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神殿長ジルヴェスター(13)

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ハルトムート視点



 ジルヴェスター様に呼び出された私とクラリッサはアウブ執務室に向かった。部屋の中にはユストクス様が居られた。勿論、護衛騎士は着いている。
「正式な発表はまだだが…、私がアウブになる。」
 ジルヴェスター様の言葉に皆が頷いた。そうなるだろう事は既に分かりきっている。
「ついては神殿に置ける人員配置に申す事がある。」
「神殿長職の引き継ぎ、と言う事でしょうか。」
「それを含めた人員整備だ。まず、今の配置は本来の形とは違う。一昔前までは施設運営に携わる神殿長に加え、実務で神官を纏める神官長、孤児院を統轄する孤児院長、役職者が3人居た。
 しかし貴族が減少した際、神殿から青色が引き抜かれたり、汚職に携わって処罰の対象になったり…、私が神殿に入った時、役職者は誰も居ない状態だったのだ。必然的に神殿長に着きながら、他の役職の仕事をこなす事になった。
 その後、ローゼマインが孤児院長となり、役職者は2名となったが、依然として神官長になる者が居ない状態だ。
 それを従来の状態に戻そうと思っている。」
 私はある可能性に気付き、心を震わせる。余りの歓喜に。
「神殿長を引き継ぐのはローゼマインだ。立場場、そうならざる得ない。」
「では孤児院長は…、」
「それをハルトムートとクラリッサに任せたいと思うておるのだ。其方等なら、ローゼマインの意に背かぬであろう。」
「勿論でございます!!」
「喜んでお引き受けいたしますわ!!」
 ローゼマイン様のお近くで!! ローゼマイン様の御心に添えられるのだ!! これほど喜ばしい事があろうかっ!! 
 感情を抑えられず、クラリッサと共に私は身を乗り出す。ジルヴェスター様が若干遠くを見る目になっているが、そんなモノは興味が無いので、黙殺した。
「手綱はユストクス、其方に頼みたいが…。」
「畏まりました。主を思う気持ちは理解出来ますから、神官長職、お引き受け致します。」
 一応、周囲を理解している。私もクラリッサも。けれどこの時、私は、私達夫婦はローゼマイン様ではなく、ジルヴェスター様の右腕と左腕と言われる存在になる未来を予想だに出来なかった。

 孤児院長をしながら聖女の伝説を集めようとクラリッサと張り切っていた。…この神殿から全てが始まった。
「至る処から輝きが振って来ている様ですね…。ああ!! なんて素晴らしい…!!」
 感動が止まらぬ気持ちは良く分かる。流石、我が妻である。いつかローゼマイン様のお子に支える為、合わせて是非に私達も…!! 
 きっと私の気持ちを理解してくれるのはクラリッサだけだろう。
 ああ、支える主は違うが、想いの深さだけならば、エックハルト様とハイデマリー様もお分かりになるだろう。しかし支える主が違うので、熱く語り合う事は不可能だ。やはり私の生涯の伴侶はクラリッサしかしかいない。
 そんな充実した毎日だったが、確認せねばならない事があり、城に行く事にする。…最初はユストクス様に聞くつもりだったが、クラリッサが止めたのだ。ユストクス様が知らないとは考えられないが、それでも確実とは言えず、増してはローゼマイン様と一番長く付き合っているジルヴェスター様…、アウブを差し置くべきでは無いと。止めてくれた事に感謝する。
 そうでなければ、私はこの先を知り得なかったのだから。