神殿長ジルヴェスター(12)
ヒルシュール視点
私はヒルシュール。貴族院に勤めるエーレンフェストの顧問です。
私がフェルディナンド様を弟子にした時、多くの圧力が掛けられました。私の生涯は研究の為にあり、優秀なフェルディナンド様が、私の研究を彩る事に疑いがありませんでしたので、屈する事はありませんでした。
当時はゲオルグ様がアウブでございましたが、あの方がフェルディナンド様を気に掛けるとは思えませんでしたので、母親の行動は見て見ぬふりだろうと思っておりました。
一方、アウブではないジルヴェスター様はフェルディナンド様を気に掛けていたのを知っておりましたが、恐らくジルヴェスター様には気付かれない様に行動しているだろうとも思っておりました。
しかし事態はある時大きく動きました。ジルヴェスター様が母君を殺害し、白の塔に入られたのを機に、ゲオルグ様がフェルディナンド様を優遇される様になったのです。
フェルディナンド様はエーレンフェストで何があったのか、常々考えておられる様でした。
そしてまたある時。フェルディナンド様の活躍を聞いた中央騎士団のラオブルートが会いに来られました。その暫く後くらいだったと思います。フェルディナンド様のご様子が変わられたのは。恐らくは親しい者にしか分からない変化だったと思います。
当時、交際に発展されるのではと噂されていた相手とも会わなくなり、私にも余り話さなくなりました。
弟子と言う関係は続きましたが、フェルディナンド様にとって、全てを話せる相手では無くなったと言う事かも知れません。見かねた側近の中、エックハルト様やハイデマリー様、ユストクス様が名を捧げたそうですが、忠誠心が強過ぎて、フェルディナンド様に引き摺られている気がしました。
フェルディナンド様の卒業手前、ゲオルグ様が高みに上り、残った領主候補であり、次期アウブとも言われたフェルディナンド様が卒業後にアウブを継がれました。
その際にジルヴェスター様が白の塔より出されましたが、御本人自らが願い出て、神殿入りをされたそうです。
フェルディナンド様の影響か、いつの間にやらジルヴェスター様のお噂が流れ出しました。
それから数年、フェルディナンド様とお会いする機会もそうなく、私の心に凝りが出来ましたが、仕方がありません。
変化が起こったのはジルヴェスター様が領地対抗戦に現れた時です。あの時は領主会議に参加する手筈になっておりました。しかし不測の事態が起こった様で、フェルディナンド様もジルヴェスター様も不参加と言う、前代未聞な事態となりました。アウブ代理が領主会議にて、質問されても録な答えは帰らなかったそうです。
作品名:神殿長ジルヴェスター(12) 作家名:rakq72747