神殿長ジルヴェスター(13)
ハンネローレ視点
私はハンネローレ。ダンケルフェルガーの領主候補生でございます。我が領地は上位にあり、エーレンフェストとは関わりの無い領地でございました。
にも関わらず、ダンケルフェルガーがエーレンフェストに執心、とはまた違いますが、強い関心を持っておりました。
切っ掛けはフロレンツィア様がダンケルフェルガーに嫁いで来た事と、フェルディナンド様のご活躍にありました。恋とディッター、2つの話題がダンケルフェルガーに注視させていたのでございます。
ローゼマイン様がジルヴェスター様の伴侶であるらしい、真実かどうかの確認を、と言われ、私は泣きたい気分でございました。
しかもその上に兄上が起こしたディッター勝負…。私の間の悪さが起こした事です。
でも嘆くばかりではなく、良い事もありました。ローゼマイン様と仲良くなったのです。その縁もあり、ダンケルフェルガーの歴史書を口語訳して、エーレンフェストで売りたいと言うお話まで頂きました。
詳しくはアウブ同士の話と言う事で、領地対抗戦の日にお話を詰める事になりました。
父とアウブ・エーレンフェストにより、お話が纏まった直後でございました。突然、アウブ・エーレンフェストと他3名が胸を押さえ、苦しみ始めたのでございます。
ハイスヒッツェが慌てながらも指示通りに動く、エーレンフェストの騎士に手を貸しておりました。同じ様に苦しんでいる3人は、
どうやら名を捧げている方の様でした。主の苦しみを何故共有しているかは解りませんが…。
誰かが医師を呼びに走りますが、間に合いそうには無い事態です。緊急用の医術具も使える状態ではありません。
「ここです! ここから魔力が漏れています!!」
ローゼマイン様が胸に手を当て、魔力を押さえ込む為に、自分の魔力を注いでいます。緊急蘇生法の1つです。本来は胸に固まろうとする魔力の流れを邪魔する為に行います。
ええ…!?
膝を着いたジルヴェスター様がアウブ・エーレンフェストに…!!?
驚きました。口吻を見る等、初めてでございます。増しては男性同士…!!
「緊急措置とは言え…、何と…!!」
ハイスヒッツェの呟きとは言えない大きさの声がしました。
傷口から血が流れない様にする為の行為と同じと言う事でしょう。確かに口吻は一定以上の怪我に対応するに当たって、効率的な話です。
今がその状況に値していると判断されたのでしょう。それは分かります。
しかしながら、そこまでになると医師に任せます。迷いなく口吻が出来るなんて、職業意識が強い以外では、互いの絆の深い事しか考えられません。
私は、私達はアウブ・エーレンフェストとジルヴェスター様の絆と、毅然として、遣るべき事を見失わないローゼマイン様とジルヴェスター様の信頼関係を見た気が致しました。
続く
作品名:神殿長ジルヴェスター(13) 作家名:rakq72747