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逆行物語 第二部~ランプレヒト~

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白の塔事件(1)



 狩猟大会が終わり、その翌日。私達側近はヴィルフリート様にアウブへ急ぎ、面会を依頼したいと申された。
「叔父上とローゼマインは、父上を誑かし、ローゼマインをアウブの養女にするべく、お祖母様を白の塔に投獄させたと言い、塔に浸入して、アウブの母と接触し、真か確認する様に唆した貴族がいる。未遂故、罪に問えぬだろうが、留意せねばなるまい。」
 理由を聞いて、戦慄が走る。何者かが、ヴェローニカ様の脱獄を計画していると言う事だ。

 執務室にはアウブ、父上、フェルディナンド様、ヴィルフリート様、私、ローゼマイン、コルネリウスがいる。
「狩猟大会が終わる前に、知らせなかったのは何故ですか?」
「あの時に知らせても打つ手は無い。」
 質問に言い切ったヴィルフリート様だが、ローゼマインは首を傾げる。
「ヴェローニカ様の脱獄を計画していれば、潜ませている仲間は1人や2人では無い。だからと言って、大勢の人間が秘密裏に動くのは難しい。狩猟場や茶会の会場から離れているとは言え、騒がしく魔力が動けば、増しては白の塔の近くでは気付かれる。ヴィルフリートが動かなかった時点で、直ぐに解散出来る手筈が整えられる人数であった筈だ。
 ヴィルフリートが直ぐに伝えていれば、無視が出来ないが故に、何人かの騎士が纏まって動かねばならない。纏まる間に逃亡が終わっているに加え、結果的に社交の催しを潰される事で、アウブの面目を潰す事になる。」
 分かる様に説明したのはフェルディナンド様だ。しかしローゼマインはまだ納得していない。
「でも犯罪者なのでしょう? 手掛かりが残っているかも知れないのに、消されるかも知れないのに、動かないのは怠慢ではありませんか。」
「白の塔の周囲は人が近付く場所では無い。手掛かりを消す為だけに、何度も行き来はせぬ。見付かって、怪しまれる可能性が高いからな。少し遅れても手掛かりを探す事は出来る。大会時は耳目が向きにくいから、潜り込めるだけだ。」
 アウブがローゼマインの心配から来る非難を軽く流す。
「重要なのはヴィルフリートの証言だけでは捕らえる事が出来ぬ事だ。証拠としては弱い。」
「唆してきた者が何者かで何名いたかは覚えております。今から名前を申し上げて行きますので、何らかの形で監視する必要があると思います。」 
 ヴィルフリート様が上げていく名前をアウブが木札に記入していく。それ終わった処でローゼマインが不思議そうに問う。