは伝わりました。
 …隠す、と言う方法が正しいかどうかは置いときますけれど。
 まあ、領地経営はしっかり為さられておりますし、私がどうこう言える立場ではございませんが。
「…貴族院で話題に上がるとすれば、確かにフロレンツィア様絡みですわね。婚約破棄となった原因に言も出るでしょう。
 ローゼマイン様に余計な情報が行かない様にするには、フロレンツィア様の事を話さない空気を作らない事が寛容になりますわね。」
 私は協力をお約束致しました。ジルヴェスター様が望んでおられると、少々お話を盛りまして、噂好きの者に回しました。後、ディッターのルーフェンには直接に。
 …ジルヴェスター様、アーレンスバッハ絡みの事を教えて頂きたかったですわ。でしたら完璧でしたのに。

続く