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神殿長ジルヴェスター(13)

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ジルヴェスター視点



 地域対抗戦。ローゼマインと共に何故かダンケルフェルガーに囲まれた。良く見ると紙の束を持っている。大金貨を費やした趣味に関わる事だな。
 案の定、ダンケルフェルガーの歴史書の翻訳に関する事だった。何かとディッターに結び付けるダンケルフェルガーを相手にする気は無い為、断る方に誘導していけば、第一夫人がやってきて、漸くまともな交渉になった。直ぐにアウブのフェルディナンドに替わり、話を纏めて貰う。
 …ヒルシュールでも手が回らなかったようだな。何故、これ程の上位領地と取り引きとなったのか。ローゼマインの紅潮する頬を見て、心で溜め息を吐く。
 より良い条件で纏まり、ダンケルフェルガーが席を立とうとした時、それは起こった。
「ぐっ、」
 くぐもった声がした。フェルディナンドが胸を押さえている。
「養父様!?」
 私とフェルディナンドに挟まれていたローゼマインが悲鳴に近い声を挙げた。そのままテーブルに突っ伏しそうな苦しむフェルディナンドをローゼマインの小さな手が支える。
「フェルディナンドっ!!?」
「フェルディナンド様っ!!?」
 立ち上がった私がフェルディナンドに手を伸ばすと同時に反対側から何故かダンケルフェルガーの騎士が支えている。そしてカルステッドの悲鳴が響く。
「エックハルト!! ユストクス!! ハイデマリー!!」
 名捧げの3人が共に膝を着く。――何故だ? 名捧げは主人が高みに上がった時、共に逝く。しかし高みに上るまでは、どれ程主人が苦しもうと、その苦しみを共有する事は無い。何が起こっている??
「カルステッド! フェルディナンドを横にさせろっ!!」
「お手伝いしますっ!!」
 とにかくこの姿勢では録な事も出来ぬ。緊急と言う事で、椅子から地面に寝かせる。身体強化での力任せにする訳には行かぬ為、ダンケルフェルガーの申し出を受ける。
 息子が心配だろうが、フェルディナンドを先ずは何とかせねば話にならぬ、と理解しているだろうカルステッドと共に、フェルディナンドを横にした。
「メッサー!」
 服を破り、リヒャルダに魔術具を持ってこさせる。苦しいのか荒くなる一方の呼吸が気を焦らせる。
「カルステッド!! 胸から手を退けさせろっ!!」
 しょっちゅう具合を悪くするローゼマイン用だが、医療関係の魔術具には変わりない。何故かフェルディナンドが持っていたり、知っていたりする医療関係のあれやこれやは私も使える様にしていた。勿論、フェルディナンドに使うのは全くの想定外だった。
 カルステッドが胸を抑える手を外させる。残った邪魔な部分も切り裂き、魔術具を胸に置こうとした時だった。
「なっ!?」
 フェルディナンドの体が発光し出した。それも虹色に。
「何これ…、魔力が漏れてる!?」
 ローゼマインが愕然と叫ぶ。これでは魔術具が使えない。勝手に魔力を注がれ、上手く作動出来ない。下手をすれば壊れる。